ツクリウリュート
宿に戻ると、ツクリウリュート兄さんが入り口に立っていた。
「アスファリム!マコフォルス!久しぶりだな!」
「ツクリウリュート兄さん!」
ボク達には血の繋がった兄は居るけど、ツクリウリュート兄さんも、血こそ繋がってはいないけれど、ボク達には兄の一人だ。
「アスファリム、逞しくなったな。
弓の鍛錬欠かしていないのは見てわかるぞ」
確かに、姉さんの腕太く…………ゴホン。
「マコフォルス、お前は背が伸びたな。
お前もちゃんと剣を振ってた様だな」
……ん?ボクには逞しくなったの言葉はないの?
「で?そっちの二人は見たことないな。
アスファリムの旦那……ではないだろうな」
年頃からして、結婚相手を紹介に…と言うことはあるだろうけれど、連れているのがコタとミトさんだから、姉さんの好みを知ってる人から見れば、無いな、とわかると思う。
ずいっと前に出たミトさんが、握手を求めて手を差し出した。
「初めまして、アスファリムさんの未来の婿候補、ミトクリアンです。
お兄さんの様な存在なのですよね?
これからも『身内』として、末長く宜しくお願いします」
「あ……ああ、宜しく」
手を握り返しながら、可哀想な子を見る目をするのはやめてあげて。
「えー…それでそちらの子供は?」
「ツクリウリュート兄さん、コタはこう見えてマコより上なのよ」
「え⁈……人族に見えるけど、ハーフなのか?」
獣人やハーフだと、その種族のミミや尻尾があるはずだから、人に化けているコタは、一見するとただの人間だ。
「ちょっと長くらるから、中に入りましょう」
宿の入り口に立ったまま、さらっと紹介されたミトさんの立場って……。
「ああ、そのクールな冷たさも素敵だ」
なんて言っているから大丈夫かな。
宿の部屋の中で、姉さんがコタとの出会いと正体、そして会いに来た目的を話す。
「そうか、とうとう冒険に出ることにしたんだな。
よく村長が許したな」
「一応の許可だから、ツクリウリュート兄さんが一緒に来てくれないと、旅に出られないの。
ねえ、兄さん、お願いします!
一緒に冒険の旅に出てください!」
ベッドに腰掛けていた姉さんが立ち上がり、ガバッと頭を下げる。
ツクリウリュート兄さんは暫く考えてから、ゆっくりと頷き、
「そうだな、お前達だけだと心配だから、俺も一緒に行こう」
随分あっさりと同行を決めてくれた。
「ありがとう!ツクリウリュート兄さん!!」
感極まった様に、姉さんはツクリウリュート兄さんに抱きつく。
「アスファリムがずっと冒険に出る夢を見て、それに向けて努力してたの知ってるからな。
但し領主様に許可を貰わないと出発はできないぞ。
俺の仕事は領主様の兵士だからな」
抱きついた姉さんの背中を、子供の頃の様にポンポンと叩く兄さん。
「それは分かっているわ。
私の夢に付き合ってもらうのだから、領主様には私から直接話しを通したいと思うのだけど、お会いする事ってできるのかしら」
兄さんに抱きついたまま、姉さんが尋ねると、兄さんが領主様の都合を聞いてくれると言ってくれた。
ミルフェルラク兄さんと言い、ツクリウリュート兄さんと言い、普通パン屋や兵士が簡単に会えるものなのか?
領主様はよっぽど心の広い方なのだろう。
「ありがとう!」
と再び抱きつく姉さんを、笑いながら受け止めるツクリウリュート兄さん。
その二人を凄い目で見ているミトさん……カオスだ。
あれ?そう言えばさっきからコタは一言も話してないな。
どうしたんだろう?と見てみると、あのスマホ?とか言う板を触っている。
「コタ、どうしたの?」
ボクが聞くと、
「マコちゃん、もう話しても大丈夫かな、もう真面目な話終わったかな」
真剣な目を向けてくるので、思わず一歩下がって頷く。
「見て見て!このお兄さんグレスペのリュート様に激似なの!!!!!」
一転して興奮状態のコタが、板を目の前に差し出す。
あの詳細な絵が表示されているけど、確かにその表示された絵はツクリウリュート兄さんに似ている…かな?
「髪の色はリュート様は銀髪で、このお兄さんは黒だけど、この琥珀色の瞳の色も髪型も、何より名前も似ているなんて!!
しかも持ってる武器大剣だよね?
細身なのに軽々と大剣を操るリュート様と同じだよね?
それに包容力もありそうな所もまんまリュート様!!
こんなリアルリュート様を拝めるなんて、異世界に来て大正解だよ!!
ねえねえ、お兄さんリュート様と呼んでいい?
いや、是非リュート様と呼ばせてください!
そしてオイラの事はマルクスと呼んで下さい!!!!!」
暴走コタにたじろいて姉さんを見るツクリウリュート兄さんに、
「よくある事だから」
と返す姉さん。
キャーキャー言ってるコタが落ち着くまで暫くかかった。




