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【連載版】ミドサー転生幼女は働きたくない~面倒事はお断りです~  作者: Na20
第一章 三歳の幼女

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第23話 規格外

 

「用意ができました」



 私がおやつに舌鼓を打っている間に、できるグレイによって薬の材料が準備された。

 机の上に置かれているのは、何ら変哲のない水と淡く光るマナリィの花。



「これをどうするのですか?」



 グレイが迷いなく私に指示を仰いでくる。

 彼は貴族であり筆頭魔導士だ。

 それでも相手が三歳児だからと話を切り捨てることはない。

 本当にできた人物である。



「これにまりょくをながします」



 私はマナリィの花を指差す。



「それは⋯⋯!」



 どうやらグレイは、私の言わんとしていることを理解したようだ。



「はい。にじいろにします」



 マナリィの花に許容量限界まで魔力を流すと、虹色に発光することは以前のやらかしで知られている。


 私の考えた『最良』。それは虹色に輝いている状態を指すのではないか。

 幻の花と呼ばれるくらいだ。十分に可能性はある。



「おねがいします」



 私はグレイに魔力を流すよう頼む。

 しかし眉をハの字にしたグレイから返ってきた答えは、私が予想していないものだった。



「すみません。私にはできません」


(え?)



 できないとはどういうことか。

 意味が分からず呆けていると、グレイが申し訳なさそうに言った。



「エステル嬢が幻の花を発見したあと、私もマナリィの花に魔力を流してみたのです」



 さすが魔法オタクである。

 けれどすでにやったことがあるにもかかわらず、できないと断言するなんて。

 グレイは言葉を続けた。



「けれど、私の力では虹色に光らせることができませんでした」


「⋯⋯どういうことですか?」



 グレイの言っていることがよく分からない。

 魔力が満タンになれば自ずと光るはずなのに⋯⋯



「足りないのです」


「足りない?」


「はい。マナリィの花を虹色に光らせるには、私の魔力が足りなかったのです」


(なんと)



 たしかに私も光らせるのにだいぶ魔力を流したが、ちょっと疲れた程度だったと記憶している。

 やはり私の魔力量は規定外なのか? でも、



(それなら何回かに分けるとか、何人かでやるとか……)



 他に方法はあるのでは?

 そう思っているのが伝わったのか、グレイは言葉を続けた。



「一度に魔力を注ぐのは無理でしたので、他の方法も試してみました。魔力を流すのを数回に分けたり、複数人で一度に流してみたり……けれどどの方法も上手くいきませんでした」



 魔力を流すのを途中で止めると花から魔力が抜けてしまい、複数の魔力は花に反発されて受け入れてもらえなかったそうだ。



「いろんな方法を試した結果、マナリィの花を虹色に光らせるためには、一人の魔力を一度に流す必要があるという結論に至ったのです」



 まさかマナリィの花を虹色に光らせるのが、そんなに難しいことだったとは思いもしなかった。



(幻の花って呼ばれるわけだ)



 筆頭魔導士であるグレイをもってしてもできないのだ。

 これまでマナリィの花を虹色に光らせた人物は、どれほど存在したのだろうか。

 きっと国の歴史を調べればある程度は分かると思う。

 偉人、英雄、賢者……。

 歴史上とんでもない肩書きを持った人物は、おそらく膨大な魔力の持ち主だったに違いない。



(……うん。考えるのはやめよう)



 これ以上は、私の精神衛生上よろしくない。

 膨大な魔力持ちが歴史に残るなど、考えてもいいことなんてない。

 とりあえず今は、目の前の問題をどうにかしなければ。



「ですからマナリィの花を虹色にするには、その……」



 グレイが私を見る。



(言いたいことは分かるよ?)



 というか分からない方がおかしいだろう。

 今突き当たっている問題。それはマナリィの花を虹色に光らせるため、膨大な魔力を持った人物が必要だということ。

 筆頭魔導士であるグレイよりも魔力を持っている人物。

 はたしてそんな都合のいい人物は存在するのか。



(それがまあ、存在するんだもんねぇ……)



 魔力測定器を壊し、過去に一度花を虹色に輝かせた人物。そんな存在が目の前に⋯⋯。



(はい、私です)



 認めたくはなかったが、やはり私は規格外の存在らしい。

 まぁ前世の記憶がある時点で、他の人とは違うなとは思っていたけど。



(はぁ⋯⋯)



 すべてグレイにお任せするつもりだったが、こればかりは仕方がない。

 薬がなければ王女はよくならないのだ。

 それでは『王女を元気にしたい』という私の目標は達成できない。



「⋯⋯わかりました」



 私はため息を飲み込み頷いた。



「ありがとうございます!それではこちらを」



 先ほどのハの字眉と対象的に、目をキラキラ輝かせるグレイ。



(こら、グレイ)



 現金にもほどがある。

 普段はできる大人なのに、魔法のことになるとまるで子どものよう。魔法オタク、怖い。


 そんなことを思いながら、手渡されたマナリィの花を見て願う。

 どうか王女が元気になりますように。そして、



(どうかこれ以上面倒事に巻き込まれませんように!)



 そう強く願い、魔力を流した。



「おぉ⋯⋯」



 そうして数十秒後。

 私の手に、虹色の光が燦然と輝いていた。

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