侍女長
ユキは寝る前に必ずウェリーを押し倒す。
何かの儀式かと思うほど……。
「ウェリー様、亡くなった父親って子爵様?」
「まさか実父は元気で、子供を二十五人ほど作ってるよ。
親父って言うのは十五歳から育ててくれた冒険者の師匠さ」
「そうなんだ。ところで、ユキは毎日何してるの?」
《ウェリーのめ ナオス デキナイ》
ユキのレベルが上がっているのは分かっていたけれど、ウェリーの眼を治そうとしているのか……
ケープは飽きもせず領主様から借りた本を借りて読んでいた。
夕方、侍女長のレッカさんの痛いも治らないとユキが言う。
「お嬢様を治してくださって感謝します」
「正直あそこまでの火傷だと命も危なかったのでは?」
「はい。丁度この町に来ていた精霊の使徒様が痛みを和らげて落ち着くまでずっと眠るように魔法を掛けてくださいました」
「精霊の使途様?どんな方ですか?」
「はい。闇の精霊の使徒様と聞きました。かなりご年配の方で
『私ではここまでしか出来ないから後は聖女様に治してもらうが良い』
とおっしゃってすぐに去って行かれたのです」
「闇の?」
私は混乱する。
「ところで、侍女長の腕は?」ウェリーが見かねて聞いてくる。
「あの火事の時、ベランダから飛び降りた私を受け止めてくれたのです」
シェリューが申し訳なさそうに話す。
「アーヤさん、レッカも治りませんか?」
「そうですね……」
侍女長を鑑定する。
――氏名:レッカ
年齢:五十六歳
職業:ケサンドラ家の侍女長
*
右腕上腕骨の複雑骨折
タブレットで写真を撮っても骨が写る訳では無い。
「流石にレントゲンは撮れないか……。ユキ、骨って分かる?」
《ホネ?》
「身体を構成している堅いものなんだけど……」
説明の難しさに閉口する。
そうだ!腕の中にある骨の絵を描いてみる。
「ギザギザな骨をまっすぐにするの」
イメージが出来たのか《ナオス》ユキが唱える。
「どうですか?」
「あぁ!腕が曲がる。痛くない」
喜ぶ侍女長とシェリュー
ユキの《ナオス》もやはりイメージが大事らしい。
流石に眼の詳しいことは私にはわからない。
「ウェリー様、眼はごめんなさい。治すのは難しそうです」
「いいえ、ここまで治して貰って感謝しています。
ところで何故急にウェリー “様”?」
「えっ。貴族様でしょ?」
「様は辞めてください。使徒“様”」
お互い見つめ合って笑い合う。
ユーゼン村迄行っていたタナカ商団が戻って来て、領主様の所に挨拶に来た。
後三・四日したら国境側に闇夜花が咲くので、一緒に見に行かないかと提案され、私達は了承する。
ケープは領主様の本をまだ沢山借りて読んでいた。
私がノートと羽ペンをあげるとにっこり笑い、ずっと書き留めていた。
歴史書から魔法の本、そして今は経済の本を読んでいた。
ノート一冊じゃ足りないみたいだ。
シェリューが奏でるバイオリンの調べがお城中に響き渡る。
侍女長のレッカさんが薄らと涙を浮かべていた。
私はマジックバッグからキャンパスを取り出し、内緒でケサンドラ家の家族の絵を描く。
椅子にシェリューを座らせた形で、後ろ両脇には領主様そして想像で少し年齢を重ねた奥方様を描く。
喜んでくれるだろうか?それとも許可無く描いて怒られるかな?
読んで頂き有り難うございます。
感想等いただけると嬉しいです。
宜しくお願いします。




