2番目の兄さん
「ちょっと見ない間に太ったわね、兄さん」
姉さん……ズバリと言うのはどうなんだ?
言うのは控えたけれど、ふた回り……いや、それ以上体積が増えているのじゃないか?
もはや別人レベルに大きくなっている。
「ははは、新作の試食で太るのは仕方ないさ。
しかし久しぶりだなあ、元気にしてたか?
この町に来るなんて、何か用でもあったのか?」
問われて、冒険に出た事を姉さんが告げる。
「そうか、本当に行くんだな。
まあ、アスファリムは小さい頃からずっと言ってたもんな。
父さん達も諦めてたろう」
「ええ、そうね。
すんなり送り出してくれたわ」
「そりゃあ何より。
そんで後ろの二人が一緒に行く仲間かい?」
「そうよ。
商人のリスナミムさんの息子で、ミトクリアンと、異世界から来た化け狸のコタよ。
コタ、ミト、この人は私達の2番目の兄で、ミルフェルラクよ」
「………………」
姉さんのざっくりしたコタ達の説明に、兄さんの表情が一瞬固まる。
「ええと、リスナミムさんの息子さんか。
村でも世話になったけど、この店にもたまに来てくれるぞ」
「父がお世話になってます、お義兄さん」
「ん?今なんだかニュアンスが……?
それよりアスファリム、さっきなんて言ったかな?
兄さん耳の調子が良くないみたいだ」
「だからね……」
姉さんがコタの説明をしている間、ボクは棚に並んでいるパンを見ていた。
美味しそうだな、見たことない新作もあるみたいだ。
これも後でミトさんのマジックバックに入れさせてもらおう。
「………………って事なの」
「そうか、まぁそんな事もある…と言うことにしとくか」
納得したようなしないような兄さんは、話を変えてきた。
「それで、ここではゆっくりしていくのかい?」
「いえ、この町にはツクリウリュート兄さんを誘いに来たの」
「ツクリウリュートを?
まあアイツがいれば旅も安心だろうけど、アイツは領主様に雇われてるんだから、アイツが行くと言っても、領主様の許可が出ないと旅には行けないだろ」
そりゃあそうだろうね。
町の兵士さんは、領主様が直々に雇用した人達だと聞いたことあるから、許可も無しに勝手に仕事を辞めて旅に出るなんてできないよね。
「やっぱりそうなるわよね。
そこで兄さんに聞きたいのよ。
領主様ってどんな方なの?
話を聞かないタイプだったら困るのだけど」
姉さんが聞くと、兄さんは笑顔で答えてくれた。
「領主様はそんな方じゃないぞ。
領民の話をよく聞いてくれる方だ。
曲がった事には厳しいけど、きちんと筋を通せば話のわからない人ではないぞ」
「そう、それなら良かったけど、どうやってお会いしたら良いのかしら」
いきなり行って『兵士さん一人連れて行きます』なんて無理だろ。
面会の伺いを立ててからだろうけど、その面会の申し込みはどうすれば良いのだろう。
姉さん行き当たりばったりだから、いきなり領主様の館に押しかけたりしないかな…。
「それならツクリウリュートに言ってもらうか、明後日なら俺が領主様のパン当番だから、俺から面会の申し込みしといてやるぞ」
「さすが兄さん、頼りになるわ!
それじゃあ今からツクリウリュート兄さんに会うから、それでダメなら兄さんにお願いしてもいいかしら」
姉さんのお願いに、任せとけと頷いた兄さんに、そろそろ待ち合わせの時間だからと、一旦別れを告げて店を出た。
そしてボクらはツクリウリュート兄さんに会うため、宿へと戻った。




