和解③~第十三章 再会の果てに①
とりあえず有坂かなめが勤務している会社を検索してみることにした。
「三文社か……」
ひとり言を呟きながら、後藤は検索した。
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マンションの前に到着した栄二は、卒業まで残り三か月をどうやって過ごそうか考えていた。
今まで有坂かなめが卒業論文の添削にやって来たから、退屈もせずに過ごせたのだが、これからは退屈な日々ばかりである。
あの皮肉が耳に入らないのも、やはりさびしかった。
「後藤には思いをぶつけたと格好つけたが、やっぱり未練があるな……」
「気持悪いわね。何をぶつぶつと言っているのよ」
聞き覚えのある声が後ろからしたので、栄二は振り向いた。
見覚えのある黒いスーツに派手な化粧。
有坂かなめだった。
「まさか俺は、尾行されていたのか?」
「喫茶店から出たところを目撃したのよ。面白そうだからずっとつけてみたわ」
「やれやれ。あきれたよ。話しかけてくれればいいのに」
「あなたの驚く顔を見るのが楽しみだったから。だけど、そんなに驚いてないみたいだから残念ね。ところで、卒業論文は提出した?」
「ああ。ばっちりだ」
「そう。それが聞けただけでも十分よ。私は仕事があるから、もう行くわ」
「待ってくれ」
「あら、また私を抱きたくなったの?」
それも間違いではなかった。またあの夜のような気持を味わってみたかった。
しかし、今の栄二はかなめがやって来たということを、ついさっき別れた後藤に知らせてあげたかった。
後藤は、かなめに会いたがっていたので喜んでやって来るだろう。
「いつも通り、くつろいでくれ」
かなめを部屋へと招き入れた栄二は、携帯電話で後藤に連絡をとった。電話口で後藤はすぐに来ると言った。
声に元気がないように感じたが、風邪でもひいたのだろうか少し心配した。
「後藤に会うのは、初めてだったな?」
「ええ」
「面白い奴だよ」
「きっとそうね」
かなめは、にこりと笑った。珍しく見せた笑みだった。




