第6話・ガラスの花瓶
大きな音がした方へ走っていくと、マリアとティナ、庭師のロディッシュがしゃがみ込んでいた。
「どうしたの?」
声をかける時に、足元には割れた花瓶と花が落ちているのが目についた。水が入っていたものだったらしく、地面も濡れている。
「…っ!アルフレイル様っ!」
「大変申し訳ございません!」
「わたしっ、わ…わざとでは…ないのです!」
「マリア、言い訳はだめです。」
「でも…」
「まずは何があったか教えてもらえないかな」
とりあえず、ことの発端を聞いてみることにした。
「奥様が気に入ってらっしゃる花瓶とお花にお水を替えようと思ったのですが…シーツを洗濯し終えたマリアとぶつかってしまい…」
「前が見えなくなるほどシーツを持ったら危ないよ!」
「アルフレイル様のおっしゃる通りですよ、マリア。ティナも、花瓶を持って走ってはいけません。」
庭師のロディッシュが落ち着いた口調で宥めた。
「奥様にはワシも一緒に謝りに行ってあげるから」
「ロディッシュさーーん!ありがとうございますーー!」
2人声を揃えて言う。アルフレイルは少し考えて3人を引き留めた。
「あ!ちょっと3人とも待ってて!」
3人が見えなくなるところまで来ると、庭の隅に落ちている石を拾い集めて1箇所にまとめて置いた。両手をかざして魔力を込めながら、さっきのようにビー玉をイメージし、さらにそれを花瓶の形にしてみる。
「やった!できた!これでお母様もあの2人を許してくれるといいな。」
3人に先ほどのスキルで作ったガラスの花瓶を見せにいく。
「みんな、お待たせ!」
「わーー!なんてキレイな花瓶なのでしょうか!」
「なんと見事な…アルフレイル様、これはどこで…?」
「えーと…内緒!これを僕が先にお母さまにプレゼントしにいくから、マリアとティナはその後で謝りに行きなよ!そうしたらお母様もそんなに怒らないかもしれないし!」
「アルフレイル様…ありがとうございます!」
「解雇も覚悟しておりましたので…」
2人の目に涙が溜まる。
(とりあえずお母様にこれを渡しにいくとなると、どこで手に入れたかとか聞かれるよなぁ。)
色々と考えてみたが、「街で見つけた!」としか返答が思いつかなかった。
結局、これをあの割れた花瓶があったところに置いてみて反応を伺うことにした。
置いた後すぐにお母様が花瓶に気付き、しばらくの間じっと見ていた。あまりに動かなかったので隣にいってみると、お母様の瞳がキラキラしていて、花瓶に見惚れているようだった。
「お母様?」
「…あぁ、アル。これはどういうことなのかしら…陶器の花瓶だったのに、いつの間にかこんなにキレイなガラスの花瓶に代わっていて…驚いちゃったわ。」
「…前の花瓶の方がよかった?」
「前の物は旦那様に買っていただいたから大切にしていたのだけれど…この花瓶はとても美しいわ。ガラスの花瓶なんて見たことがなかったもの。」
お母様の表情を見てほっと一安心だ。
「でも、あの花瓶はどこにいっちゃったのかしら?アル、何か知らない?」
「え、えーっと…し…知らない」
「ふーーーん。…知ってるわね?もしかして、アルが壊しちゃったのかしら?」
笑顔なのに、目が笑っていない。
「ご…ごめんなさーーーい!!」
「アルー!!あなたって子はーー!」
急いでその場から逃げ出した。
その日から1週間、僕のおやつが抜きになった。




