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きみと、まるはだかの恋  作者: 葉方萌生
最終章 私たちの居場所

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52/55

7-4

「いよいよ来週、オープンだね。二人で頑張ろう」


「ああ」


 私は、昴と共に店全体が映るように、スマホでパシャリとツーショットを撮った。それから、すぐさま店のWi-Fiを使ってインスタに写真を投稿する。


【2/21 ついに店の名前が決定しました。

店名は……『Dining Café 花と星』です!

私の“ハナ”と、店長・城山昴の名前から“星”をとりました。

オープンは三月一日日曜日です。

ぜひ遊びに来てください〜!】


 写真つきの投稿はすぐさま「いいね」がついて、コメント欄も温かい声で埋まっていく。


【いい名前ですね。絶対行きます】


 そう宣言してくれるファンの声を昴に見せる。

 

「嬉しいこと言ってくれるじゃん。波奈のファンって、あったかいひとばかりだな」


「対象の私があったかいひとだからね?」


「はは、確かにそうだ。あったかいわ」


 そう言いながら昴が私をぎゅっと抱きしめる。

 ちょ、ちょっと、「温かい」ってもしかして体温のこと?

 ……なんて、照れ隠しで心の中でつっこみを入れる。

 素直じゃない昴も、私の仕事のことを本気で心配してくれる昴も、私を大切にしてくれる昴も、全部ひっくるめて好きだ。


 昴の匂いを感じながら、お店の窓の外に見える田舎の冬景色を記憶に刻みつける。初めて訪れた時は秋だったのに、もう冬が終わり、春が来ようとしている。どの季節、どの瞬間も、星見里の風景は都会で疲れた私の心を癒してくれた。これからはここで、温かいご飯とともに、訪れたひとたちの心に灯火をつけよう。

 ひそかに胸に誓うのだった。


 三月になると、昨日までとそんなに気温は変わらないのに、なんでか一気に春になったような気分になる。

 三月一日日曜日の朝、昨日と変わらないダウンコートを着て、昴と一緒に『Dining Café 花と星』に向かった。辺りは早朝の静けさに冷たい空気がしんしんと漂っていて、だけど空は明るく澄んでいた。顔を出した太陽が、記念すべき一日の始まりを見守ってくれているようでまぶしいけど温かい。


「波奈、今までありがとうな」


 お店の扉を開けた昴が振り向きざまにふとそう言った。不意打ちすぎで、全然心の準備ができていなかった私は、「え? う、うん」とドギマギとした返事をする。


「急にどうしたのよ、改まって」


「なんか、今言っておきたいと思って」


 白い歯を見せて笑いながら、昴が照れたように私に手を差し出した。


「そういうのはさ、このお店が成功してからにしようよ?」


「はは、それもそうだな。頑張ろう」


 昴が差し出した手のひらを拳に変えて、私に突き出してきた。自分の拳をコツンと当てると、俄然やる気が湧いた。


「それじゃ、オープン準備をして十一時には開店できるようにするぞ」


「うん!」


 二人の、気合十分の声が澄み渡る空に高らかに響き渡る。お昼時のオープンに備えて、バタバタと忙しない準備が始まるのだった。


 そして、十一時。


「おお、ここが昴の店か〜。『Dining Café 花と星』、いい名前じゃん」

「店名に私の名前を入れるなんて、城山さん私のこと大好きじゃないですかあ?」


「昴お兄ちゃん、波奈お姉ちゃん、プラネタリウム見たーい!」

「こらこら紬、大きな声出さないで」


「ここがハナのお店? めっちゃ雰囲気いいじゃん」

「星見里、初めて来たけど綺麗だね」


 星空ツアーの二人、長嶋さんと星田さんがオープンと同時にやってきてくれた。

 その後ろには三上さんと紬ちゃん、紬ちゃんの友達のえりこちゃん、ゆうとくん、村長、村のお年寄りのおじいちゃん、おばあちゃん、観光客と思われるお客さんの若いカップル、女子グループ、重村さん、そしてなんと、『ベストツーリズム』の北村プロデューサーや中井さんまでいた。


「ハナさん、久しぶり」


「北村さん、中井さん、来てくださったんですね」


「もちろん。取材を——と言いたいところだけど、まずは普通に食事を楽しませてもらおうかと思ってね」


「ぜひ! 星見里の食材をふんだんに使ったメニューばかりなので、お楽しみください」


 北村プロデューサーが「それは楽しみだ」と答えるのを聞くと、昴が「こりゃすげーな」と感慨深そうにつぶやいた。


「初日にこんなに人が来てくれるなんて思ってなかった。二人で大丈夫かな」


「任せて。私がなんとかするから!」


 確かにこのお客さんの数を見てビビる気持ちはとてもよく分かる。でも、みんな『Dining Café 花と星』の記念すべき一日目を見ようと思って来てくれたのだから、オペレーションが回らずにがっかりなんてさせたくなかった。


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