第28話 魔法のキス
ちゅっ
ヒルマの体が光に包まれる。
(暖かい…。)
暖かな光の中で、ヒルマはゆっくりと眠りに落ちていった。
光は繭のように全身を覆った。
そして。
数十秒ほどすると、シュルシュルと紐がほどけていくように、
光の束が宙に消えていく。
そして、光が消えた後。
傷一つなく、綺麗な寝顔のヒルマが現れたのだった。
◎
「ん、んぅ…?」
「おはようございます、ヒルマさん。」
ゆっくりと目を開くと、そこは洞窟ではなく、ヒルマたちが泊まっていた宿だった。
「あ、れ?あれ!?い、いつの間に戻ってきたんですか!?」
「え、えと、私がヒルマさんをおぶって帰ってきましたっ!!」
「ネシュカさんが僕をおぶって!?」
(は、恥ずかしい~~~~~~~~~~~っっ!!!)
ヒルマが両手で顔を覆った。
(…ん?両手?)
「!!!???左腕があるっ!!?」
驚きのあまり飛び起きるヒルマ。
「「いてっっ!!」」
ヒルマとネシュカの額がぶつかる。
そう、ネシュカは膝枕をしていたのだった!
「アッ!!!ア~~~~~ッ!!!!」
「エッエト、アト、エヘヘヘ~~~~~っ」
照れて赤くなる二人。
そして、蘇るkissと告白の記憶…。
5分以上、二人はもじもじとしているのであった。
「あ、改めて、ありがとうございました…。」
「い、いえっ!こ、こちらこそ、私のためにありがとうございましたっ!」
「ネシュカさんのスキル、すごいですね…。まさか、四肢欠損まで再生してしまうとは…。」
「わ、私もここまで完璧に治せるとは思ってませんでした…。」
「四肢欠損を治せたのって、歴史上でも聖女だけだったような…。」
「そ、そうなんですかっ!?」
「ますます人前でスキルを使えなくなっちゃいましたね…。」
「あぅ…ヒ、ヒルマさん以外には使わないですっ!!!」
「えっ!!あっ!!えと、ありがとう、ございます…。」
「あぅっ!!い、いえ、それほどでも…(?)」
「「…。」」
「「あ、あのっ!!」」
もどかしいですね。
ほほえましいですね。
おっと、作者の心の声が。
「ネ、ネシュカさんからどうぞっ!!」
「あ、ありがとうございますっ!えと、ヒルマさんのスキルについてなんですけど…。」
「…改めて、ネシュカさんにはお伝えしておきます。遅くなってしまい、ごめんなさい。」
「あ、あやまらないでくださいっ!お気持ちは痛いほどわかりますから…。」
「僕のユニークスキルは、チクビームと言います。乳首から強力なビームを放てるスキルです。現状、このビームを受けた存在はすべて消滅しています。」
「しょ、消滅、ですか。」
「はい。プリマ、という場所で発生したスタンピード殲滅戦に参加したのですが、そこで魔族と戦闘になりまして…。」
「以前お話されていた、ランクアップの要因となった件ですよね?」
「そうです。その際に、当時パーティを組んでいたアクトゥという暗殺s…斥候職の人と、Aランク冒険者のシュッツディラルドさんと共に戦いまして。」
「あ、暗殺者って言いかけませんでしたk」
「斥候職です。Bランクレベルの力を持つアクトゥ、そしてAランクの力をもってしても倒せなかった魔族ですが、僕のチクビームで一撃でした。」
「い、一撃…伝説に登場する、魔族が…。」
「はい。ただ、この力も無敵ではありません。あの男との戦闘で嫌というほど理解しましたが、このスキルは連続使用ができない。いや、習熟さえすればできるのかもしれませんが、現状では片方ずつ発射しても、二連射までが限界です。」
「そ、それでも十分強いように思いますが…。」
「確かに、それでも十分強いですが、ビームを使わなければ倒せないような敵が現れたとき、少しでも手数が多いほうが良い。」
「た、確かに…。」
「今回の戦いで、僕は覚悟を決めました。これからはいざとなれば、躊躇せずにチクビームを撃ちます。もう、仲間を守れないのは、いやだから…。」
「ヒルマさん…。わ、私も。私もちゅー魔法、もっと練習しようと思いますっっ!!守られるだけじゃなくて、私もヒルマさんの役に立ちたいんですっ!」
「ッ!わかりました。僕のビームは、使っていればすぐに噂になり、嘲笑されるでしょう。もしかしたら、ネシュカさんにも嫌な思いをさせてしまうかもしれません。それでも、僕とパーティを組んでくれますか…?」
「もちろんですっっ!!」
初めて、自分のすべてを受け入れてくれたネシュカ。
これまで自らが受けてきた侮蔑や嘲笑。
そんなものは、ネシュカを失うことに比べればどうとでもないことのように思えた。
強くなる。そして、ネシュカを守る。
ヒルマの覚悟は、より強固なものとなり、新たな目標が決まった。
もう、躊躇はしない。
(例えどんなそしりを受けようとも、ネシュカを守るためなら、僕は…。)
ヒルマの覚悟、それは。
(僕は、魔王にでもなってやる。)
漆黒の殺意。ネシュカを守るためならば、たとえすべてを犠牲にしてでも。
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
本作、カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
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