第26話 塵殺
ヒルマ1人に対し、Cランクレベルの男が4人。
男たちは2人が魔術士、1人が剣士、1人が拳術士であった。
「「バインドッ!!」」
黄色い光の拘束魔法がヒルマに飛ぶ。
「もう、当たらねえよ。」
すでに見切っていたヒルマ、最小限の動きでこれを回避した。
「死にさらせ、ガキ。」
刺青の冒険者の拳が唸る。
メリケンサックのような武具を装着しており、一撃でも当たってしまえば骨が粉砕されてしまうだろう。
ヂッ!!
ヒルマの頬を拳がかすめた。
赤い線が走り、血がしたたる。
「お前が死ね。」
刺青の男は驚愕した。
ヒルマに躱されたと思った瞬間、目の前にヒルマの左拳が迫っていたからだ。
同時に、男はニヤリと笑った。
(当たらねえよッ!!)
拳闘士としては自らの技量の方が上だと悟った。
この程度の拳速であれば、躱せる。
ヂッ!
男の頬に赤い線が走る。
(躱したッ!もらったぞ、ガキッ!!)
斬ッ
「え?」
下半身の感覚が消え、妙な浮遊感を感じた。
なぜか、目線が低くなっていく。
どちゃっ。
刺青の男が最後に見たのは、片手で剣を斬り上げた姿勢の、ヒルマだった。
残り、3人。
「く、クソッ!!死ねガキィッ!!」
剣士の男が斬りかかる。
「ワンパターンだなぁ。お前らは死ねとガキしか語彙がないのか?」
男が放ったのは斬り下げ、からの高速の斬り上げ。
その剣速は熟練者の物であった。
しかし、ヒルマはこれを軽いステップで後方にさがり躱す。
「フ、ファイヤーボールッ!」
「ウィンドエッジッッ!!」
下がった瞬間を狙い、魔術士の男たちから攻撃魔法が飛ぶ。
前衛の刺青の男が上下に両断されたのを目撃し、顔には恐怖の色が浮かんでいた。
しかし、腐ってもCランク冒険者。攻撃のタイミングは見逃さない。
「邪魔。」
ザザッ
ヒルマ、迫りくる魔法を両断。
剣士の男よりも早い、二連撃。
「ひっ!?」
剣士の男は悟ってしまった。
自分よりも早い剣速、魔法を両断するほどの技の冴え。
勝てない。
無意識に震えだす手足。
そうだ、自分はミカシュのおこぼれに預かっていただけの、
「考え事?続きはあの世でやりなよ。」
斬ッ
暗転。
残り、2人。
「ミ、ミカシュ!!あいつやべえぞ!!」
「ミカシュも加勢してくれ!!」
魔術士の男たちは完全に及び腰であった。
ミカシュへ助けを求める。
「はぁ~、使えねえな。ほら、こいつを“出してやる”よ。」
ミカシュの眼前、地面に魔法陣が現れた。
そして、そこから現れたのは、いつか戦ったリビングアーマーであった。
「…やっぱり。そのリビングアーマーはお前らの手先か。」
「はははっ、そうさ。俺はテイマー。このリビングアーマーは30層の魔物だが、ただの雑魚魔物扱い。ごろごろ湧き出てくるから、定期的な供給もできる。おい、わざわざ召喚してやったんだ。ミロ、ブーモ、早くあのガキを連れてこい。」
「「へ、へいっ!!」」
リビングアーマーを盾に、魔術師二人が迫る。
「ネシュカ、よく見ておけよ?あのガキが泣き叫びながら、四肢を斬り落とされるところを。そしてガキ、さっさと負けてくれ。早くしないと、このままこの女ここで犯すよ?」
「がっ!」
ネシュカの首が絞められ、衣服に手がかけられる。
ヒルマの中で、何かが切れた。
「今すぐ、その手を放せ。」
「はぁ?離すわけねえだろ?このメスは俺の性奴隷なn」
「チクビーム。」
パヒュッ
「は?」
すべては一瞬。
突然の、光。
なにか、光が瞬いたと思った瞬間。
リビングアーマーも、魔術師の男二人も、すでにこの世に存在していなかった。
ミシュカは、何が起きたのか理解できなかった。
だが、ジュウジュウと音を立て立ち上る煙の向こう。
ゆっくりとこちらに歩み寄る影。
ヒルマだ。ヒルマの姿を視認して、理解した。
「チク、ビームかッ…!」
ヒルマの胸部から立ち上る煙。
“ビーム”が発射されたことを理解した。
「離せよ、その汚い手を。」
ヒルマの体は、返り血で真っ赤に染まっていた。
その返り血が、ビームの余波で音を立てて蒸発しているのだ。
「…舐めるなよ?ガキ。」
ミカシュが右手を掲げた。
「…出でよ、キリング・アーマー。」
魔法陣が現れる。
深紅の迅雷がほとばしる。
なにかが、ゆっくりと姿を現した。
それは、深紅の鎧であった。
ゆっくりと立ち上がったその鎧は、背中から巨大な斧を引き抜いた。
その斧もまた、血で濡れたように深紅に染まっていた。
「キリング・アーマーですか。」
「ああ。俺のテイムした魔物の中で最強の魔物だ。ガキ、お前が悪いんだぞ?俺に本気を出させたお前がな。お前はこいつに決して勝てない。こいつはAランクの魔物だ。それに、」
「お前、ビームを連射できないだろ?」
チクビーム。この世のありとあらゆる存在を滅却せしめる最強のスキル。
しかし一度放ってしまえば、乳首の冷却のためにしばらくのクールタイムが必要となってしまう。
ここにきて、ヒルマがビームを使わず、十分習熟していなかったことが仇となった。
「行け、キリング・アーマー。あのガキを殺せ。」
「■■■■■■■■■―――――ッ」
この世ならざる絶叫を上げながら、深紅の巨体が迫りくる。
赤い迅雷が迸り、深紅の斧が振り上げられた。
「がぁああああああああああああああっっっ!!!!!!」
大切な仲間を守るため、ヒルマが雄たけびを上げて挑みかかる。
ヒルマの死闘が、幕を上げた。
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
本作、カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614




