4人目のメンバー
姉さんの呼びかけで入って来たのは、村に来る商人の中で一番村長と仲の良い、今も年越しを村長の家で過ごしている商人の息子さんだ。
そう、村長が姉さんの婿にと白羽の矢を立てた、ボクより一つ上のハーフ獣人だ。
「えーと、もう入っていいのかな?
やあ、マコフォルス君、改めましてこんにちは。
アスファリムさんの旅に同行させてもらう、ミトクリアンだよ。
義兄さんと呼んでくれてもいいからね」
「ちょっと、それは断ったでしょ。
マコ、コイツのたわごとは気にしなくていいからね」
「村長に勧められて確か姉さん断ってたよね?
それなのに一緒に行くの?」
ちょっとぼかしながら、小声で聞いてみた。
「確かにコイツと所帯もてって言われたわよ。
でもちっとも好みじゃないし、それより何より冒険に行きたいじゃない?
コイツの固有魔法が役に立つから、見合い云々は置いといて、パーティにスカウトしたの」
「置いといていいの?
彼姉さんのこと気に入ってたよね?
そんな人と一緒に冒険行くのって、大丈夫なの?」
身の危険……は無いかな、彼…ミトクリアンの身長はコタより少し大きいくらいの細身で、全体的に姉さんの方が一回り大きい。
力尽くで来られても、返り討ちできそうだ。
性格も軽…明るくて、裏で何か企み事をする様な、危ない奴にも見えない。
「だって空間魔法使えるって言うのよ、さすが商人だわ。
空間魔法が有れば、冒険に行くのに身軽に旅ができるじゃない」
うわー…お見合い断った相手なのに、便利に使える能力があるから、利用しようとしてるの?
悪どいと言うか、姉さんの方が企み事をする方だった。
そんな好意の気持ちを利用するなんて、酷くないのかなぁ。
口に出さなかったボクの考えを読んだのか、
「大丈夫、本人が良いって言うんだから。
ね、一緒に来てくれるんでしょ?」
姉さんの問いかけに、ニッコリと笑うミトクリアン。
「そうだね、確かに結婚を前提のお付き合いは断られたけれど、それは俺のことをよく知らないからだろ?
だから一緒に旅をするって言うのは、俺のことを知ってもらうチャンスだし。
それにアスファリムさんに変な虫が付かないよう、彼女を守らないといけないしね」
かなり姉さんのこと気に入ってるようで、旅の間にワンチャン狙いの様だけど、姉さんの好みからかけ離れているんだよね。
でも強引に何かするって感じでもないし、本人がいいならいいのか?
「……それにいつも親父と村を回ってるけど、狭い範囲なんだよね。
だから、今まで行ったことのない場所に行くってのが、ワクワクするし、あの山脈超えるんだろ?
この国の誰も行ったことの無いその国に、どんな珍しいものがあるのか、この目で見てみたいしね」
姉さんの事抜きにしても、彼自身旅自体に興味があるみたいだ。
利用するだけじゃないから、少しは罪悪感薄れるかな。
「でもミトクリアンさんのお父さんは大丈夫なの?」
商人としての仕事を教わっている最中だろうに、当てのない旅に出るなんて、許してもらうのは難しいんじゃないの?
「あはは、うちの家族は皆商人だよ?
見知らぬ土地の珍しい物を仕入る事に、親父が反対なんてするわけないじゃないか」
いや、危険とか……ああ、うちの親と同じタイプなのか。
心配より何より、子供の自主性に任せるってパターン。
……なんだろう、実の身内より村長が一番心配してるこの現状。
もしかしてボクや村長みたいな心配する方が少数派?
「と言うわけだから、もう一つの条件もクリアなの」
ぐるぐると考えているボクの耳に、姉さんの明るい声が聞こえてきた。
「いや、姉さん、5人以上って言われてるんだよね。
今ボク達4人だよ、5人いないよ」
「失礼ね、数くらい数えれるわよ。
後はここに居ないから、スカウトに行くわよ」
「そりゃあ村には旅に出そうな同年代の若者は居ないけど、ここに居ないって、もしかして仕事で村を離れている兄さん達を誘うの?」
ボク達は村を出て仕事をしている兄が3人、結婚して嫁いだ姉が2人の7人きょうだいだ。
独り立ちすると、実家に戻ることも少なく、家族が全員集合することはあまりない。
出て行った先の付き合いを優先して、その場に馴染むのが一般的な考え方だからだ。
「旅立つ前に兄さん達にも会いたいけど、誘わないわよ。
きょうだい総出で冒険者なんてなったら、さすがに父さん達も黙ってないでしょ」
「それなら誰?」
「まあ、会ってからのお楽しみ。
さあ、旅立ちの準備しなきゃね……ってコタ寝ちゃってるわ」
話が自分から逸れて退屈だったのか、椅子の上でタヌキ姿に戻ったコタが、丸まって寝ている。
その姿にホッコリさせられるボク達3人だった。




