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婚約者様は大変お素敵でございます  作者: ましろ


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33.感謝と祝福を君に(ベンジャミン) 3

──シンディーに赤ちゃんが?


「おめでとう! ごめん、変な話をしに来てっ」


どうしよう。赤ちゃんってお腹の中で外の音を聞いてる? とか何とかパメラが言っていたような? え、今殴られてエロガキって言われたのも聞こえちゃったのか?


「……ふぅ~」

「え! 大丈夫か、シンディー!」

「大丈夫、気が抜けただけ……。ごめんね。あなたが祝ってくれなかったらどうしようって、少し不安だった」

「そんなわけっ!」


……いや、今までの俺ならそう思われても仕方がない。


「本当に嬉しいって思ってるよ。兄弟に憧れてたし。いい兄になれるようにこれからももっと頑張るから。

父上、シンディー。本当におめでとう」

「ありがとう、ベン。本当に頑張っているのだな」

「……違うよ。俺は凄く恵まれている。だってたくさんの人達が俺を助けてくれている。だから何とか頑張れているんだ。……父上とシンディーも見捨てないでくれたしな」


生まれてくる子を手放しで喜べない状況を作ってしまって申し訳なかった。俺がこんなじゃなければ、もっと喜べただろうに。


「婚約破棄の手続きが済んだ後、ハミルトン伯爵から手紙が届いた。お前を後継者に戻しても構わないと」

「……え?」

「一度後継から外し騎士団に入ったことで、償いは終わりでいいと言ってくださった。

あとは私達の判断に任されていたんだ」

「そうだったのですね」

「まずお前の気持ちを聞こう。お前はこれからどうしたい?」


俺のしたいこと……。


「……このまま騎士見習いを続けながら、まずは学園を卒業する。それから、騎士団の事務官になりたいと思っているんだ」

「事務官?」

「俺を担当してくれている班長にも相談したんだけど、俺はあまり騎士には向いていないかなって。

ためになることはたくさんあるんだ。だけど本質的なことが向いてないっていうか……、その、いざというときに相手を討つ覚悟が持てない。どうしても躊躇してしまうんだ。それは騎士として許されることではないだろう?」


自分の手で人を傷付けることが、もしかしたら命を奪うかもしれないことがどうしても怖い。でも、彼等のことは本当に尊敬しているし、このまま諦めるのではなく、自分のできることで関わっていきたいと思った。


「事務官なら俺でもやっていけると思うんだ。これでも勉強は得意だし。書類仕事の方が向いているだろう?」

「そうだな。お前が剣を持って戦うよりは向いてるな」

「……騎士団に入れたのは父上だろう」

「うん。お前には、大切なものを守れる人間になってほしかったからな」


大切なものを守る……。

そうだな、俺は大切なものをずっと信じきれずに傷付けてきた。あれは試し行動だったのかもしれないと気づいたとき、あまりの恥ずかしさに愧死(きし)するかと思った。

本当に甘ったれの子どもだったんだ。


「お前の気持ちは分かった。私達はね、後継ぎはしばらくは決めないでおこうと話し合っていたんだよ」

「そんなことをして大丈夫なのか?」

「ああ。いつまでも先代達に口出しをされたくはないしな。何よりも、後継ぎが必要だから生まれたって思ってほしくない。お前の場所を奪ったとも思ってほしくない。子どもは愛の結晶だろう?」

「うわ、恥ずかしい台詞を真顔で……」

「オホホっ、愛の言葉は惜しみなく! しっかりと教育済みよ!」


この二人は本当にお似合い夫婦だ。


「と言う訳で、そういう事情を理解してくれるお相手じゃないと、という問題が出てくるんだ」


そうだった、その相談をしに来たんだ。


「相手の女性は?」

「パメラ・クアーク伯爵令嬢です」

「それはまた……」

「彼女は謹慎中でしょう? 社交を控えているって聞いたわ。それならまだ求婚者はいないのではないかしら」

「ふむ。彼女の気持ちはどうなんだ? うちから婚約の話を持っていくことはできるよ。ただ、それが喜ばれるかどうか」

「……明日、告白しようと思って」

「まあ!」

「でも先に父上達に話をしないといけないと思って……くそ、恥ず……」


なぜ親に告白予告をしなくちゃいけないんだ!


「分かった。ではその結果を聞いてから申し込んだ方がいいんだね?」

「うん。うちの方が家格が上だし、駄目だったときに断り辛いだろうから」

「お前がそう決めたのならそうしよう」

「……ありがとうございます。じゃあ、これで帰ります。シンディー、体に気を付けて」

「ありがとう! 頑張ってね!」

「うん、じゃあまた」



それにしても驚いた。弟か妹が生まれるのか。

……うん、やっぱり嬉しい。それ以外の感情がなくて自分でもほっとした。


パメラに伝えたらきっとおめでとうと言ってくれるだろう。


告白は──難しいかなと思っている。

前みたいに俺の顔だけでどうにかできれば……いや、そんな人ならそもそも好きになんかならなかった。


他に誇れるものがない自分に呆れた。

それでも、これが俺だから。足りないところだらけのつまらない男。

いまさら彼女に取り繕うこともできなくて丁度いいのかもしれない。そのままの自分で、今の気持ちを伝えたい。






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