第34話 魔人の村
本日2話目
「あれ、なんで村が……?」
デリカもこの村は予想外だったようで、驚いていた。村の前まで行くと、魔人のおじさんが声を掛けてきた。
「おやぁ、珍しいですね。外の世界から来るなんて」
「え、外の世界ですか?」
「あぁ、すまない。ここは霧の日ではなければ、入ってこれないんですよ」
「条件によって、入れる場所……? ゲームじゃあるまい……」
よく考えれば、ここは杏だった頃にやった乙女ゲームのと類似している。今の私がやっているジャンルが違うといえ、ゲームに関係があるのは間違いないだろう。
ここはゲームの世界だから、おかしくはないのか……? この世界はよくわからん!!
今回のことは情報が少ないから、わからないことが多い。まず、情報を集めるべきだろう。
「見るには、ただの村に見えるわね。あの大きな家は村長のかな?」
情報を集めるなら、村長に聞いた方が早いだろう。しかし、こっちはデリカ以外は魔人ではないのだ。なのに、さっきの村人は何も言わなかった。
「あら、人間も一緒なのね」
「へいへい、そこの人間! 何か買って行かないかい!?」
「ここは100人弱は住んでいるのぅ。入り口から見たら、小さな村に見えるかもしれんが、中に入れば広く感じるだろう?」
村長の家に向かう途中で、様々な魔人から朗らかに声を掛けられた。人間と魔人の仲はとても悪いのだが、何故か、村人達にはその雰囲気は全くなかった。
おかしな状況の中、ようやく村長の家に着くとーーーー
「わぁっ、お姉さん達は外から来たの!? 外の世界はどんなの!?」
「あ、こら。初めての方にそんな口で話しては駄目だよ。すいませんでした」
「いや、構わないわ。で、貴方達は?」
「あ、すいません。俺は村長の息子でアルデと申します。最近に15歳になったばかりの若輩者ですが」
「私はイルマ! お兄ちゃんの歳より7つも下で8歳なの! ねーねー、話を聞かせてくれる!?」
2人は兄妹で村長の息子と娘のようだ。話を聞きたいとお願いされたが、先に村長へ挨拶が大切だ。それから、此処がどんな場所なのか、どうして迷いの森に村があるのか。疑問を解消させたら、イルマの相手をしてあげるのもいいだろう。
やはり、ここは魔人だけしか住んでいないみたいだな。
周りを見ても、誰彼も魔人で人間に敵意を持っているような人は全くいなかった。
「ようこそ、ここはグリム村です。わざわざ辺鄙な場所に来て頂きありがとうございます。私は村長のモルダと申します」
「いえ、わざわざ来たと言うより、迷い込んだが正しいて思います。私はこのパーティのリーダーをやっていて、リリアーナと申します」
「そうですか、何もない村ですがゆっくりして下さいね」
村長も人間に対して敵意を持っている様子ではなかった。もし、これが演技だったら女優も形無しだなと言える。
敵意を持っていないなら、1日だけ宿の世話になっては問題ないと思っていたらーーーー
「村長! またやられました!!」
「またかのぅ……」
「え、何があったのですか?」
いきなり扉が開かれたかと思えば、慌てた様子の村人が入ってきた。
「すいません、貴方達にも伝えた方がいいですね。実は、この村で殺人事件が起こっているのです。今回で12人でしたか?」
「い、いえ、母親と娘の2人でしたから、13人になります……」
「こりゃぁ、大量殺人じゃないか。何時から起こったのですか?」
「三ヶ月前からです。でも、なかなか捕まらないのです。この村はそんなに広くはなくて、隠れる場所も限られているのに、見つからないのです。その者の名はーーーージャック・リーパーと呼ばれています」
ジャック・リーパー、よく知っている名前だなと思うリリィだった。元の世界でのことだが、同じように大量殺人を起こした者の名だ。
「お兄ちゃん……、怖いよぅ」
「大丈夫だ。いつも一緒にいるからな。もし、俺がいなくても、このお守りがあるから、ジャック・リーパーは襲って来ないからな」
「う、うん……」
イルマの首に木で作られたネックレスがかかっていた。綺麗で精密な模様をしているが、魔力は全く感じない。そんなのがジャック・リーパーを寄せ付けないお守りになるとは思えなかった。リリィがお守りを見ていたことに気付いたアルデがニコッと笑っていた。
「これは良く出来ているでしょ? 俺が作ったんですよ」
「貴方が? 良く出来ていますね」
「だったら、一つやろうか?」
効果はともかく、綺麗に出来ているので一つぐらいは欲しいと思った。村長の息子が何故、そんな技術を持っているかわからないが、貰えるなら貰っておこうと思った。
「宜しければ、此処に泊まりますか?」
「え、いいんですか?」
「はい。アルデとイルマの相手をしてくれるとありがたいです。ジャック・リーパーのこともあるので、人数が沢山いるだけでも助かりますので」
「成る程。お願いがありますが、本があれば読ませて頂いてもいいでしょうか?」
「いいですよ。書斎に案内しましょう」
『リリィ、ワシは先に寝ているぞ』
デリカは何か気になることがあるようで、調べ物をしたいようだ。本があるなら、自分も読みたいが、アルデとイルマのことを頼まれたので、リリィ、ウルガ、イーナはアルデがアクセサリーを作っている小さな工房に向かうことに。因みにディガムは人間の姿になっており、麻痺がまだ残っているのか、先に休むと言ってきた。
「どうですか、此処が俺の工房です!!」
「へぇ、色々なアクセサリーがあるんだなぁ」
100も超える数のアクセサリーが壁に飾られていた。どれも珍しい形で綺麗に作られていた。
「俺はいつかアクセサリーの販売をしたいんだ。そして、誰かに使って貰えたら嬉しいんだ」
「成る程。これで魔法の効果が付いていれば、高く売れる筈よ」
「あー、残念だけど、俺に魔法を付けられるスキルを持ってないから、ただのアクセサリーなんだけど……、貰ってくれるか?」
「そうね、綺麗だから一つ貰って……あ、仲間達にもいいかしら?」
「ありがたい! さぁ、欲しいの選んでくれ。ついでに、外の世界でも付けて広告してくれると助かる」
「此処に来るの大変そうだけどね……」
霧の日にしか入れない村だけでも、大変なのに、その場所が迷いの森にあるのがキツい。村長の息子だから、村から出るのは禁止されていそうだから、広告して呼び込んで欲しいのはわかるけど。
「ま、まぁ、広告をするぐらいなら大丈夫でしょう」
「欲しければ、力に自信がある奴と一緒に行けばいいしな」
イーナとウルガは既に自分のアクセサリーを選び終わっており、イーナは指輪でウルガは腕輪だった。
私も選ぶことにしよう。うーん、戦いの邪魔にならない物がいいから…………ネックレスかな?
「……うん、此れを貰うわね」
リリィが選んだのは、鳥籠の中に綺麗な石が入っているネックレスだった。
「此れを選ぶなんて、目が高いねっ! 此れは俺の1番自信がある作品なのさ!」
「確かに、鳥籠が良く出来ているわね」
「そうでしょ、中にある石をよく見て?」
「うん?」
銀色に光る小さな石が入っており、よく見ると模様が入っていて、アルデが光を当てると、その模様が薄っらと光り出したのが見える。
「わぁ、綺麗ね。小さな石に模様を入れるなんて、普通に出来ることではないわ」
「俺は手先が器用だからね」
「そう、ありがとうね」
とても希少な石に見えるが、アルデがあげると言うから貰うことにする。ついでに、デリカとディガムの分も選んでおいた。
「そういえば、ジャック・リーパーのことだけど、三ヶ月前からだよね?」
「あぁ、三ヶ月前から死んで行く人が増えてきたんだ。武器は長い爪で斬られたような跡があったから、最初は魔物がやったと思ったが、それはあり得ない。此処は特別な霧に守られているから、魔物が入り込むことはない。だから、犯人は魔人なのは間違いない。人間は住んでいないしな」
「ふむ、長い爪が武器ね……」
映画とかも長い爪が武器だったが、此処もジャック・リーパー其の物みたいだった。
「今日はもう陽が落ちるから、家に戻ろう。ジャック・リーパーは殆どが夜に活動しているからな。さっきの母親と娘は珍しく昼にやられてしまったがな」
遅くなるとジャック・リーパーに出会ってしまうので、すぐ工房から家に戻った。リビングには既に飯の準備をしており、デリカが席に着いていた。
「調べ物は終わったか?」
「いえ、本が沢山あるので見つけるには1日は掛かりそうです」
「そうか、場合によってはあと1泊はお願いするかもな」
「構いませんよ。何泊でもしていいです。その代わりに、アルデとイルマのことを頼めると嬉しいです」
村長がリビングに入ってきて、そんなことを言ってきた。
村長は仕事があり、アルデとイルマに構ってやれないから代わりに遊んでくれるとありがたいと。
「そうですね、その時は宜しくお願いします」
デリカからの依頼もあるが、その本人が調べ物をしたいと言っているので、問題はないだろう。村長の奥様が作った食事を美味しく頂き、ゆっくりと過ごすのだったーーーー




