圭の想い Ⅱ(聖女様編)
【残酷な描写】事件・誘拐の描写があります。
今回のお話 彩の兄 圭の視点で描かれています。
あれはまだ僕が八歳だった。
家族で近所の方々とキャンプに出かけた。
入ってはいけないと言われた森の入り口に違和感を感じ、親の目を盗んでそこへ向った。
一人で行くつもりが、彩と俺の同級生だった“さっちゃん”という子も付いてきた。
あっと言う間の出来事だった。
僕と彩と彼女の三人は光が輪になっている深い黒い穴に落ちた。
落ちた所は知らない場所で床に不思議な模様が描いてある部屋だった。
知らない男達に囲まれた僕達は泣いていた。
「聖女だけで良い。後は捨てろ」
神父様のような服を着た男達に、俺と彩は建物の外に捨てられた。
振り返ると、そこにはお城と呼ばれるような建物が目の前にあった。
さっちゃん、彼女はどうなるのだろう?
しかし今は彩が大事だった。
門番の騎士が哀れだと思ったのかコインを二枚くれて
「あちらに市場がある。お菓子でも買っておいで」と言った。
とぼとぼと歩いて行くと、やはり見知らぬ町だった。
話し声は聞き取れるが文字が読めない。
暗くなってきて店はドンドン閉まっていく。
男達が酒を飲む時間のようだ。
大男が彩を捕まえそうになる。
二人で逃げ出したが、袋小路に掴まった。
《駄目だ》と思った時、足下に光る黒い穴が現れ二人で飛び込んだ
帰ってきた。元の町に帰ってこれた。
僕達が戻ってきたのはキャンプ場近くの駅だった。
「さっちゃんは知らない男の人に連れて行かれた。僕達二人は逃げてきた」
僕は大人達にそう話した。嘘ではない。
誘拐事件として新聞にも大きく載った。
結局、さっちゃんは戻ってこなかった。
僕達もマスコミに追いかけられ、今のマンションに引っ越した。
三年後、下校中のマンションの広場で光る黒い穴をまた見つけた僕は迷い無く飛び込んだ。
するとそこには、あの欧風の景色があった。
今回は外だった。街中がうるさいくらい賑わっていた。
「聖女様!聖女様!」女性が叫んでいる。
ちょうど聖女様のパレードが行われていたのだ。
聖女様を乗せた馬車が目の前を通る。
聖女様と呼ばれていた女性は“さっちゃん”の面影を残した大人の女性だった。
「さっちゃん」と叫ぶと目が合った。
聖騎士に連れられ、あのお城のような建物で対面すると、さっちゃんは泣いていた。
「こちらでは三〇年以上も経っているのに、あなたはあまり変わってないのね」
「あっちではまだ三年しか経ってないよ。誘拐事件となって新聞にもでたんだよ」
「そう」聖女様は悲しい笑顔を見せた。
彼女の世話係に聖女候補と呼ばれる子供が三人ほどいた。
一人は日本人で、後はアメリカ人とフランス人だ。
言語は違うのに何故か聞き取れる不思議な感覚だった。
僕は聖女様の計らいで自由に行動して良いといわれたので、以前の袋小路に行ったが光る黒い穴は見つけることが出来なかった。
仕方なく二ヶ月ほど聖女様の聖騎士ベンに世話になる。
ベンとは寝食を共にし、剣の使い方など優しく教えてくれた。
二十三歳の彼はもうすぐ結婚すると話していた。
毎日のように聖女様に会いに行ったが、聖女様の周りには大金を持った貴族といわれる大人がいつもいた。
人の治療を行っていたが、とても疲れると言っていた。
建物の中庭に穴を見つけた僕は聖女様に報告するが一緒に帰るとは言わなかった。
聖騎士達は安堵の表情を見せた。
聖女様が帰れない理由は色々あるのだろう。
ただ家族に手紙を頼まれたが、名前以外は見知らぬ文字だった。
~*~*~
いつの間にか病院の彩が眠るベッドの横で居眠りをして夢をみていた。
あの欧風の景色だった。
その中でアーヤと呼ばれ笑っていた。
目が覚めた僕は まさかと思った。
俺は光る黒い穴を探すために、部屋を飛び出した。
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