困惑と混乱
気がつけばベッドの上だった。
「あ、マコちゃん、気がついた?
どこか痛いところとかないかな?」
窓に寄りかかっていたミトさんが、近寄ってくる。
「ここは?」
「ん?一旦王都に戻って来たんだ……その…皆ショックが大きくてね」
あの後、怪我をしだ盗賊達は縄で縛り逃げないようにして、生活魔法で血の汚れを落とた皆は、リュート兄さんを見張に置き、気を失ったボクをミトさんが背負い、王都へ戻った。
王都で兵士に盗賊と戦い、捕らえている事を伝え、宿で休むことにしたそうだ。
姉さん達とコタは一緒の部屋、リュート兄さんも戻って来ていて、今は別の部屋に居るらしい。
「夜にでもこれからどうするか話し合うそうだよ」
俺も部屋へ戻るねと、ミトさんが部屋から出て行く。
人が死んだ……いや、ボク達が人を殺した…………。
今まで動物を狩った事はあるけれど、人を傷つけた事はない。
それはボク以外も同じだろう。
でも死んだ。
ボクが殺されそうになったから、リュート兄さんが……。
食べるために動物を殺したり、魔物などが出てきたら、鍛錬を積んだ剣で倒すつもりでいたけれど、人間を傷つけるとは思っていなかった。
ボクに降り注いだ生暖かい血の感触が身体から消えない……。
ボクは頭からシーツに潜り込み、体を丸めて頭と身体から記憶を追い出そうと、キツく目を瞑った。
*****
「マコちゃん起きた?
リュートさんの部屋に集まってるんだけど行ける?」
ミトさんに声をかけられるまで、シーツに潜り込んだまま、また眠っていたようだ。
ミトさんと一緒にリュート兄さんが借りている宿の部屋へ向かう。
部屋には姉さん達とコタもいた。
「マコ、大丈夫か?」
椅子に腰掛けたリュート兄さんが声をかけてくる。
アス姉さんとふーちゃんはベッドに座り、手を握り合っている。
コタはタヌキ姿でふーちゃんの膝の上だ。
ボクは窓辺に立ち、ミトさんはドアに寄りかかった。
しばしの沈黙の後、リュート兄さんが口を開く。
「……これからどうする?」
リュート兄さんの言葉に、視線を落としたままアス姉さんが言う。
「どうするなんてすぐ答えられないわよ…。
やっとメンバーも集まって冒険に出たと思ったら、すぐにこんな事……」
「…………一旦村に戻って、気持ちが落ち着くまで出発を見合わせるか?」
リュート兄さんが一番無難だと思う案を出したけれど、アス姉さんは声を荒げた。
「だからすぐになんて答えられないって言っているでしょ!」
そのアス姉さんの肩を抱き、ふーちゃんが言う。
「そうね、出発してすぐにこんなことになるなんて思いもしなかったもの。
でも村に戻ると多分……冒険に出る事はできなくなるんじなないかな」
ふーちゃんの言う事は最もだと思う。
きっと両親も、何より村長が止めるだろう。
「子供の頃から夢に見てたのよ!
やっと村を出てこれからって言うのに、凶暴な獣とか魔物じゃなくて人間に襲われるなんて思ってもみなかったのよ!
そんなにすぐに色々決めるなんてできないわ」
言って両手で顔を覆うアス姉さん。
そんなキレた姉さんに、リュート兄さんが、本心をもらす。
「キレてんじゃないよ、気持ちを切り替えられないのは俺もだよ。
あんなに簡単に首が飛ぶなんて思ってなかったよ。
今まで試合で相手に怪我をさせた事はあっても、自分の手で人の命を奪うなんて思わなかったよ……」
低く呟くリュート兄さんの言葉に静まる室内。
どうすればいいかわからない、重い空気を破ったのはコタだった。




