14話 陛下の突然の命令
「同性と交流を深めよ」
それが、翌日、突然下された陛下の命令だった。
ここに来てから、もうすぐ一ヶ月が経つ。
陛下の体重はまだ1キロしか減っていないが、栄養マネジメントは今のところ順調だ。
そういえば、以前、厨房で大量の食材を破棄した犯人が先日発覚した。
私に嫌がらせをしていたグループのリーダー格の女性だった。
薪拾いに部署移動させられたことへの逆恨みらしい。
彼女は今回の件で解雇された。
冷たいかもしれないが、仕方ないと思う。
さて、気持ちを切り替えよう。
今日のお昼はポークソテーにサラダ、オニオンスープにパンだ。
「サラダはオリーブオイルに塩胡椒をかけてお召し上がり下さい」
「分かった」
陛下はサラダにオリーブオイルをゆっくりかけ始めた。
一つ分かったことがあるのだが、陛下はすごい真面目だ。
優等生君だ。
王様なのに、素直に私の言った事を聞いてくれる。
……まぁ、王様ゆえの天然な無茶ぶりもあるけれど。
食後には散歩の時間も設けている。
適度な運動は必須だ。
庭園には私と陛下、少し離れて近衛騎士。
ウォーキング開始。
庭園は広大で、貴族も自由に入場できる。
つまり、玉の輿を狙う令嬢たちも多い。
普段なら陛下を守るのは近衛騎士だが、庭園での盾は私だ。
常に辺りを警戒する。
……なんだか最近、楽しくなってきてしまった。
今日も令嬢たちは愚痴を言いながら帰っていく。
彼女たちの背中を見送り、小さく息を吐いた。
最初は怖かったこの時間も、今では慣れてしまった。
王様の隣を歩きながら婚活女子を警戒する役になるなんて、思ってもみなかった。
それなのに、不思議と心は落ち着いている。
妙な居心地の良さすら感じている。
……慣れって、怖い。
そして、ふと気づいた。
会話相手が、ほとんど男性ばかりだ。
料理長、近衛騎士、衛兵、そして陛下。
元の世界では、他愛のない話をできる女性の同僚が必ずいた。
仕事の愚痴や、どうでもいい話をしながら息抜きをしていたはずなのに。
ここでは、それがない。
「でも、やっぱり同性で話せる人欲しいなぁ」
「なんだ、友人でも欲しいのか?」
あ、声に出ていた。
「いえ、女性とあまり話す機会がないなと思っただけです」
「…………そうか」
なんだ、今の長い間は。
この時はそれで終わったのだが――
翌日、陛下から命令が下った。
「同性と交流を深め、この国の作法や歴史を学べ」
うぅ、あの時なんで言ってしまったのだろう。
めんどくさそうな香りが、プンプンする。
――どうか、クセの強い人じゃありませんように。




