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久々の現在進行形(24)

「ロウで固めた羽?」

「そ、そうそう」

「ロウって・・蝋燭のロウ?」

訝しんでいるメデューサの言葉に、大きく頷いてみせた。

ここは自信ありげに話さないと、嘘臭くなるからな。

「そうだよ。鳥の羽をロウで固めたやつ」

その時クソミミズが叫んだ。

「姫様!そんな訳のわからん物、あるわけありませんぞ!」

ギクッ

「逃げるための方便に決まっとります!」

ギクギクッ

図星を指されて顔が引きつる。

正確には嘘じゃなくて、この場を乗り切るための口から出まかせだ。

「方便?それって、嘘ってことよねぇ?」

メデューサの青筋がピキッと音を立て、髪がいっそう大きくうねり始めた。

げーっ!まずいまずいまずい!

「う、嘘じゃねぇよ。おいクソミミズ!嘘だと思うなら、嘘だっていう証拠見せてみろよ!」

「ぐぬぬぬ」

ミミズは真っ赤になると、悔しそうに地団駄を踏んでいる。

そりゃそうだ。存在しないことの証明なんかできっこないよな。へっへ〜ん、ザマーミロ。

窮鼠猫を噛むってことだな。

・・あれ?合ってる?まいっか。

「その羽があれば完全無欠。無敵だよ、無敵。お前のそのムチみたいな髪の毛なんか、簡単にかわせんだよ」

「どんな羽なのよ」

げっ!そうきたか。

だーっ!どんなんだ?

ヤバいヤバい!ロウの羽なんてわかんねえよ!

想像を働かせろ!頑張れ俺!

焦りまくって、脳みそをフル回転させた。

「えーっと、鳥の羽を集めてロウで固めた羽だよ。こ、こんな、こんな感じの」

天使にくっついている羽を思い浮かべながら、身振り手振りで羽の形を作ってみせた。

「・・・・・・」

みんな無言になって、なぜかその場が静まり返った。

あのうるさいミミズまで、黙ってこっちを見ている。

やべぇ、何かおかしなこと言ったかな?

どこがダメだったんだ?

形か?

大きさか?

くっつけた位置か?

平静を装いながら周りの様子を窺っても、みんなが黙りこくっている理由はわからない。

・・・もしかしてビビった・・?

咄嗟に口から出たのが、メデューサ退治に使われたロウの羽だった。それにビビったってことは、コイツ、実は火星人じゃなくてメデューサだったとか?

それとも、神話に出てくるメデューサが火星人だったとか?

う〜ん。首を捻ってみたが、さっぱりわからない。

・・・もういいや、面倒くせ。

いろいろ考えるのにも、すっかり疲れてしまった。

さっさと全部片付けちまおう。

「なあ、もういいじゃん。羽を手に入れたら、逃げも隠れもしない。約束するって。だからその髪の毛引っ込めろよ」

「・・・・・・」

やっぱり誰も言葉を発しない。

う〜ん?なんでだろ。

だけど、言い返してこないってことは、納得したってことだよな?

よし!もうオールOKってことでいいな。

これで、あのムチみたいなウネウネ髪も収まんだろ。

ガチであれ怖えんだよ。

腕を組んでウンウン頷いていると、髪の毛を逆立てたままのメデューサが

「おいお前」

と、静かな声でナノに話しかけた。

「アイツは何を言ってるんだ?」

「わかんない」

さっきまで帯電していたはずなのに、今のナノは赤く明滅すらしていない。

およよ?と思っていると、ナノがこっちを向いた。

「AJ、ロウで固めた羽って何?」

「何って、そのまんまだよ。えっ?お前知らないの?ロウで鳥の羽を固めたやつ。それを両手に持つと、飛べんだぜ。あ!もちろん羽ばたかなくちゃダメなんだけどな」

そう言って、両手をバタつかせた。

まあ、ナノが知らなくてもしょうがない。所詮は金星のロボットだからな。

「・・・・・・」

「そんで、メデュ・・」

ギロッ

メデューサが、ナイフをような目を包丁くらいまで見開いて、鋭い眼光で俺を射抜いた。

ヤバいっ!石にされるっっ!

両手で目を押さえると、慌てて言い直した。

「メ、メメ、目にも止まらぬ早技でお前が繰り出す攻撃だって、華麗にかわせるんだ。そこでやっと互角になれる。お前だって、その方が戦いがいがあるだろ?」

多少噛んだけど大丈夫だろ。

でもいま俺、「戦いがい」とか言っちゃった?

やっべぇ!戦う気なんか、小指の爪どころか鼻くそほどもないのに。火星にロウの羽があったらどうしよう。

急に不安になって、心拍数があがってくるのがわかった。

「ねえ、AJ」

「うわぁ!」

ナノに突然声をかけられて飛び上がった。

「な、なんだよ。脅かすなよ」

「なんでロウで固めた羽なのさ?」

「さっき言っただろ?それを使えば、攻撃されたってヒョヒョイって避けられるからだよ」

「そんなの使えないよ?」

「はい?」

「羽だけでも重いし、そもそも、そんなもの持って羽ばたくなんて、できっこないじゃん。羽ばたけたとしても、100%飛べないよ。地球じゃなければ何とかなるかもしれないけどね」

「マジで!?いやだって、あの、あれ、装備品の中に・・」

だーっ、もうっ!

そんなはずないのに、今ここで『メデューサ』は禁句だから、説明するのがまどろっこしい。

だって、メデューサ退治の装備品の一つに、羽があったはずなんだ。んで、その他に鏡と、剣だか斧だか槍だかと、あと・・ヘルメット?かなんかが必要なんだよな、確か。

「あんたさぁ」

「うわぁ!」

今度は、メデューサに話しかけられて飛び上がった。

さっきから脇汗が止まらないし、まさか俺の方がビビってるとか?

いやいや。よもやそんなこと、あるわけないない。

心を強く!俺は鉄より強いんだ。

そうだ、チャリと同じステンレスだ!

ステンレス・アタルだ!

「なにブツブツ言ってんのよ」

「うわぁ!な、なな、なんだよ」

「私のこと『メデューサ』とか呼んでるけど、もしかして、ロウの羽がメデューサを退治した道具だと思ったわけ?」

バレた・・・!!

胸の中の心臓を、誰かにギュッと鷲掴みにされた気がした。

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