久々の現在進行形(25)
ダメだ、バレてしまった・・。
チーン。
俺のステンレス人生は終わった・・。
「フンッ。バッカじゃない」
ココロが散って意識が遠のいた俺を見て、メデューサは鼻でせせら笑った。
「はあぁぁぁぁ〜〜〜〜〜」
ナノが長い長いため息をついて、顔のすぐ前まで近づいてきた。
「AJ〜、ロウの羽を使ったのは、メデューサじゃなくてイカロスじゃんかぁ」
「イカロス?は?」
「イカロスは、一緒に閉じ込められた父親が作ったロウの羽で、塔から脱出するために空を飛んだんだよ。だけど、父親の言うことを聞かずに太陽に近づいちゃったから、ロウが溶けて海に墜落したんだ。ほらね、メデューサは関係ないでしょ」
「あれ?そっか。そういえばそうだっけ」
「歌があるから、それに引っ張られたんじゃないの?」
「あっ!!」
言われてみれば、小学校の時に歌った歌を思い出した。
隣のヤツと「こいつバッカじゃね〜。飛べっこねぇじゃんな」と笑い合ってたら、2人揃って前に呼び出されて、みんなの前で歌わされたんだった。
「あ〜!あれ恥ずかしかったんだよな。緊張して音外しまくったしさぁ」
「もー!今はそんなの、どうでもいいんだよ!」
頭を掻いている俺に向かって、ナノが空中で激しく上下した。何やらナノの目が正三角形になっている。
「だから、メデューサを退治する時に使ったのは、サンダルだよ!サ、ン、ダ、ル!羽のついたサンダル!」
「うえ!?なんでなんで?羽付きサンダルなんて、めちゃくちゃ歩きにくい・・ってか、飛びにくいじゃん。どうやってバランス取んだよ?」
「はあぁぁぁぁ〜〜〜〜〜」
再びナノが長いため息をついた。
「そんなのどうでもいいんだってば!」
「ふうん。それにしても、ヘラクレスって、体幹すげえな。飛んでるサンダルの上で、ひっくり返らないで立つなんて、普通できねえよ」
「はあぁぁぁぁ〜〜〜〜〜」
またまたナノが長いため息をついた。
今度は何だってんだ?
「AJ〜、メデューサを倒したのはペルセウスだよ!ヘラクレスじゃない。ヘラクレスが倒したのはヒュドラ!」
「ヒュドラ?」
「そう!頭がいくつもあって、首を切ってもそこから新しい頭が2つ再生する大蛇!」
「すげ〜、無限増殖じゃん!」
「AJ!!」
ギギッとナノの目が二等辺三角形になった。
「え?何だよ?お前なに怒ってんだよ」
「わけわかんないこと言ってるからだよ!!」
ブフゥッ
真っ赤になったナノが顔面にクリーンヒットして、両鼻から血が飛び散った。
「キャハハハハ!」
突然、プールサイドに大きな笑い声がこだまする。
誰かと思えば、と言っても、ここで動いてるのは俺とナノとメデューサとミミズだけなわけだけど、大口を開けて笑っているのは、誰あろうメデューサだった。
「もう、ハハッ、笑わせないでよ」
メデューサは、ヒーヒー言いながら涙を拭い、鼻血を垂らしている俺に向かって
「アンタって、果てしなくバカだったのね」
と言った。
「なっ!?・・うっ、ヤベ」
カッと頭に血がのぼり、止まりかけた鼻血がボタボタッと落ちて、慌てて右手の甲で拭ったものの、手に付く前に、もう血は止まったようだった。
鼻血が出ても早く止まるのは全て、不本意ながら体内に埋められた例の玉のおかげだろう。
また鼻血が出ないよう平静を保ちながら
「お前様、何がそんなにおかしいんだい?」
と尋ねると、ブハッと吹き出してまた笑い出した。
「キャハハハハ!何よ、その日本語〜!」
「う、うるせー!落ち着いてしゃべろうと思ったら、うまくできなかっただけだよ!」
「キャー!なにその声〜キャハハハハ」
「ひっ、姫様、そんなに・・ププッ、笑っては、プププ、はしたないですぞ。ブフッ!ワハハハ」
鼻血はもう止まっているものの、念のため鼻をつまんでいたら変な声になってしまった。メデューサは身体を捩りながら笑い転げ、クソミミズに至ってはひっくり返って気持ち悪い脚をバタバタさせている。
「も〜、笑わせないでよね。」
「てめえが勝手に笑ったんだろが!」
くっそ〜〜!腹立つわ〜!
「コホン」
メデューサは咳払いを一つすると、怒りで顔を赤くしている俺を無視して、頼んでもいないのに説明を始めた。
「アンタって、他人の話をちゃんと聞いてないのね」
「・・!なに言っ」
「それか!」
メデューサが手を振って声を張り、俺の抗議の叫びをみなまで言わせずぶった斬った。
「理解しようとしてないか。これじゃあ、このウニ坊主が怒るのも無理ないわよ」
ウニ坊主?
「ちょっとー!ダレがウニ坊主なのさ!」
ナノが激しく上下している。
ウニ坊主ってナノのことか?
「ブフッ」
一瞬考えて思わず吹き出した。
確かにメデューサを襲う時のナノはウニになっているな。
「AJ!なに笑ってんの!?」
やべっ!ナノの目は、まだ二等辺三角形のままだ。
「まあまあ。落ち着きなさいよ、ウニ坊主」
「だからダレがウニー!!」
ナノがスピードアップして、棒のような波のような不思議な物体化しているように見える。
すっげぇ〜。これ残像効果ってやつか?
「ほら!コイツは何でお前が怒っているのか、知ろうともしてないわよ。見てるだけ。どうせ、見え方が面白いとか思ってんのよ」
ドキィッ
「そーなの!?AJ!」
ナノが突然動くのをやめて、グリンとこっちを向いた。
二等辺三角形は、ますますギリリと細くなっている。
「ち、ちゃう、ちゃうちゃう」
焦って顔を高速で横に振ると、再びメデューサの腹立たしい笑い声があたりに響いた。
「キャハハハハ!頬っぺたブルブル揺れてるー!」
「なんなんだよテメェは!さっきからよ!!」
「だって、アンタって下手な言い訳してばっかじゃん。どうやって逃げようとかさ」
「ひ、ひでぇ・・」
メデューサの言葉がグサリと刺さった。




