ふーちゃん 3
ふーちゃんが落ち着いてから、アス姉さんが家まで送って行った。
そのまま今夜は泊まってくるそうだ。
ついでにタヌキ姿になったコタも連れて行かれた。
「ほら、このもふもふをもふもふしていると癒されるわわよ」
と、癒し要員だ。
残ったボク達は宿から程近い酒場に来ている。
「まあ寂しいだろうね。
故郷から離れて、沢山の人が周りに居ても、友達も顔見知りも居ない、いざと言う時に頼れる人も居ないとなるとね」
ミトさんの言葉に、酒を飲みながらリュート兄さんが頷き、
「俺の場合は、領主様に目をかけてもらっていたし、仲間も居て、おまけにマコの兄さんや姉さんも居たけど、ふと寂しく感じる事もあったんだよな」
情けないと、苦笑を浮かべる。
「フルフラリフル姉さんって基本一人で居たくないってタイプだったしね」
「ああそうだな。
アイツ5人きょうだいの一番下だし、上と歳が離れてる分甘やかされてたしな」
ふーちゃんは一番近い姉でさえ、10歳の歳の差が有って、物心ついた頃には上のきょうだいは独り立ちしていたから、両親も甘かったし、家族が集まると、きょうだいが構い倒していた。
甘やかされていたからと言って我がままとか、性格に難があると言うわけでもなく、年下のボクが言うのは何だけど、どちらかと言うと自主性がない感じかな?
何かやる前に周りが寄ってたかって先回りするって感じだった気がする。
人見知りで、初めて来る商人とか、他の村の人と顔を合わせるときは、リュート兄さんか、ボクの兄さんや姉さんの後ろに隠れていた。
年下のボクやアス姉さんも庇護欲を掻き立てられて、ふーちゃんの事をかまっていたよな。
年上の人をかまっていると、自分が大人になった気がしたんだ。
そんなふーちゃんが、嫁いだ先で体験した事は、それまで一度も経験したことのない、想像外の出来事だったろう。
その後も気を張っていたんだろうなと思える。
けど思いもかけずボク達と再開して、突っ張っていた心が緩んだんだろうな。
「でも何で彼女は村に戻らなかったんだろう?」
ミトさんの言うことは正論だけど、ボクとリュート兄さんは視線を合わせてため息をついた。
「フルフラリフルの家族は凄いんだよ……」
「うん、凄いと言うのが一番合ってるかも」
首を傾げるミトさんに、ボク達は説明する。
ふーちゃんの両親は大工と石切りだ。
大工はそのまま大工、石切りとは山や川の岩を切って加工し、建物の土台や石臼などや、鍛冶場の石材を作ったり…、岩を切ったり積んだり加工したり、つまりとても力が強くないと就けない仕事だ。
因みに石切りをしてるのは、母親だ。
おまけにきょうだいも似たような体力仕事に就いている。
そんな家族の元に戻ったら、そしてふーちゃんの扱いを知ったら………南の村は殲滅すると思う。
村の殲滅はなかったとしても、二人を引き合わせた南の村の村長や、旦那の元職場くらいは潰される。
だから帰るに帰れなかったんだと思うとミトさんに告げると、
「……うん、戻らなくて正解」
と、理解してくれた。
「……ご家族が出てこないよう、怒らせないようにしよう」
と呟いた言葉は聞こえなかった事にしておこう。
*****
「だから村には戻らなかったの」
ふーちゃんが王都に来た理由を聞いて、私は納得したわ。
「確かにふーちゃんの家族なら殺っちゃいそうね」
「家族に人を殺めて欲しくないわよね。
でも一人は寂しいから、人が沢山いるところに…って思ったんだけど、沢山居る方が寂しくなるものなのね」
タヌキなコタを撫でながら呟くように言うふーちゃんを、私は抱きしめたわ。
「これからは私達が一緒に居るから、寂しくなんてないわよ。
体力的にはキツいかもしれないけど…どんな危険が有るかもわからないけど、寂しい思いだけはさせないわよ」
抱きしめたまま言うと、腕の中のふーちゃんがクスクスと笑ったの。
腕を解いて目を合わせると、
「アスって昔と変わってないのね。
なぜかしら、とても嬉しいわ」
「ふーちゃんが笑ってくれたから私も嬉しいわよ。
これからも笑って旅をしよう」
私がまた、ぎゅーっと抱きしめると、ふーちゃんも抱き返してきたわ。
「そうね、これからよろしくね」
抱き合う私達の間から「きゅ〜〜」って音がしたから見てみたら、私達の間でコタが潰れていたの。
二人して笑っちゃった。
あけましておめでとうございます。
3か月経ってもまだ国内からも出ていないですが、気長にお付き合い頂けるとありがたいです。
最後まで頑張って書こうと思いますので、今年も宜しくお願いします。




