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きみと、まるはだかの恋  作者: 葉方萌生
最終章 私たちの居場所

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7-3

***



 それから二ヶ月間は、仕入れ先の決定、メニュー決め、オペレーションの確認、と大忙しだった。

 昴も所属している地域おこし協力隊のみなさんが各農家に掛け合ってくれて、農作物を卸してもらえることになった。

 田中さん家のピーマン、村重さん家のキャベツ、戸倉さん家のじゃがいもなど、それぞれの農家から各種野菜、果物を送ってもらう。肉は精肉店で、魚は川魚中心にメニューを決めることにした。

 

「せっかくだから、メニュー名にどこの農家さんの食材を使ってるか入れない?」


「いいね、それ。メニュー名もパンチが効いてるほうがSNSでシェアしたくなりそう」


 メニューと、メニュー名を決める場面ではうんうん唸りながらも、食材の魅力が伝わるようなネーミングを昴と一緒に考えた。


“田中さん家のピーマン肉詰め定食”

“村重さん家のシャキシャキロールキャベツ定食”

“戸倉さん家のほくほく肉じゃが定食”


「ふふっ」


 実際に名前をつけてみると、作り手のぬくもりを感じられていいなと思った。その後も昴と二人で、ああでもない、こうでもない、とたくさんのメニューを考えて、実際に採用するメニューを八種類に絞り込んだ。


「よし、これでメニューは決まり! あとはメニュー表作成とPR用のチラシ、ショップカードなんかも作ろう」


「お店のことをその場でSNSに投稿してくれたら割引になるサービスも入れようよ」


「作り手の農家さんたちからメッセージを書いてもらって、店に飾ろう」


 話し合えば話し合おうほど、いかにして星見里の魅力を知ってもらえるようなカフェにするか、アイデアがどんどん出てきた。

 そして、昴と共に、お店を賑わせるための工夫をたくさん詰め込んで、とうとう開店一週間前を迎えた。


「ねえ、最後に決めなくちゃいけないことがあるよね?」


「店名だな」


 そう。カフェの店名について、実はまだ決めていなかった。看板を作ってもらう発注先は決めていて、最短三日で仕上げてくれると聞いていたので、ぎりぎりまで粘って考えていたのだ。


 お店のテーブル席に座って二人して考え込む。真新しい木材の香りにもとっくに慣れてしまったけれど、この場所にこれからたくさんのお客さんが来てくれることを考えると、胸の高鳴りは止まらなかった。


「せっかくなら、私たちらしい名前がいいよね。二人で頑張ってきたんだもん。この先もできるだけ長くカフェを続けられるように、愛着が湧く名前にしたい」


「そうだな。波奈と俺……共通しているのは町田出身ってことか?」


「ぷっ」


 昴の口から町田という地名が出てきて思わず吹き出した。


「なんで笑うんだよ」


「いやだって……町田を店名に入れるのは無理でしょ〜」


「連想ゲームをしようとしただけだっ」


「そっかそっか。でも町田は確かに私たちの原点だね。今思えば、町田の星空も綺麗だったのかも」


「あの頃はちゃんと空を見上げようって考えなかったからな」


「自然豊かなところも多かったのにね。あ——」

 

 町田での暮らしに想いを馳せて懐かしい気分に浸っていると、突然頭に一つのインスピレーションが降ってきた。


「どうした?」


 昴が私の顔を覗き込む。彼の後ろの床に置かれた、もさもさと伸びるガジュマルの木が、聞き耳を立てているように感じられた。


「思いついたかも」


「店名?」


「そう。私たちにぴったりの名前」


「おお、なんだ?」


 好奇心に満ちた恋人のまなざしを感じながら、私は大きく深呼吸をする。そして、心の中でその考えついた店名を三回唱えてから、ゆっくりとその名を告げた。


「『Dining Café 花と星』」


 実際に口にしてみると思っていた以上に口に馴染む名前だった。昴は、瞳をぱちぱちと瞬かせたあと、にっこりと口角を上げた。


「いいじゃん。波奈が“花”で俺が“星”ってことね。自然な感じも伝わるし、プラネタリウムがあることも表現できてるし、本当にぴったりだ」


 昴もお気に召してくれたようで心の底からほっとした。

 店名が決まり、肩の荷が一つ降りたところで、昴が早速コーヒーを淹れてくれた。コーヒーの淹れ方は三上さんからきっちり指導を受けている。その他、飲食店を経営するにあたって必要な資格の取得も行政への届出も、全部二人で頑張ってきた。


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