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第9話・大人への第一歩


店主のおばあちゃんが立ち上がり話し始めた。


「久しぶりね、キョウ。」

「え…もしかして……あの時の女神様!?」

「ふふっ。そうよ。」


声もクスクスと笑う仕草も、確かにあの時の女神様だ。しかし、見た目はあの美しい女神様とはかけ離れた、顔や手にはしっかりと年齢が刻まれていた姿だった。


「どうして…何かあったのでしょうか!?それとも、僕なにかしてしまったのですか!?」


慌てふためいていると、また女神様は笑った。


「違うのよ、キョウがずっと試行錯誤してるのを見てたの。少しだけ手を貸そうと思ってね。」


ウインクして可愛らしい表情を作っても、外見はおばあちゃんだ。

「女神様がこんなひょこっと現れて良いものなんでしょうか?」


力になってくれると聞いて嬉しい気持ちもあったが、女神様の仕事は暇なのか?とも思ってしまった。


「あら。失礼ね。ちゃんと仕事もあるし、私だって忙しいのよ。」

「え!声にでてましたか!?」

「いぃえ、表情にでてました。」

「すみません…」

「ふふっ。いいのよ。それよりも、なにやら面白そうな物を作ってるみたいね。」

「はい、あと一歩だと思うのですが…なかなか成功しなくて。」

「キミの作ろうとしてるものは確かにこの世界の物で作れるのだけれど…これを使ったら良いと思うわ。」


そう言って女神様が渡してくれたものは、見たことがない赤い果実だった。大きさはイチゴくらいだが、形はりんごに近く、香りは桃のような甘い香りだ。


「もしかして、これが『女神の果実』…?」

「そうよ。キミに噂が届くように、メイドが市場にくる日だけお店を開けていたから多くの人には渡ってないけれど、噂は概ね真実よ。ただし、魔力のない人や欲に駆られ過ぎている人には効果を発揮しないようにも作ってあるの。だから、食べる人によって効果が違うのよね。」

「そんな物も作れちゃうなんてさすがです!…でも、『女神の果実』なんて名前つけて良いんですか?」

「いいのよ。私がつくったんだもの。趣味でね。」

「ははっ。趣味なんですか。」

「美を保つためよ。いいでしょ?」

「それで、僕がこれをもらってしまっても良いのでしょうか?」

「いいわよ。キミ、大人の姿になってやりたいこともあるんでしょ?今ここにある果実と、この果実の苗をあげるわ。実るのは10年に1度と噂では流したけど、キミの魔力があれば1年に1度は実ると思うから、育ててみてね」

「えぇ!ありがとうございます!!これで思う存分作れます!」

「頑張ってね。いつでも見守ってるわ。」


そう言うと、持っていた杖でコツンと地面を突くと、隣にいるマリアや周りの時間が動き出した。


「あれ?今ここに店主さんいませんでしたか!?」

「誰もいなかったよ。さぁ、マリア行くよ。」

「???」


マリアの記憶が混乱しているのも無理はない。一瞬にして、女神様も、あの店の棚にあった商品も消えたのだから。


その後、マリアの買い物に付き合ってから屋敷に戻ったアルフレイルは、庭でさっそくアイテムボックスに入れておいた『女神の果実』を取り出した。

研究成果をまとめたメモを確認しながら、成功に1番近い可能性の素材もアイテムボックスから出していく。


「さぁて。作りますかぁ!」

気合いも入れて、各素材を容器にまとめて魔力を流すと白く光り、赤くて甘い香りの液体が完成した。


「鑑定」

液体の詳細が表示される。

________________________

素材名 成長薬


品質 S


説明

飲むと肉体を15〜20歳相当まで成長させる薬


効果

効果時間は約120分。

________________________


「よし!成功だ!女神様、本当にありがとうございます!」

天に向かって手を合わせた。


「10本分は作れたし、さっそく飲んでみるか。」

『女神の果実』のおかげか、味も前よりは格段に美味しくなっている。コップに注いだ分を一気に飲み干した。


すると、全身に熱を帯び、筋肉や骨が引き伸ばされるような痛みを感じた。しかし、何回も実験をしていたこともあり、この感覚には慣れ始めていた。

池に映った自分の姿を見ると、顔も身体も20歳くらいの青年になっていた。


「やっと…完成した!!夢に見た『オトナ薬』!嬉しいし街に行きたいけど…今日は副作用がでるか、体調も観察しておこう。」

観察記録をつけようとノートへ手を伸ばしたその時だった。


ドサッ!!


振り返ると、洗濯物のカゴを落としたティナが目を大きく見開いてそこに立っていた。


「あ…あなた、誰ですか!?」


(ーーしまった!!)



♢♢♢

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