それぞれの考え
「意外だわね、コタからあんな言葉が出てくるなんて」
ふーちゃんの言葉に頷く私。
「人に変化しているって言っても、やっぱり本性は動物だからなのかしら。
町にいる時は食堂…ふぁみれす?とか言うところでご飯を食べるし、家だとちゃんと調理された物を食べるそうだけど、山にいる時って、狩った獲物をそのまま食べるって言ってたわよ。
逆に家族が熊などに食べられることもあるって、弱肉強食の世界に生きてきたから、言えることなのかしら」
私の言葉を聞いて、少し考えた後、ふーちゃんが言ったわ。
「人や亜人として考えると怖いことに感じるけれど、動物なら当たり前のことなのかしら」
「縄張り争いとかもあるそうで、同じタヌキ同士で争うこともあるって言ってたわ」
コタに聞いた話を続けると、
「動物同士だけじゃなくって、人間同士も争うなんて、怖い世界よね」
私は大きく頷くわ。
だって今まで喧嘩する事はあっても、命の取り合いなんて考えたこともないもの。
「……でもこれからも旅を続けるなら、今日みたいなこともあるのよね」
ふーちゃんの漏らした呟きに、心の底がヒヤッとしたの。
また命を、それだけでなく荷物や、私たち自身も狙われたりすることがないとは言えないのよね。
子供の頃から聞いていた冒険者のお話にはそんな事ちっとも書いていなかったけれど、コタの話の方がリアルだわ。
これからも狙われるとしたら、リュート兄さんだけではなく、マコやコタ、私も人の命を奪うことになるのかもしれないのよね。
「…………ねぇアス、これからどうする……ううん、どうしたい?
私はアスのしたいようにすればいいと思うの。
だってずっと冒険に出たいって言ってたの聞いてきたんだもの」
ふーちゃんがまっすぐ私を見ながら言うわ。
「……こんな言い方するのって、責任まであなたに負わせるみたいだけど、【私も世の中を見て回りたい】ってら気持ちあるんだけど、その気持ちの元はあなたの夢に触発されたものだから、あなたが夢を諦めないなら私もついて行くし、諦めてもそれはそれで元の平和な生活に戻るだけだし。
いっときでもワクワクする夢を見られて楽しかったで済ませられるの。
……あれ?結局はあなたの負担になっちゃうのかしら」
ふーちゃんの言葉に考えてみる。
元々は私の夢に皆がついてきてくれているのだから、まず私がどうしたいか決めなきゃならないのかな。
それから皆と話して行くか戻るか…。
でもね、でもね、グダグダ考えているけれど、心は決まっているのよね……。
*****
剣を手にして初めて人の命を奪った。
あの感触が手から離れない。
コタの話を聞く限り、随分甘い世界に居たようだ。
剣を持つ限り、命を奪う事は回避できないだろう。
動物然り、人然り。
それでも、俺がやらなければ奪われるのは仲間の命だ。
俺がやらなければ手を染めるのはマコ達だ。
俺にはそちらの方が耐えられそうにない。
無闇矢鱈に奪うのではなく、奪われるのを防ぐ為…俺はまた剣を握るだろう。




