条件一つクリア
「実はマコより先に報告した人が居るのよね。
さあ、入って来て!」
振り向いてかけた声に、部屋に入って来たのは、想像通りのコタだった。
コタだろうとは思ったけれど、コタが何?
ボクの顔に浮かんだはてなマークに、姉さんとコタは顔を見合わせて、二人でニャリと笑う。
「ふふふふ、コタの得意技はなんだったか覚えているかしら」
「山菜探しと料理」
問われたままに答えると、
「そうよね、コタの作る異世界料理は美味しいわよね」
と、姉さんは頷くけれど、コタ本人は
「違うでしょ、マコちゃん!アス姉さん!
オイラと言えば化け狸、化けることでしょ!」
少々ご立腹の様子だ。
「あら、ごめんなさい、ついね。
コタは化けるのが得意じゃない、聞けば動物に化けると、その動物と話ができるそうなのよ。
だから、鳥に化けてもらって、伝書鳥になる鳥をスカウトしてもらうの!
どう?いい考えでしょ」
「へー、動物に化けるのは知ってたけど、会話もできるんだ、凄いね」
感心してコタを見ると、腰に手を当てて胸をそらしている。
「まあ任せてよ。
ちょっと山に行ってチョチョイとスカウトしてくるよ」
それなら条件の一つはクリアなんだ。
でももう一つは?
「パーティの方はどうするの?
姉さんとボクと、この流れだとコタも一緒に行くの?
コタはこの村に随分馴染んでるのに、どんな道行になるかもわからないのに、一緒に行っていいの?」
コタは珍しい料理と、愛想の良さと、素直な性格、それにもふもふで村人の人気者だ。
とてもちやほやされてるのに、目的地がどんなところかわからない、戻って来れるかもわからない旅について行くの?
口には出さなかったけれど、ボクの心配がわかったのか、コタは言う。
「マコちゃん、オイラは異世界から来た元々余所者なんだよ。
村の皆は良くしてくれるけどさ、ここはオイラの居場所って訳じゃないよ。
居場所は、見知らぬ世界にいきなり来てしまったオイラを拾ってくれた、マコちゃんとアス姉さんの側だよ。
それに折角の異世界、冒険しないでどうするの。
絶対オイラも連れて行ってよね」
「コタ……」
ボクと姉さんはちょっとジンと来てしまった。
ちょっとだけね。
「それにさ、このままこの村にいたら、もふもふされ過ぎて毛が抜けちゃいそうだからね」
コタの軽口にしんみりした空気が消える。
「あら、もしかしてそれが本命なんじゃないの?」
「確かにちょっと背中の辺りの毛が……」
姉さんの言葉にボクが続けると、コタが真剣に焦り出す。
「え?嘘⁈ 背中の毛なんて自分じゃしっかりチェックできないんだけど、薄くなってる⁈」
「あー…あの首の後ろ辺りね〜」
「自分じゃ見れない場所だよね」
「いっやーーーー!
もうもふもふ禁止!!
いつかはそうなるんじゃないかって思ってたんだよ!
頼まれたってタヌキになんないからね!」
涙目で焦るコタの姿に、我慢できずボクらは吹き出した。
「ウソウソ!ごめん嘘だって。
薄くなってないから、私達の冗談でもふもふ禁止とかになったら、皆んなに恨まれちゃうわよ」
「特に村長に恨まれて、旅立ち禁止令とか出されるかもね」
「いや、それこそ冗談じゃないから、不吉な事言わないでよマコ」
姉さんとのやり取りに、
「え?本当にハゲてない?
薄くなってない?
冗談だったの?
…………よかった〜〜」
怒るより何より、深い安堵のため息をつくコタ。
ちょっと冗談が過ぎたかな?
このネタは今後やめてあげるのがコタのためかな。
「でも、姉さんとボクとコタだと二つ目の条件はクリアできてないんじゃないの?」
空気を変えるためにも、話を本筋に戻すと、姉さんはまたもやニャリと笑い、入り口に向かって声をかけた。
「待たせたわね、入って来て」




