ふーちゃん 2
その後は、ふーちゃんが仕事時間になるまで、色々話をして、安い宿を紹介してもらい、ボク達は宿へ移動した。
「しかし……許せないな。
俺達の幼馴染に対する仕打ち。
本人が仕返ししてきたと言っても治らないな」
「本当よ!
ぐっちょんくっちょんにしたって言ってたけど、私も一発いれてやりたいわ!」
宿へ行ってもボク達の気持ちは落ち着かないままだ。
だって治癒魔法が使える様になる程、日常的に暴力振るわれたってだけでも許せない。
「それならさ、村長さんへ手紙を書けば?
村長さんから相手の村のお偉いさんへ苦情入れて貰ったら、相手の村のお偉いさんも追撃してくれるんじゃない?」
ミトさんの言葉に、それだ!と頷く。
「ふーちゃんの家族にじゃなくて、村長なら大丈夫だと思うわ」
「ついでに俺も父さんへ一筆書こうか?
商売であっちこっち行くから、相手の住んでる村に出会した時、物理的は無理でも、何かとダメージ与えるとかできるかもよ」
「ミト!あなたなんて素晴らしい事思いつくの!
見直したわ!」
更なる発言に、アス姉さんがミトさんの両手をとって、ブンブンと振る。
「アスさんの好感度大幅アップ!」
なんて呟きは聞かなかったことにしてあげるよ。
「ねえ、なになに?
ラミシェル様……じゃなくて、ふー様が何かあったの?」
……ふー様…、気を失っていたコタは、話についていけてないけれど、言いふらす事ではないし、気分の良い話でもないから、ここは耳に入れないことにしようと、三人で決めたんだ。
「彼女離婚して今フリーなんだって。
でもやっぱりアスさんの方が俺は好みだね。
そう言えばラミシェル?とか言う人の似せ絵は無いの?」
「え?ラミシェル見たい?
勿論画像は沢山あるよ!
仕方ないなぁ〜、見せてあげるよ、オイラの推しを!」
スマホ板を触りながら見て見て〜、とはしゃぐコタは、すっかり話の流れを忘れている。
さすがミトさん、上手いことやってくれた。
それともこの場合コタが単純なのかな?
*****
次の日、いつもの様にそれぞれ別行動で1日を過ごし、夜宿でのんびりしていると、ふーちゃんがアス姉さんを訪ねてきた。
「アス、遅い時間にごめんね」
「あら、ふーちゃんどうしたの?」
「お願いがあるのだけど……今時間いいかしら?」
ひとまずアス姉さんの部屋へ集まって、ふーちゃんの話を聞く事にした。
部屋が狭いので、アス姉さんとふーちゃんがベッドに腰掛け、男4人は壁に寄りかかるようにして立っている。
「それでどうしたの?
こんな時間に出歩くなんて危なくなかった?」
アス姉さんが話を向けると、ふーちゃんは予想外な事を言い出した。
「私も一緒に旅に連れて行って欲しいの」
「「「「「は?」」」」」
5人の声が重なった。
「ほら、このメンバー女性はアスだけでしょう?
間違いが起こるとは思わないけど、やっぱりもう一人くらい女性が居た方が外聞悪くないかしらと思うのだけれど」
まぁ確かに、ボクは弟でコタは動物だけれど、男ばかりなのは確かだ。
「ふーちゃんの言うように、男ばかりより私は嬉しいけど、そんな勢いで決めて良いの?」
「そうだな、ふーちゃんが居た方がアスも心強いだろうけど、今は一人で落ち着いて生活してるんだろ?
正直帰ってこれるかもわからない旅に付いていくってのは、よく考えた方がいいと思うぞ」
アス姉さんとリュート兄さんに続けてボクも思った事を口に出す。
「そうだよね。
アス姉さんみたいにずっと冒険に出たいとか思ってたとかならまだしも、ふーちゃんは性格的にも冒険はどうかと思うよ」
ボク達が難色を示すと、ふーちゃんはちょっと考えてから、話し出した。
「そうね、私は安定した暮らしが合ってると自分でも思うわ。
……でもね、この5年間色々有ってちょっと変わったと思うの。
強くなったと言うか、開き直ったとでも言うのかしら。
どちらかと言うと人見知りだったけれど、一人で生きていこうと思ったら働かなければならないし、働くなら人見知りなんて言っでられないしね」
確かに村にいた頃、ふーちゃんは人見知りだった。
引っ込み思案で臆病なのと、ちょっと自虐チックな事を言っていたこともあった。
「それにね、ほら、回復魔法が使えるから、一緒に行っても役立たずにはならないと思うの。
それに料理も得意だし、旅の間の皆の健康は私が守るわよ」
ふーちゃんの言葉に、
「確かに回復魔法は助かるかもしれないね」
と、ミトさんが頷く。
肯定の言葉にニッコリ笑ったふーちゃんは、皆の顔を見回してから、キュッと唇を噛み俯くと、小さな声で言葉を続ける。
「…………それにね……一人で生活できているけど…一人は寂しいの……」
その言葉にボク達は黙り込んでしまった。
故郷を離れ、遠い街で見知らぬ人達の中で一人で生きているのが寂しいのは当然だと思う。
「久しぶりに皆と会ってとっても嬉しいの……沢山話をしてとっても楽しいの………。
今まで生活に一生懸命で気づかなかったけど……一人は寂しいの………」
俯いたままのふーちゃんを、立ち上がったアス姉さんが抱きしめる。
「……一緒に行こう………いや、一緒に来て。
やっぱり女の子一人より、二人の方が楽しいだろうし、安心だし。
私のためにも一緒に来て」
アス姉さんの言葉にふーちゃんは、声を殺して泣き出し、うん、うんと何度も何度も頷いた。




