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きみと、まるはだかの恋  作者: 葉方萌生
最終章 私たちの居場所

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7-1

「あけましておめでとう〜!」


 カチン、とビールのジョッキを傾けると、あふれんばかりの泡が「早く飲んでくれ」と主張をしてくる。私、昴、重村さんの三人でごくごくと喉を鳴らしながらビールを流し込んだ。   

 ああ、みんなで飲むビールは最高だ。

 つまみの「ペペロン枝豆」も塩気とガーリックな香りがたまらなく良い。これは止まらないなと危惧していると、さっそく重村さんが二個目、三個目、と手を伸ばしていた。


 一月九日金曜日の夜。

 昴が珍しく東京に行きたいというので、私と重村さんは星見里からやってくる昴を交えて新年会をしようと持ちかけた。カフェの工事が始まってから、私も重村さんとはすっかり友達になり、こうしてお酒を飲み交わす仲になっている。

 訪れたのは吉祥寺にあるこぢんまりとした居酒屋だ。路地裏にあり、知る人ぞ知るお店なので、いつもそれほど混んではないらしい。 重村さんが吉祥寺に住んでいるということで、教えてもらった。


「にしても工事が無事に終わってよかったな〜。Wi-Fiの件はひやひやしたけど」


 すでに顔を真っ赤にした重村さんが感慨深そうにつぶやく。

 そうなのだ。カフェの工事は無事に予定通り昨年末に終わった。出来上がったカフェは、元空き家とは思えないほど綺麗な空間に仕上がっていた。

 外観はほとんど手を加えていないので田舎のレトロな民家、というような感じだが、店内に足を一歩踏み入れると、木の温もりが漂う落ち着いた空間が広がっている。プラネタリウムの部屋は、大胆に店内の四分の一ほどの広さを占めていて、部屋の中に入ると壁や天井に煌めく星空が映し出される。部屋の中央にプロジェクターが置いてあるので、席はそのプロジェクターを囲むように、六席設置することになった。しかも、それぞれの席が映画館の座席のようになっており、リクライニング機能がついている。まさに、食事をしながらプラネタリウムに来た気分を味わえるというわけだ。


「あのアイデアは良かったよ。プラネタリウム。あんなカフェ見たことない」


「東京にいくつかあるみたいですよ。でも、数はそれほど多くないとは思いますけど」


「もともとは紬ちゃんのアイデアだしね」


「うん。なんにせよ、星見里の魅力が十分伝わるカフェになっているな。ちなみに店名はもう決めたのか?」


 重村さんが、運ばれてきた茄子田楽を頬張りながら聞いてきた。

 私は昴と顔を見合わせて、首を横に振った。


「それが、まだなんです。どんな店名が相応しいか、考えているところで」


「そうなんだー。どうせなら二人らしい名前がいいよね。あとは一発で覚えてもらえそうな名前」


「そうそう。考えすぎて決まらないというか」


 昴と共に苦笑いしていると、重村さんが「なんか二人って」と私たちを交互に見つめた。


「やっぱりめちゃくちゃお似合いだよな。このまま結婚するの?」


 唐突に“結婚”などという爆弾ワードを投下され、私たちは慌て出す。昴が「いやいやー」と手を横に振る仕草を見て、なんだか胸がずんと疼いた。


「え、しないの? てっきり俺は結婚するもんだと思って」


「いや、まだ考えてないのであんまりせかさないでって意味だよ」


「そうか、そうか。俺がもしハナさんみたいな美人捕まえたら一生離さないけどね?」


 ニタリと愉しげに笑う重村さんは完全に酔っている。恥ずかしくなった私は俯いて、また食事の続きを始めた。


 “まだ考えてない”か……。

 でもまあ、そうだよね。だって昴とはまだ付き合い始めたばかりだし。結婚なんて一年、二年、と交際を続けてからようやく考え出すものだ。焦ったって仕方がない。

 そう思うのに、胸に小さな棘が刺さったみたいに、その後の時間はなんだか三人の会話に集中することができなかった。


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