別れと脱出
「俺に考えがある」
そう言った圭兄
「チューヨウ国に避難する」
「国境の壁をどうやって越えるんだ?ポポロで数回往復になるのか?」
「国境の壁の上にも結界が張られているのだろう?」
「三カ所国境の上に結界がない場所がある。
エルフの森は今回行けないし、南の村からダッサク共和国に抜けるも駄目だ。
後はルミエ畑だ。
あそこは国境の壁と黒霊亀の結界と重なる所に空きがある。
ルミエ畑の上も結界を避ける事が俺達なら出来る」
「どうやって?」
「アルタマリのチリーラだよ。アルタマリが鳴くと黒霊亀は警戒を解いてくれる。
黒霊亀の結界は低いからその上を飛べばチューヨウ国に入れる。
匿ってくれる貴族も当てがある」
「ちょっと待ってくれ」
手を挙げたのはマークだった。
「俺はこのまま南の村に行こうかと思う。皆と別れるよ」
「なら、ケープを連れてユーゼン村に向って欲しい。いいかな?」
私はマークに願う。
「ケープ、村に帰って勇者が誕生したか確認して!」
「そう……。わかった。マークと帰るよ」
夜になり別れて出発する。
皇子とウェリーはポポロに、私と圭兄はユキに乗って国境の壁を越える。
優雅に飛んで行くポポロと違い、ユキは思いっきり助走を付けてジャンプする。
「チリーラ、お願いね」
チィチィと鳴いてくれる。
ルミエ畑の上だ。
チリーラはずっと鳴いてくれた。
南の黒霊亀が片目を開けたが動きは無い。
チリーラの鳴き声のせいか、こちらまで心が柔らかくなる。
ユキの背の上で圭兄が私を抱き締めて耳元で語り出す。
「真実を話すよ。こっちでは成人は十五歳だろ。
この異世界は色々厳しいから十五歳で精神的にも大人になるしかないのだろう。
俺達の世界で成人は二十歳、いや今は十八歳か?
まだまだ俺は子供だった。体も心も……。
まだ甘えん坊の子供だった。十六歳の俺は」
「二十歳でもあっちの世界じゃ子供よね。
温々(ぬくぬく)の世界で欲しいものは大抵手に入るわ」
「彩は手にできた?」
「本当に欲しいものは……難しいけど」
「家族が……俺は彩が欲しい。
ダッサク共和国でアンという娘と結婚したけど、それは彩を諦めるためだった。
この異世界で暮らす事も考えたけどアンが死んだ時子供を預けたままであっちに戻ってしまった。
レンは俺を父親だと知らずに魔王討伐に付いてきたんだ。
酷い男だよ、俺は……」
「レンと言うのが息子なの?」
「あぁ、共に旅をしたけど年齢があわないから、息子というより仲間だったな」
「年齢?」
「三年後、俺が二十歳でこっち来たらレンは三十歳超えていたからね。
討伐の褒美に俺のガベル姓を名乗って聖騎士から貴族になったよ」
「魔王を討伐したの?」
「いや、本当は討伐ではなく封印しただけだ。
聖女様が封印だけにして欲しいと言ったんだ。
その為にウェンディと魔石を貰った。
さっちゃんをはじめとして、聖女様は俺達と同じ“流れてきた人”なんだ」
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