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【連載版】ミドサー転生幼女は働きたくない~面倒事はお断りです~  作者: Na20
第一章 三歳の幼女

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第15話 王子襲来

 

 国王との話し合いから二週間。

 現在は一ヵ月の面会謝絶期間のため、城に行く必要はない。

 最近は何かと忙しかった。

 だから思いっきりのんびりゴロゴロしてやるんだと決意し、充実した日々を送っていた。



(この生活がずっと続いてほしい)



 しかしそんな願いもむなしく、嵐は突然やってくる。


 その日の午前のおやつタイムは、天気がいいので外で過ごしていた。

 おやつはエクレア。チョコレートとカスタードクリームのハーモニーが最高の一品だ。



「おいしい〜」


「お嬢様、お口にチョコレートが付いていますよ」



 そう言ってミアが私の口を拭いてくれる。



「ありがとう」



 ああ、なんて幸せな時間なんだろう。

 おやつはおいしいし、専属侍女は有能。

 太陽の光は優しく、風はそよそよと心地いい。それに茂みからはガサガサと音が⋯⋯



(⋯⋯音?)



 ――ガサガサッ



「えっ」



 ハッとして、音のする方に意識を向ける。

 まさか公爵邸に賊でも入ったのだろうか。

 この場に緊張が走る。そして、



 ――ガサッ!



「っ!」


「エステル!」


「⋯⋯へ?」



 茂みから飛び出してきたのは、白金の髪に青い瞳の子ども。



「クリス、さま?」


「そうだよ!」


「どうしてここに⋯⋯?」



 なぜ目の前に、この国の王子がいるのだろうか。

 理解が追いつかず戸惑っていると、王子がニコリと笑って言った。



「遊びに来た!」


「え」


(遊びに来たって⋯⋯)



 王子が来るなんて聞いていない。

 もし来るとすれば、父が伝え忘れることなんてないはず。

 ということは、王子は先触れなしで突撃してきたことになる。



(いやいや⋯⋯アポ、取ろう?)



 しかし王子はそんなのお構いなし。



「遊ぼう!」



 そういうやいなや、私の手を取って走り出す。



「ちょっと、まって⋯⋯」



 息を切らしながら、なんとか声を出す。

 しかし残念ながら私の声が届くことはなく、王子が帰るその時まで、徹底的に遊びに付き合わされたのである。



 ◇◇◇



 翌日。



(くたくただよぉ)



 八歳の少年の体力に三歳児がついていけるわけもなく。

 結果、ベッドの住人と化した私。

 そんな私の元に父がやってきた。



「エステル。体調はどうだい?」


「⋯⋯あんまりよくありません」



 身体中筋肉痛だし、なんだか熱っぽい。

 子どもの身体は思っていた以上に繊細だったらしい。



(ゼリーが食べたい)



 あまり食欲はないが、冷たいゼリーならつるりと食べられそうだ。

 あとで料理長に作ってもらおう。



「はぁ」



 父がため息をつく。めずらしい。

 どうしたのかと思い父に問いかけた。



「どうしたんですか?」


「⋯⋯実はつい先ほど王家から手紙が届いたんだが、どうやら昨日の王子殿下の暴走は、陛下の言葉が発端だったらしい」


「へいかの?」


「ああ」



 父の元に届けられた手紙には、私への謝罪と、今回の件の経緯が書かれていたそうだ。


 現在、王女への面会は誰一人としてできないことになっている。

 たとえそれは血の繋がった兄妹でも例外はない。

 しかし王子もまだ八歳の子ども。妹に会えず寂しかったのだろう。

 だから父である国王に相談した。


『メロディに会えなくてさみしい』


 その相談に対し、国王はこう答えた。


『それなら友達と遊びなさい』


 将来の側近候補として、王子と交流を持っている令息が何人かいる。

 国王はその中の誰かと遊びなさいと言ったつもりだった。

 しかし王子が選んだのは、まさかの私。

 国王もさすがに予想していなかった事態だった。



(いや、私もだよ)



 なんせ、王子と顔を合わせたのは最初の謁見の一度だけ。

 たしかに友達になろうとは言われた。けれど歳も離れているし、性別も違う。

 私と遊んでも特に楽しくないはず。それなのに、なぜ選ばれたのか分からない。

 マナリィの花の一件で懐かれてしまったのか。

 それとも面白い奴認定でもされてしまったのか。



(どっちにしても困るけど)



 今回、国王から謝罪の手紙が届いたのだ。きっと今頃、王子も反省しているはず。

 だからこれ以上は何も言わない。



「おいしい」


「料理長に伝えておきますね」


「うん」



 私はつるりとみかんゼリーを頬張った。

 身体はそこそこ辛いが、一日ゴロゴロできたし、おいしいゼリーも食べられた。



(たまにはこんな日もいいかも)



 ⋯⋯なんて思ったのがいけなかったのだろうか。

 残念なことに、この日から三日おきに王子が遊びに来るようになる。それもアポを取って。

 王子が事前連絡をしてやってくる。

 きちんと手順を踏んでいる手前、追い返すわけにもいかない。

 結局王女の面会謝絶期間が終わるまでの残り二週間、私は王子に振り回され続けたのであった。



(や、休ませてぇぇぇ!)


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