フルフラリフル
こんにちは、フルフラリフルよ。
楽しい話では無いのだけれど、聞いていただけるかしら。
私の曽祖父は鳥の獣人で、祖父や父は普通の人だったのだけれど、私は曽祖父の血が濃かったのかしら、背中に羽が生えているの。
普段は背中の半分くらいまでの大きさなんだけれど、感情が昂ぶったり、意識を集中すると大きくなるのよ。
勿論羽が大きくなると空も飛べるわ。
今から5年と少し前、南の村の家具職人の方とのお見合いの話が来たの。
南の山は、とても丈夫な樹が生えるの。
それを使って家具を作るのだけれど、固すぎて特別な技術がいるのよ。
その職人集団の一人で、私の五つ年上の男性とのお見合いだったの。
最初の一年は穏やかに過ごしたわ。
二年目の雨季に、旦那のいる職人の集団に、南の領主様から、娘さんの嫁入りの為の家具を一式造ると言う依頼が入ったの。
結婚三年目の暖季に無事全ての家具が完成したわ。
その完成祝いの飲み会で、それまで一滴も呑んだことのないお酒を旦那が呑んだの。
……初めてのお酒、自分の加減が分からず呑みすぎた旦那は、酔っ払ってしまい、とんでもないことをしでかしてしまったの。
飲み会が終わった後、酔っ払った旦那は寒いから暖まろうと、工房に火を付けてしまったの。
勿論完成して納品待ちの、領主様からの依頼の家具も全て燃えてしまったわ。
責任を取らされ、仕事は勿論クビ。村も追い出されたわ。
私達は別の村に引っ越したけれど、旦那はそれからお酒に溺れるようになってしまい、仕事もせず、ずっと呑み続け、そのうち私に暴力を振るうようになったわ。
毎日殴られ、蹴られ……。
旦那が働かないから、私が働いていたのだけれど、痣だらけで仕事に行けないじゃない。
私はそれまで使えなかった治癒魔法を使えるようになったわ。
殴られ、蹴られ、治癒で怪我を治して仕事をして……。
それでもいつか、優しかった旦那に戻ってくれると信じていたの。
そして結婚四年目…去年ね。
いきなり旦那が頭を下げてきたから、心を入れ替えてくれたかと思ったの。
ふふふふ、私が甘かったわ。
『すまん、子供ができた』
働いている私を殴って蹴って、その稼ぎで呑み歩くだけじゃなくて浮気までしてたの。
しかも一人二人じゃなくて、生まれた子供は8人!
勿論母親は皆別よ。
私と言う妻がいて更に八また。
意識が遠くなったわ。
それからちょっとだけ恨みを晴らして、この王都に来たの。
ここでの生活は楽しいわ。
私は私の生きたいように生けられるの。
その上懐かしい幼馴染達とまで再会できたし。
ああ、王都に来て良かったわ。