男とタブレット
私が起き上がると同時に
『痛い!』男が叫んでいる。
ユキが大きい姿になり、その男の足を思いっきり噛んでいたのだ。
大きい声でその男の連れらしき人が数人やって来た。
「ユキ!離して!」離した足は血だらけだ。
《アヤ ダイジョウブ?けが ナオス》
男はまだ立てないくらい痛そうだ。
『どうした?』
『この人が精霊の使途らしい。この人のせいで俺達の……』
言葉が日本語に聞こえる。
白い口ひげを蓄えた紳士が
「使徒様ご無礼致しました。この者をお許しください。
今我々は苦境に立っているので、焦ったうちの者が失礼をしました」
「苦境……?兎に角、襲った訳を聞かせて貰えますか?
あっ、ユキその人の怪我を治してあげて」
ユキは不思議そうな顔で《ナオス》をしてくれた。
男の血が止まり、傷が治っていく。
襲った男は呆然としている。
「有り難うございます。いかなる罰も私が追います。
私はチューヨウ国の下級貴族ランゼル・タナカと言います。
隣に居ますのは息子のシューゼル・タナカ。
そして、事を起こしましたのは我が店の者モーズといいます」
丁度そこに帰ってこない私を探しに来たウェリーとケープがやって来た。
「どうされました?大丈夫ですか?」
ケープが私の前に保護するように立つ。
「どうゆう事か説明してください」私が毅然として話を始める。
下級貴族タナカと名乗った二人は片膝を付き、モーズという男達は土下座している。
タナカ氏の話によると、去年から店の命運を賭けトメトの生産を始め、今年は順調だと思ってゼンダール帝国に来て見れば村や町のトメトの色が戻っていて少しも売れない状況だと。
これでは店が潰れて借金も返せず、貴族籍を奪われてしまう。
「使徒様のせいにするなんて、とんでもない」ケープが怒る。
荷馬車に積まれた沢山のトメトを見て甘いトマトが食べたいと思った。
私にある考えが浮かんだが、問題はタブレットだ。
「そうだ。教会!教会は何処にありますか?」
町の人が指差す方向へ皆で走って行く。
夜閉まっている教会の扉をケープが叩く。
何用かと怒る神父様に
「こちらのアーヤ様は精霊の使途様です。
緊急の要件があり、神様へのお目通りを願っています。
神父様突然の訪問をどうかお許しください」
ケープはいつ覚えたのだろう、丁寧な言葉で神父様を感心させる。
「使徒様でしたか、こちらこそ失礼しました。ご自由にお入りください」
急いでいるので一礼だけし、教会の中央で祈り光に包まれる。
『 どうしました? 』
現れたのはアポロ一人だった。
「突然ですみません。タブレットが壊れてしまって困っています」
『 見せてください 』
タブレットを見せると、アポロは指でツンツンと叩き開いた手から光が溢れた。
『 ほれ。直ったよ 』
「今のは?」
『 復元魔法の一つ。壊れる前に戻したの。これで大丈夫 』
「復元魔法、私にも教えてください。と言うか、これで町全部三年前に復元しては?」
『 君には復元魔法はあげない方が良さそうだ 』
「何故?」
『 三年前に戻す?
では、その間に作られた物、また生れてきた子供達は?
無くなってしまうよ 』
「そうですね。考えが足りませんでした」
反省だ!恥ずかしい。自分の顔が赤くなるのがわかる。
『 でも……そうだね。壊れるのは良くないね。
大事なものだから……自動修復機能を付けよう 』
タブレットが虹色に光る。
「有り難うございます」
『 これで 壊れても大丈夫。すぐに直るから。じゃ 』
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