第21話 教育情報誌インタビュー記事「沈黙を、同意と見なさない」
【文書種別】教育情報誌インタビュー記事
【公開日】2166年4月18日
【媒体】教育情報誌『進路と支援』
【対象】星陵学園高等部 校長 深瀬亮平
【状態】公開記事アーカイブ/一部広告枠除外
【備考】本文中の見出しは媒体編集部によるもの。
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沈黙を、同意と見なさない
星陵学園高等部
深瀬亮平校長に聞く、S-LINK支援プログラムの現在
星陵学園高等部は、2166年度より個別支援制度「S-LINK支援プログラム」を拡充した。
特徴的なのは、支援対象を成績不振者に限定していない点である。
面談記録、StudyNest利用状況、出欠、保健室連携、本人電脳IDに紐づく校内認証記録などを組み合わせ、成績に表れる前の負荷を確認するという。
一方で、保護者からは「支援という名の監視ではないか」という声もある。
学校は、生徒が望む前にどこまで手を伸ばしてよいのか。
早期支援と記録利用の境界について、深瀬亮平校長に聞いた。
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成績が落ちてからでは遅い
――S-LINK支援プログラムは、成績不振者だけを対象にしていないそうですね。
深瀬:
はい。
成績が下がってから声をかけるのでは、遅い場合があります。
欠席が増えた。
提出物が止まった。
試験結果が急落した。
そこまで見えれば、学校は動けます。
しかし、本当に追い詰められている生徒の中には、最後まで数字を落とさない子がいます。
寝ていない。
休んでいない。
相談していない。
それでも評定だけは保っている。
そういう生徒は、制度上は「問題なし」に分類されやすい。
――本人が大丈夫だと言っている場合でも、学校が介入するのですか。
深瀬:
本人が大丈夫と言っている。
成績も出ている。
出席もしている。
それなら大丈夫だろう、と判断するのは簡単です。
ですが、その「大丈夫」が、助けを求める言葉を知らないだけだったらどうするのか。
私は、生徒の沈黙を、そのまま同意と見なすべきではないと思っています。
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記録は結論ではなく、入口である
――記録を見ることに抵抗を持つ保護者もいます。学校はどこまで見てよいのでしょうか。
深瀬:
その懸念は正しいと思います。
記録は便利です。
便利だからこそ、扱いを誤れば生徒を追い詰めます。
本校で確認するのは、学校生活に関わる範囲に限ります。
出欠、校内認証、学習アプリの利用状況、面談記録、保健室との連携。
ただし、記録は結論ではありません。
きっかけです。
記録に何か出たから処分するのではありません。
記録に何か出たから、まず話を聞く。
家庭の事情かもしれない。
睡眠の問題かもしれない。
学習方法の問題かもしれない。
学校が何もする必要のない、一時的な変化かもしれない。
だから、記録だけで決めてはいけません。
ただ、記録を見なければ、声をかけることすらできない生徒がいる。
その間を、学校は引き受ける必要があります。
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道具を渡して、自己責任にしない
――学習補助機能の発達によって、学校が扱う「支援」の範囲も広がっています。支援と自己責任の境界は、どこにあるのでしょうか。
深瀬:
学習補助機能も、奨学制度も、面談も、すべて道具です。
ただ、道具を渡して「選んだのは本人です」と言って終わるなら、それは支援ではありません。
責任の置き場所を、本人へ移しただけです。
使わせるなら、負荷を見る。
勧めるなら、途中で止められるようにする。
そこまで含めて、学校の手続きでなければならないと思っています。
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綺麗ごとを、手続きにする
――S-LINKは、かなり踏み込んだ制度にも見えます。
深瀬:
踏み込まなければ届かない生徒がいます。
「誰も取り残さない」
「家庭環境に左右されない」
「生徒一人ひとりに寄り添う」
どれも正しい言葉です。
しかし、言葉だけなら、どの学校でも掲げられます。
必要なのは、面談枠です。
記録の扱いです。
部署間の共有です。
保護者説明です。
同意の手続きです。
制度にしなければ、届く子にしか届きません。
――本人が支援を望まない場合はどうしますか。
深瀬:
本人が拒否できることは大切です。
ただ、拒否するためにも、何を拒否しているのかを知る必要があります。
支援の内容も、記録の扱いも、選択肢も、本人に説明されなければならない。
そのうえで本人が拒否するなら、学校はそれを尊重します。
しかし、本人が何も知らないまま、誰にも声をかけられないまま、後になって「自己責任」とされるのなら、それは自由ではありません。
支援が本人に歓迎されるとは限りません。
それでも、後から振り返ったときに、あの時点で誰かが止めてくれたと思える可能性を残す。
そのために、綺麗ごとを手続きにする必要があります。
綺麗ごとだけでは届かない子がいる。
私は、そこから目をそらさない学校でありたいと思っています。
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【編集部注】
星陵学園高等部では、2166年度よりS-LINK支援プログラムの対象範囲を拡大している。
一方で、保護者説明会では、記録閲覧権限、支援接続後の記録保存期間について質問が相次いだ。
星陵学園高等部は、年度内に運用説明資料を追加公開する予定である。




