第8話 症例観察メモ/年代不詳
【文書種別】症例観察メモ
【作成日】不明
【作成者】非定型記憶症状観察班
【対象】匿名化症例抜粋
【状態】複写資料/原本所在不明
【備考】一部判読不能。症例番号に欠番あり。固有名詞、住所、施設名は削除済み。
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1. 概要
本資料は、本人の生活歴、家族構成、通学・通勤記録、医療記録等と照合できない体験を、対象者が一時的に「自分のこと」として扱った症例の観察メモである。
対象者の発話は、夢、作話、他者の記憶、既視感、強い不安反応、疲労に伴う混乱などとして説明されることが多い。
ただし、記録時点では、いずれの説明にも確定されていない。
本資料では、発話記録が残っているもののみ抜粋する。
なお、記録者ごとに用語の統一はされていない。
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2. 症例01
対象者:10代後半
性別:非開示
記録場所:教育相談室
主訴:試験前の強い不安、睡眠不足、面談への恐怖
対象者は、予定されている個別面談について、面談後に見られるような身体反応を示した。
発話抜粋。
「もう謝らないといけない気がします」
「怒られた後みたいに、胸が重いです」
「でも、まだ行ってないのは分かっています」
「何を謝るのか聞かれると、そこは分かりません」
確認したところ、当該面談は記録時点では未実施。
面談相手との直近接触も確認されず。
対象者は、面談内容について具体的な日時や発言を再現できない。
追加発話。
「椅子に座っていた感じはあります」
「机の角を見ていた気がします」
「誰かに何か言われた気がします」
「でも、言葉は分かりません」
観察者所見。
対象者は、自身の発話が実際の記録と合わないことを理解している。
ただし、発話中に呼吸の乱れ、手指の震えを確認。
虚偽申告として扱うには、本人の混乱が大きい。
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3. 症例02
対象者:30代
性別:非開示
記録場所:外来
主訴:住居に関する記憶違い、鍵への違和感
対象者は、現在居住していない部屋について、「帰らなければならない」と繰り返した。
住民記録および家族確認では、該当住所への居住歴は確認されていない。
発話抜粋。
「鍵をなくしたと思いました」
「あの部屋に帰れないと困ります」
「玄関の右側に傘立てがあります」
「でも、そこに住んだことがないのは分かっています」
対象者は、該当する部屋番号、建物名、所在地域を説明できない。
一方で、玄関扉の色、廊下の照明、鍵を持った時の重さについては反復して言及した。
質問:「その部屋で誰と暮らしているのか」
対象者回答。
「分かりません」
「一人だったような気もします」
「でも、誰かを待たせている気がします」
「帰らないと悪い、という言葉だけ出ます」
観察者所見。
対象者は、存在しない住居記憶を体系的に語っているわけではない。
地名、人物名、具体的契約情報は提示できない。
ただし、「帰宅しなければならない」という発話と、鍵の感覚への執着が強い。
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4. 症例03
記録紙欠落。
本文なし。
欄外に以下のみ判読可能。
「本人は“先に終わったものがある”と表現」
「詳細聞取不可」
「再来なし」
別筆の追記。
「作話、聞きかじり、夢内容の混入を除外できず」
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5. 症例06
対象者:40代
性別:非開示
記録場所:救急外来
主訴:事故未遂後の混乱、強い自責発言
対象者は、記録上確認されていない事故について、事故後の加害責任を繰り返し訴えた。
確認された事実としては、対象者の車両は停車しており、接触事故は発生していない。
発話抜粋。
「私が轢きました」
「止まれたのに、止まりませんでした」
「子どもが倒れたのを見ました」
「でも、誰もいないんですか」
「それなら、何を見たんですか」
現場確認では、負傷者、接触痕、通報記録なし。
周辺映像にも該当事故は確認されていない。
ただし対象者は、事故後に想定される身体反応を示した。
・手指振戦
・過呼吸
・自責発言
・救急要請を求める発話
観察者所見。
対象者は、記録上確認されていない事故について、強い加害体験感を示している。
内容は現実の記録と一致しないが、虚偽申告や演技と判断するには反応が強い。
対象者は「事故を起こした」という認識と、「事故が確認されていない」という説明の間で混乱している。
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7. 共通所見
各症例に共通する可能性がある特徴は以下。
ただし、記録者による誘導と要約を考慮する必要がある。
・生活歴または外部記録と照合できない体験を「自分のもの」として扱う。
・出来事の詳細は断片的である。
・本人は、語った内容が現実記録と合わないことを理解している場合が多い。
・それでも、身体反応、自責発話、特定物への反応が強く残る。
・妄想体系として固定する例は少ない。
発話内容の真偽よりも、本人が当該体験をどのような自己体験として扱っているかに注意を要する。
欄外追記:
「同一機序と断定しないこと」
「分類名の使用は保留」
「症例03の原本確認」




