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【連載版】ミドサー転生幼女は働きたくない~面倒事はお断りです~  作者: Na20
第一章 三歳の幼女

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22/25

第22話 薬の存在

 

(これは……)



 追加された一ヵ月の面会謝絶期間が終わり、私はグレイとともに再び王女の元へと訪れた。

 これまでと同様、グレイが診察をしている間に私が王女の魔力を確認する。

 久しぶりに再会した王女の姿に期待はしていたが、やはり魔力の結晶はほとんどなくなっていた。



「最近は、支えがなくても歩けるようになったのよ」



 王女が嬉しそうに笑う姿に私も嬉しくなる。


 しかしここにきて一つの問題が浮上した。



「魔力が乱れている、ですか?」


「はい」



 グレイの研究室へと戻ってきた私は、先ほど視たことを伝えた。

 魔力の結晶の大部分がなくなったことで、流れ自体はスムーズになってきている。

 だが長年の影響なのだろう。

 普通であれば魔力は、一定の量が一定の速さで流れている。

 けれど王女の身体では、至る所で乱れが確認できたのだ。

 乱れとは言ってもどれも軽微なもの。

 たとえるのなら、きれいに均したはずの地面に、ぽつぽつと小石が飛び出している状態とでもいうのか。

 たかが小石程度。けれど油断していると転んでけがをする。



「なにかほうほうはありませんか?」



 私はグレイに尋ねた。

 魔力の乱れがどの程度、王女の身体に影響を与えるかは分からない。

 けれどようやくあと少しで結晶がなくなりそうなのだ。ここは確実に行きたい。



「⋯⋯薬はあります」


(あるんだ!)



 あるならこの問題はすぐに解決するはず。

 よかった。そう思ったのに、グレイは浮かない表情をしている。



「グレイさま?」



 どうしたのかと声をかけると、グレイは言いにくそうに口を開いた。



「魔力の乱れを整える薬は存在します。ですが、その薬には少し問題がありまして⋯⋯」


「もんだい?」



 私はコテンと首を傾げた。

 薬が存在する。それなのに問題があるとは、一体どういう意味なのか。



「はい。実はレシピ通りに作っても、なぜか効果が殆どない粗悪品にしかならなくて⋯⋯」



 レシピは手順書だ。だからそのとおりに作ればちゃんと薬はできるはず。

 それなのに粗悪品しかできないのはおかしい。

 けれどグレイが、わざわざ嘘をつく理由はない。



「そんなにむずかいしのですか?」


「いいえ。作り方はとても簡単で、水に材料を加え煮詰めるだけです」


(本当に簡単だな)



 なんなら子どもでもできそうなくらいだ。

 しかし粗悪品しかできない。

 ということは作り方ではなく、材料に問題があるのかもしれない。



「ざいりょうはなにを?」


「水とマナリィの花です」


(マナリィの花!)



 城の温室に咲いていた、魔力に反応してほんのり淡く光る花。

 そして以前、私がうっかり光らせてしまった花だ。

 まさかあの花が薬の材料になるなんて。やはりこの世界はファンタジーだ。



「どちらもかんたんにてにはいりますね」


「ええ、そうなのです。清らかな水と最良のマナリィの花があればできるはずなのですが⋯⋯」


(ん?)



 今のグレイの発言で気になる言葉がひとつあった。



「さいりょう?」



 清らかな水はまぁ分かる。けれど最良のマナリィの花とは何なのか。



「はい。レシピにそう書かれていますので、その日一番状態のよいマナリィの花を材料に使っています」


「⋯⋯」



 たしかにグレイの言うそれは最良だ。

 私も最良の花を選べと言われたら、一番美しく咲く花を選ぶと思う。


 でもどうしてだか『最良』という言葉が引っ掛かる。

 はたしてこの言葉はどちらを指すのだろう。

 私たちにとっての最良なのか。それとも花にとっての最良なのか。



(⋯⋯あ)



 点と点が繋がったような感覚。

 そうだ。私は『最良のマナリィの花』がどういったものか知っている。

 なぜなら以前、その『最良』に見て触れたことがあるから。



「ですから薬は当てにならないので、別の方法を考えるしか⋯⋯」



 グレイは薬での治療は困難だと判断しているようだ。

 しかしそれはまだ早いと思う。



「いいえ」


「⋯⋯エステル嬢?」



 戸惑うグレイに私は告げた。



「いまからつくりましょう」


「え?ですが薬は⋯⋯」


「グレイさま。ものはためし、です」



 グレイの目を見てニコリと笑う。

 諦めるのは、もう一度挑戦してからでも遅くない。

 それにもしも私の予想が当たっていれば、薬ができるかもしれない。



「やれることはやってみましょう」


(実際に作るのはグレイだけど)



 なんか偉そうに言ってはみたが、薬作りは魔導士の領域。

 私はただその様子を見守るだけ。



「⋯⋯我が同志殿には何か深い考えがあるのですね」


(いやないよ?それと同志認定はやめて!?)



 心の中で叫ぶ。

 そうだった。最近はできる大人な面ばかり見ていたから忘れてたけど、グレイは魔法オタクだ。

 気を抜けば最後。

 面倒事を押し付けられるか、実験台にされるか。



(気をつけないと⋯⋯)


「分かりました。では早速作って⋯⋯あ」


「ど、どうしました?」



 私は内心ドキドキしながら問いかける。すると、



「いえ。まずはおやつが先ですね」


(⋯⋯できる)



 グレイは私のおやつ時間を完全に把握しているらしい。



「⋯⋯おねがいします」



 気をつけなれけばならない相手。でもおやつは食べたい。



(食べてから気をつけよう。そうしよう)



 そう心に決め、今日のおやつは何だろうとウキウキする私であった。




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