第1話:今日も素敵ですわ
貴族学院の中庭の奥にある丘の近くの茂みから、今日もある人物を見つめる。
今日もなんて素敵なのかしら…
私、マリオネットはファレリス侯爵家の娘で15歳。半年前、この国の貴族の義務でもある貴族学院に入学した。我が国では貴族は1年間、貴族学院に通う義務がある。私もこの国の法律にのっとり、貴族学院に入学したのだ。
そこで出会ったのが、今私の視線の先にいる、公爵令息のサターン・ディーズ様だ。漆黒の髪と瞳を持つ彼は、見とれるほどお美しいにも関わらず、なぜか貴族社会から距離を取られている。
なぜ距離を取られているかって?噂によると、彼は恐ろしい魔力を持っているとの事。その魔力で、気に入らない人間たちを次々と蹴落としていくらしい。実際にディーズ公爵家に目を付けられた貴族は、次々と失脚しているらしい。
見た目も童話に出てくる魔王の様という事で、陰では魔王の生まれ変わりなんじゃないか!とも言われているくらいだ。ちなみに彼自身も、ものすごく強いらしい。そんな彼を貴族の人間は怯えており、彼には一切近づかない。
でも私は知っている、彼が実は心優しい人という事を…
「マリオネット、またここに来ているの?いい加減のぞき見は止めなさい。はしたない!それに万が一あの人に見つかったら、どうするの?あなただけでなく、あなたの家族にも迷惑がかかるのよ。いくら私が王族だからって、あの一族からあなた達を守る事は難しいんだから」
私の腕を掴み、その場から引き離そうとする人物は、この国の第二王女で兄の婚約者、さらに私の子供の頃からの親友でもあるレアだ。
「待って、レア。あと少しだけ…」
「もう、いい加減にして!ほら、行くわよ」
さらに私の腕を強く引っ張るレア。
それに抵抗する私。
レアの手を振りほどこうとした瞬間、あろう事かバランスを崩して前に倒れてしまったのだ。
「いたたたた…」
豪快に倒れたせいか、体を地面でつよく打ってしまった。こんなに豪快に転んだのは、久しぶりだ。
恥ずかしいわ、もう子供ではないのに。こんな風に転んでしまうのだなんて。
急いで起き上がった時だった。
真っ黒な美しい瞳と目が合った。真っすぐと私を見つめるその瞳。なんて美しい瞳なのかしら?
て、見とれている場合ではないわ。まさかサターン様の瞳の中に、私がうつっているだなんて!こんな光栄なことはないわ。
「貴様…ここで何をしているのだ!」
サターン様が口を開く。なんて素敵な声なのかしら?あの頃よりも、随分と低くなって男らしくなっているわ…
「こんにちは、サターン様。マリオネット・ファレリスと申します。私、ずっとあなた様にお礼が言いたくて。5年前、森で迷子になり、野犬に襲われそうになっていたところを助けていただき、本当にありがとうございました。あの時のあなた様の勇ましい姿、今思い出しても素敵で…」
「黙れ。俺はお前のような女は会った事もないし、見た事もない。失せろ」
さらに低い声で、呟くサターン様。真っすぐ私を見つめる瞳、増々素敵だわ。なんて魅力的で素敵な男性なのかしら。そんな瞳で見つめられたら、増々好きになってしまうわ…
これは神様が与えて下さったチャンス。
ここでもっともっと仲を深めないと!
「サターン様、よろしければ…」
「ディーズ公爵令息様、マリオネットが無礼を働き、大変申し訳ございませんでした。私どもはすぐに退散いたしますので!」
何を思ったのか、レアが私たちの前に現れたかと思ったら、急に私の腕を強く引っ張ったのだ。
「ちょっとレア、私はサターン様とお話を…」
「それでは失礼いたします!」
私の言葉を遮り、深く頭を下げたレアが、私の腕を強く引っ張る。さらに私をキッと睨むと、腕を引っ張り速足で歩きだしたのだった。
新連載始めました。
よろしくお願いいたします。




