(幕間) プリマへの来訪者
「いつになったら、あっしは解放されるんでやしょうか…。」
イトラーク村から帰還したアクトゥは、未だにプリマの街を出られずにいた。
と、いうのも、この街におけるCランク以上の斥候職はほとんどが魔の森の調査に駆り出されており、人手不足に陥っていたためだった。
ギルドとしては、アクトゥほど有能な者を、そうそう手放したりはできない。
「ま、そのぶんたんまり貰ってやすから、いいんですがね。」
そう一人ごつと、アクトゥはぬるいエールをぐびりと、胃袋に流し込んだ。
「アクトゥさん!よかった、まだいらしたんですね。」
「おや、ノノ嬢。どうされやしたか?」
ノノは非常に優秀な職員であったため、現在ギルド内でもどんどん発言力を増しており、ギルド受付統括という役職に押し上げられていた。いずれは副ギルド長になるのではないか、とまで噂されている。
「アクトゥさんにお客様がお見えなんです。それも、どうやら騎士様みたいで。」
「き、騎士ぃ!? ば、バカな。最近後ろ暗いことはしてねぇっていうのに…!」
「言動があまりにも怪しすぎますが、いったん聞かなかったことにしてあげます。私もびっくりしたのですが、なんでも、ヒルマくんのお兄さんだとか…。」
アクトゥの眉が、ぴくりと動いた。
「ほう?ヒルマの兄貴、でやすか。ま、面くらい拝ませてもらいやすか。」
よっこらせ、と椅子から腰を下ろしたアクトゥは、ヒルマの兄とやらが待つ応接室へと向かった。
◎
「んで、“双魔剣”殿があっしなんかに、一体どんな御用でやすかねぇ?」
「はははっ、ご挨拶だな。その二つ名はかっちょよくて気に入ってるんだが、気軽にガルマと呼んでくれ。ああ、こいつは連れのビリーだ。俺の従者みたいなもんだ。」
応接室には、二人の男がいた。
一人は、ガルマ・イトラーク。ヒルマに似た顔立ちだが、より自信にあふれ、全身から闘気がみなぎっているようであった。
そしてもう一人は、ビリー。全身はがっしりとした筋肉に覆われており、重兵士、といったようないでたちであった。軽く会釈をしたかと思うと、アクトゥをじろじろと嘗め回すように見始めた。
「なにか気になるようなことでもありやすか? ビリー殿。」
「…あー、いえ。ただ、“あの”ヒルマとパーティを組んでいたと聞きましたので、どのような人物かと考えてたっす。」
(こいつか、ヒルマにちょっかいかけてたガキってのは。)
ビリーの、明らかに侮るような露骨な態度から察したアクトゥ。
「おいアホ、失礼だろうが。わからねえのか? このおっさんはお前なんかより断然強ぇぞ。」
「おっさん呼びの方が失礼じゃないでやすかね??」
「ああすまねえ、アクトゥ殿と呼ばせてもらうぜ。」
「…あー。すんませんでした。アクトゥ殿。」
ビリーが首をすくめるようにして、謝罪した。
「んで、ガルマ殿。本題はなんなんでやすか?」
「脱線して申し訳ねぇ。なぁに、弟が世話になったって聞いてな。どんなやつか、ちょいと顔を見たかったんだ。ま、それだけじゃねえがな。」
「…それだけじゃない、でやすか?」
「ああ。なぁ、アクトゥ殿。」
ガルマがぐいっと、身を乗り出した。
アクトゥをまっすぐと見つめるその目に、ギラついた光が宿っていた。
「俺と、闘り合わねェか?」
「え、絶対嫌。嫌です。んじゃ、失礼しやす。」
アクトゥ、流れるように離席。
「いやいやいや待て待て待て待て! ちょ、待てよ!」
ガルタクが慌てたように立ち上がり、アクトゥを引き留める。
「タダとは言わねぇ! 俺に勝ったら、即Bランクにしてやる!」
アクトゥがぴたりと動きを止めた。
「すでにギルドの許可は貰ってる。どうだ?悪い話じゃねぇだろ?」
「…ガルマ殿の利点がわからないのでやすが?」
「あ? 何言ってるんだ。俺は強ぇやつと戦えりゃ、それでいい。俺もさらに強くなれるしな!」
ガルマはニッと笑った。
(え、この人いつもこんな感じでやすか?)
アクトゥがビリーに、視線で訴えかける。
(あー、いつもこんな感じっすね。)
肩をすくめるビリー。
アクトゥの脳裏に、「双魔剣は戦闘狂」といううわさ話がよみがえってきた。
どうやらその噂は、真実だったようだ。
「んで、どうするんだ? アクトゥ殿。受けてくれんのか?」
アクトゥは深いため息をついた。
「いいでやしょう。受けて立ちやす。」
その言葉を聞いて。
ガルマの口角が、吊り上がった。
作者のおしり炒飯と申します。
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