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【第一章完結】ユニークスキルは【チクビーム】~最悪な名前のスキル、ただし最強~  作者: おしり炒飯


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(幕間) 仕合

「よし、両者そろったな? では、これより双魔剣ガルマと影の刃アクトゥの仕合を始める。立会人はこの俺、プリマ冒険者ギルド長、千里眼のマダルが務める。」


「「「うおおおおおおおおおーーーーーーッッ!!」」」


“観客の歓声”が響き渡る。

 ギルドに併設された修練場にて、アクトゥとガルマの仕合が始まろうとしていた。

 アクトゥの背後にはサポーターとしてノノが、ガルマの背後にはビリーが控えていた。

 また、マダルの背後には氷結のシュッツディラルドが控えており、今この瞬間において、この場にはプリマの街の最高戦力がそろっていたのだった。


「どうしてこんなことに…。あっしら、完全に見世物じゃないでやすか。」


「諦めたまえ、アクトゥ君。二つ名持ち同士の仕合だ。こうなることは必然だよ。」


 シュッツディラルドがアクトゥをなだめる。


「両者、獲物は自前の物を使っていいぞ。本気でやりあえ。いざとなったら、氷結が止めに入るからな。ま、最高級のポーションも用意してる。指が飛ぶくらいなら再生できるから、安心しろ。」


「何も安心できる要素がないでやすね。」


「はははっ、いいじゃねえか! これで思いっきり、やりあえるな?」


「「うわぁ…。」」


 アクトゥと、背後のノノの声が重なった。


「よし、それじゃあサポート二人は下がってくれ。両者、構えッ!」


 ノノとビリーが下がる。

 アクトゥは使い慣れた短剣を抜き、逆手に構えた。


 一方のガルマ。

 腰に佩いた、二本の剣を抜き放つ。


 シャリィイン…。

 鈴の音のような音が響く。


 それぞれの柄には、太陽と月の意匠が見られた。



「はぁああああじめぇえええええッッッ!!!」



 戦いの火ぶたが、切って落とされた。



 ◎



「お手並み拝見ッ!」


 ガルマが前かがみに踏み込み、二刀が残像を残して振りぬかれた。

 まるで、巨大な肉食獣がその牙をもって、襲いかかるようだった。


 ザザッ


「あっ! おい避けんなっ!」


「こんな斬撃、受けていられるかってんですよッ!」


 アクトゥもまた、影を残すようにして回避。

 流れるように、反撃。


 ジリリィイインッ!


 アクトゥの短剣による神速の連撃を、ガルマはさばいていく。

 ミスリル特有の、鈴の音のような音が響き渡る。


「あははははっ! やるなァ! 影の刃ッ!」


「チィッ! 余裕そうでやすねェッ! 双魔剣ッ!」


 両者の剣激は、常人ではとっくに目に追えない速度になっていた。


「ギア上げていくぜぇええっ!!」


 ガルマの剣速がさらに上がる。

 それにつられて、アクトゥの短剣を操る速度も上がっていく。


「げぇっ!? きっしょ!! 化け物でやすかっ!?」


 驚くべきことに、ガルマの両目はカメレオンのように、左右別々に動いていた。


「ハッハァッ! 見える、見えるぜェッ!!」


 火花散らす剣戟は、両者が示し合わせたように同時に飛びのいたことで終わった。


「「そろそろ、本気で行く(でやす。)。」」


 両者の言葉が重なった。


 アクトゥ、影を纏う。

 漆黒の影法師が、ゆらゆらとたたずんでいた。

 影の中、赤い眼光だけが、不気味にガルマを見つめている。


 そして、ガルマは。


 双剣を逆手に構えた。

 そして。


「光させ、陽光。写し出せ、月光。」


 双剣に、光が宿る。

 右手の陽光。炎の魔力により、刃が白熱。


 左手の月光。水の魔力により、刃に青いさざ波が立つ。


 ガルマの口角が、吊り上がり。


「いざ、参る。」



 姿が、掻き消えた。



 ピィーー、ン。



 それは、どこまでも澄んだ音だった。

 それは、陰と陽が、ぶつかり合う音だった。


 影はゆらゆらと踊りながら、光る斬撃を交わして行く。

 影が斬られたと思っても、それは残像。背後にこそ、その影はある。


 しかし、ガルマはそれすらも読んでいる。

 月光が、影の動きをささやき、教えてくれる。



 あとは、影を照らすだけだ。

 背後を見ずに、真後ろに陽光の斬撃。

 ありえないような、関節の動き。


 ピシィーーーーッ


 影は、斬り裂けない。

 しかし、照らすことはできる。


 陽光の光が、その輝きを増した。


 「そこだぁああああーーーーッ!!!」


 ガルマの絶叫が響く。

 

「ぐぅッ!?」


 アクトゥの全身を覆う影が、薄まった。



 バギリィイーーーーンッ!!



 これまでガルマの斬撃を躱し、いなし続けていたアクトゥが、初めてその斬撃を正面から受けた。


 その結果。


 アクトゥの体は、宙を舞っていた。


「ここで決めるぜッ!」


 ガルマの全身がミシミシと軋む。


 ヒィイ、ン。


 両手の剣が、その輝きをさらに増していく。



「――陽月燦然ようげつさんぜん。」



 神速。それは、あまりの速さ故に、一度剣を振りぬいただけに見えた。

 しかしその実、数舜で何十と剣を振り抜いていたのだった。


 放たれたのは、一秒に数十度の、斬撃。

 それも、炎と水の性質を持った魔力が乗せられた、斬撃。

 しかも、両手。



 ドゴォーーーーーーーンッ!!!



 空中で爆発が生じた。

 およそ、斬撃により生じたとは思えない光景であった。



 一瞬の、気の緩み。

 影とは、常に音もなく忍び寄るもの。


「はぁ、マジかよ。おかしいと思ったぜ、あの斬撃だぜ? なんでAランク冒険者の氷結が、微動だにせず突っ立てるんだってな。」


「あっしの勝ち、ってことで。良いでやすかね?」


 ガルマの背後。アクトゥは、ただそこに立っていた。

 ガルマの首筋に、短剣を当てて。


 ガルマが降参するように、両手を上げた。



「そこまでぇえええええええッッッ!」



「「「うおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!!」」」


 歓声が爆発した。

 激闘を制したのは、アクトゥだった。



 ◎



「何が、起きてンだ…?」


 その仕合はビリーにとって、あまりにも衝撃的だった。

 ビリーは二人の剣戟を、一切目で追えていなかった。


「クソッ…! これが、実力の差かよッ…。」


 ビリーは近頃、伸び悩んでいた。

 かつては村でも五本の指に入る実力者であった。

 しかし、その実力は頭打ちだった。


 どれだけ努力しても、ガルマには全く歯が立たなかったのだ。

 これまで、ガルマから一本を取ったのは、二人だけ。


 父である、剣豪ダンテ。

 そして、もう一人は。



 ドゴォーーーーーーーンッ!!!



 爆音が鳴り響き、思考が現実に戻された。


「あのおっさん、死んだな。」


 ガルマは、ヒルマのパーティメンバーがやられたことに、スカッとした心地よさを感じていた。


(チクビナイトのパーティメンバーが、ガルマさんより強い訳がない。あんなくたびれたおっさんがな。)


 しかし、ガルマが両手を上げたことで、ようやく認識した。

 その背後に、“影”が立っていたことに。


「馬鹿なッ!!」


 思わず、叫んでいた。

 思わず、斧を手にガルマに駆け寄ろうとした。



 影と、目が合った。



【殺すぞ。】



「ひっ!?」


 濃密な、殺気。

 魔物とは違う、粘りつくような、人から放たれる殺気。


 ビリーはその場から動けなくなってしまった。

 これが、格の違い。


 こんな奴らと、あのチクビナイトが…?


 ビリーは、自らの足元が崩れていくような錯覚に陥った。



 ◎



「ひぃ~、参ったぜ。やられちまったわ! あっはっはっはっはっ!」


 イトラーク村への帰り道。馬車の中で、ガルマは終始気分がよさげであった。


「アクトゥのおっさんは対人のスペシャリスト、って感じで、今まで戦ってきた相手と感触が全然違くて、マジで最高だったぜ! ビリー、お前はどうだった? 外野から眺めていて、何か掴めたか?」


「…。」


 ビリーは、黙り込んだままだった。


「おいおいビリー、さっきからどうしたんだ?」


「チクビ…ヒルマについて、あのおっさんは何か言ってたっすか?」


「え? ヒルマ? ああ、ヒルマはあのおっさんよりも強い、って言ってたぜ?」


「ッ!?(嘘だ…! あんな、あんな化け物より強いなんて…!)」


 ビリーは、完全に正気を失いつつあった。


「なに気にしてんのか分からねえが、あんま気落ちすんなって! あ~、強くなったヒルマとも、戦いてぇなぁ!」




 ガタガタと揺れながら、馬車は進んでいく。


作者のおしり炒飯と申します。

どうぞよろしくお願いいたします。

本作、カクヨム様にて、先行公開しております。

続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。

https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614

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