出発
一月の【年明け】が過ぎ、【暖季】に入った。
【暖季】は4ヶ月程、その後の4ヶ月程は【乾季】で、3ヶ月程の【雨季】の後が次の【年明け】だ。
できるなら雨季の前に山脈を越えたい。
なので姉さんの『冒険に行くよ』発言の後、パーティメンバーの4人は、それぞれ旅立ちの準備を整えた。
ボクと姉さんは、武器や装備、衣服や靴、備品に食器にその他諸々。
ミトさん(コタ命名)は調味料や食材を集め、コタは料理の下ごしらえ。
調味料を調合したり、ウドンやオダンゴやオツケモノなどを大量に作り、時間経過の無いミトさんのマジックバックにせっせと詰め込んでいる。
「時短だよ、時短。
下準備しておけば、後は煮たり炊いたり焼いたりすれば、すぐ食べられるからね」
手伝っていた母は、それを聞いて感心していた。
しかし空間魔法って本当に助かる。
食べ物の事は勿論だけど、武器や装備品だけでも嵩張るから、それらを持たずに済むって、ありがたいよ。
姉さんの矢なんて、いくつあっても足りないからね。
矢は消耗品だ。
回収もするけど、折れる事も多いし、回収できない事も多々ある。
矢は木の枝を削って現地調達できるけれど、矢じりの鉄は調達できない。
石を削った矢じりなら、調達できるけれど、木を削って作る矢程簡単には作れないから、矢じりだけは村にいる間に可能な限りの数を準備した。
正直重い。なんてったって鉄と石なのだから。
本来ならこれをボクが運ぶ羽目になってたんだよね。
本当に空間魔法ありがとうだよ。
伝書鳥はコタがスカウトしてきた鷹の「タッくん」だ。
毎日肉を提供する事で、ボクらに同行してくれ、手紙を村長まで届けてくれるそうだ。
鷹を手懐けるなんて流石だね。
*****
そうこうしているうちに、旅立ちの日がやってきた。
「約束だからな、メンバーの説得ができなかったら、旅立つのは諦めるのだぞ」
村長の家に出発の挨拶に来ている。
「ええ、約束は守るわ」
「連絡はマメにするのじゃぞ」
「タッくんに頑張って貰うわ。
村長も何かあればタッくんに手紙を持たせてね」
「くれぐれも無茶はするんじゃないぞ。
マコフォルス達も気をつけるんじゃぞ。
アスファリムの事くれぐれもよろしくな」
「あら村長、それを言うなら一番年長者な私にじゃないの」
「……………………頼むぞ」
『その調子の良さと、落ち着きのなさをどうにかしないとな』
と言う村長の無言の言葉が聞こえた気がした。
父さんと母さんとはあっさり済んだ挨拶が、なかなか終わらない。
「日が暮れるまでに二つ先の村まで行きたいから、もう行くわ。
村長今までありがとう。
必ず無事で帰ってくるから、お土産楽しみにしててね」
じゃあ行ってきま〜す、と見切りをつけて椅子から立ち上がり、部屋を出て行く姉さん。
「……じゃあ村長、行ってきます。
無茶しないよう見張ってますから、安心してください」
「頼むぞマコフォルス。
ミトクリアンも気をつけてな」
「父がこの村に来たら、俺の無事も伝えてくださいね」
「ああ、ああ、勿論だとも。
手紙を書いてくれると渡しておくよ」
「じゃあ村長、行ってくるよ。
村長もいい年なんだから、体に気をつけてね。
オイラ達が帰ってくるまでちゃんと待っててね」
「コタ……お前だけでも残らんか?」
村長の手がワキワキしている。
最後にもう一もふ、と言い出しそうな空気を感じたコタは、
「じゃあアス姉さんが待ってるから行くね」
と、慌てて部屋を出て行く。
それに続いてボクとミトさんも部屋を出た。
「もー、本当に村長ってば心配性なんだから。
まだ旅は始まってもないのに。
…………そう、やっと旅が始まるのね……。
さあ、皆んな、行きましょう!」
笑顔で歩き出した姉さんに、ボクらは頷き後に続いた。
馬は村の共有財産なので、旅の移動は全て徒歩だ。
まずは二つ先の村に向けて、ボク達は歩き出したのだ。




