領主様の治める町
村を出て2日目の夜に領主の町に到着した。
本来なら夕方前に着くはずだったけど、コタの体力が持たず、3人で交代にタヌキ姿のコタを抱っこして来たので、予定より遅い到着となった。
一先ず宿屋に落ち着いて、宿に隣接している酒場で夕食をとる事とする。
「ねえコタ、今更だけどさ、鳥になって飛んで来たら良かったんじゃないの?」
麦酒を飲みながら姉さんが言うけど、
「鳥になったからって、オイラの筋力が増えるわけじゃないんだから、しばらく飛んだら……落ちるよ」
「コタ君、大丈夫なのかい?
これからあの山脈を越えると言うのに、その体力の無さ。
まあ、いざとなったら俺が担いで行ってあげるからね」
ミトさんは姉さんの方をチラ見しながら『頼りになる俺アピール』をしているみたいだけれど、スルーされてる。
「うん、何とか考えるよ。
このまま置いていかれるのは嫌だからね」
テーブルに突っ伏したコタが片手を上げる。
「ところで姉さん、ツクリウリュート兄さんとは会えるの?」
ここに来た目的の人物に、いきなり来て会えるのかな?
「明日兵士の詰所の場所聞いて、呼び出して貰えばいいじゃない」
相変わらずの行き当たりばったり…。
「そのツクツクリュートって人が新しいメンバーなのかい?」
「ツクリウリュート、ね。
そう、私達の幼馴染で、マコに剣を教えた人よ」
「………兄さんって言うけれど、いくつくらいの人なのかな」
「確かこの前の年明けで24だったかしら」
「24……アスさんの4つ上、しかも幼馴染…………いや、俺の方が若いし、将来性豊かだし…チャンスはあるはず」
ミトさんがボソボソ独り言を言ってるけど、チャンスは無いと思うなぁ…姉さんの好みから外れてるから。
しかしツクリウリュート兄さん、久しぶりに会えるな。
3年前の剣術大会で領主様にスカウトされて村を出て、戻ったのは一年以上前に一度だけだから、随分久しぶりだな。
この一年で随分身長の伸びたボクを見てビックリするかな。
一人幼馴染を思い出すボク(ちょっと顔がニヤケてるかも)、酒を呑み続ける姉さん、その姉さんに話しかけるミトさん、ご飯も食べずに突っ伏しているコタ。
うん、ちょっとカオスなテーブルかもね。
*****
翌朝、宿で兵士の詰所の場所を聞いて訪れたけど、ツクリウリュート兄さんは警ら中で不在だった。
昼には交代だそうなので、名を告げて、会いたいと伝言を頼み町へ出る。
この町には2番目の兄さんと、上の姉さんか住んでいるので、会いに行くことにした。
兄さんがここでパン屋をやっていて、そこで姉さんも働いていたんだけど、姉さんはお客さんに見初められて結婚し、今は主婦だ。
その姉さんの代わりに働いていた女性は、今は兄さんのお嫁さんになっている。
そして姉さんを見初めたのは領主の館の庭師の息子、幼馴染は領主直属の兵士って……広い町なのに、狭い交友関係だね。
ボクと姉さんは、兄さんの店に立ち寄って、昼には宿へ戻り、ツクリウリュート兄さんに会って、昼から姉さんの家に行くと言う予定を立てた。
コタやミトさんに別行動を提案したけれど、一人で回りたく無いとコタは言い、ごきょうだいにご挨拶をとミトさんは言う。
結局4人でパン屋へ向かう。
この町にパン屋は三軒で、一軒が領主の館、残り二軒が兵士の詰所に交代で納品しているそうだ。
ボク達が店に着いた時には、義姉が詰所に配達へと出かけていて、店には兄さん一人だった。
久しぶりに会う兄さんは………。




