第28話 ドラゴン戦
本日1話目
デリカが泣き叫んだ日から、3日が経った。敵になるドラゴンの見回りが此処を通ることになる。
『準備はいいか?』
「準備は大丈夫かって。私はいつでも大丈夫よ」
「私もです」
デリカはもう立ち直っている。というより、自分だけの魔法があることに縋っているだけだが。
とにかく、闘えるなら問題はない。
『っ! 来るぞ!!』
「『氷獄魔召喚』、『魔装魔法』!」
「始めの一手は私からだったね。『乱砂鞭』!」
地面が割れて、奥から大量の砂が現れる。それが数本の巨大な砂の鞭になって、空を飛んでいた赤い竜に襲い掛かった。赤い竜は強者である自分を襲う者がいたことに驚いていた。だが、身体捌きで砂の鞭を躱してしまう。
『何者だ! 隠れてないで、出てくるが良い! 愚か者にはこの私の炎で焼き尽くしてやろうじゃないか!!』
『相変わらずだな。ファエル?』
『なっ、貴様は! まだ死んでいなかったのか!?』
『トドメを疎かにしたお前の失敗だったな』
『……ふん、今度は最後まで息の根を止めるまでは見てやろう。さぁーーーーがっ!?』
話している間に後ろから、リリィが闇魔法の『魔重爆』で不意打ちをしていた。だが、体力に減りがあっても全く効いているようには見えなかった。
『貴様ーーなにぃ、人間だと?』
「今だ!」
『馬鹿め! ワシに背中を見せるとはな!!』
『待てーー』
リリィは咄嗟に下へ退避した。上空は、ディガムが放った闇の息吹で黒く染められていた。その中から、痛みに呻く炎の竜が出てきた。
『ガァァァァァァ!! 貴様! 竜の誇りを忘れたか!?』
『竜同士の戦いは必ず一対一でやることか? はん、そんな誇りなどはとっくに埃と一緒に捨てたわい!!』
『なっ、恥知らずがっ!!』
お返しと言うように、ファエルが炎の息吹を吐き出そうとしていた。だが、その前にリリィが『氷牢』でファエルを閉じ込めて、更にデリカの『砂漠拘束』で中にいるファエルを拘束した。
『ぐぎぃ! な、舐めるなぁぁぁぁぁ!!』
硬く拘束しているのに、ファエルは大きく暴れて氷の牢屋までも破壊されようとしていた。だが、完全に破壊される前に、ディガムの『闇蝶』を沢山顕現させ、重量の嵐がファエルに襲う。
『ガァァァァァァッ!!』
リリィも追加と言うように、『闇蝶』を顕現した。数はディガムの半分しかないが、追い討ちには充分過ぎるだろう。
『恥知らずがッ! この程度でやれると思ったかッ!?』
まだ『闇蝶』が暴れ続けている中で、ファエルは両手に火剣を持って、拘束していた魔法ごと『闇蝶』を消し去ってしまった。なんという威力だと絶句していたら、炎の息吹をこっちへ吐き出そうとしていることに気付いた。
「っ、『乱砂ーー』」
「駄目! 防いでないで、逃げないと駄目よ!!」
リリィは先程の火剣から炎の息吹の威力がどれだけ高いか想像出来たため、無理矢理にデリカを連れて遠くへ逃げた。
燃えた。一瞬で、リリィとデリカがいた森が灰になって朽ちていった。もし、デリカが『乱砂鞭』で壁がわりにしても、やられていたに違いない。デリカはその威力に震えていた。
『貴様!』
『恥知らずがッ! 人間の力を借りて、戦おうなどは無駄な小細工でしかないわ!!』
ディガムが自分の爪や尻尾で接近戦を挑むが、ファエルの方が強いとわかる。アレだけの攻撃を受けたのに、まだ元気に見える。
接近戦で戦っていたディガムだったが、ファエルが火剣を顕現して、肩に突き刺していた。
『グガァァァッ!』
『この私に勝とうとする恥知らずはお前だけだったよ!!』
『ぐ、ガァァァァァァ!!』
『何を!?』
肩が深く突き刺さろうが、前に出て抱きついたことに驚いていた。
『リリィ!!』
「……ディガムの覚悟はわかったわ」
『さっきの! まだ生きていたか! だが、小さきの人間が何が出来る!?』
「全てを凍らせろーーーー『絶対零度』!」
『なっ!?』
ファエルはリリィが何を使ったかわかったが、もう遅かった。ファエルをディガムごと…………はならず、ファエルだけを完全に凍らせた状態になっていた。
「え、何が?」
『どうやら、制御は一緒に出来るようですね』
「もしかして、手伝ってくれた?」
『はい、ディガムはリリィ様の仲間なので、殺させるにはいかなかったので』
「……ありがとう」
魔力を沢山使ってしまったが、ファエルは完璧に凍っており、氷像と成り果てていた。
『よくやった……』
「大丈夫なの!?」
『あぁ、ゆっくり休めば完全に治ーーーーなっ!?』
「『絶対零度』の氷が!?」
頭の中に声が響いた。これは念話だとわかっているが、信じたくない思いだった。
ーーーー竜王の1体であるこの私を此処まで追い詰めるとはな。竜と人間よ、敬意を払い、私の真の姿を見せてやろう!!
氷が溶けてしまい、さっきまでの赤い竜が身体を燃やして、聖なる炎のように綺麗な炎を纏っていた。
『私は炎竜王のファエル。恥知らずと言え、この私を追い詰めた闇竜。更に、小さな人間ももはや『絶対零度』を使えるとは思ってなかったぞ。ーーだが、それだけだ! まず、この一撃を受けよ!!』
ファエルの身体が光り輝き、更に熱力が上がっていく。
ーー『炎神鳥』
不死鳥のように高熱の炎を纏い、ただ突進するだけの技だが、当たった瞬間に燃え散ってしまう。それ程の威力を持ったファエルが突っ込んでくる。その速さは避ける暇もない程だ。
此処までか。まさか、10歳で破滅が訪れるなんてーーーー
リリィはもう生きるの諦めたというように、突っ込んでくるファエルがゆっくりに見えていた。
だが、割り込んでくる黒いモノがあった。
『リリィは死なさせんぞ!!』
割り込んできたのは、ディガムだった。闇の力を全力で背中に集めて、リリィを懐に入れて守ろうとしていた。
「駄目よ! それでは、ディガムがーー」
『気にするな。元はワシが巻き込んだことだ。絶対に死なさせんーーーー!!』
本気でディガムは命を懸けてでも、リリィを守るつもりだ。ディガムは巻き込んだと言っているが、戦うと決めたのは自分だ。
どうすれば、ディガムも生き残れるか考える。その時間が短くても、考えるの止めないーーーー
『リリィ様! 私を解除して、オルクを装備して下さい! 早く!!』
「か、解除! 『小悪魔召喚』、『魔装魔法』ぅぅぅ!!」
『な、何が!?』
オルクの言葉が聞こえたが、今はそれどころではない。クレオスがリリィに指示を出したのだから、何か案があったのだと思う。
『リリィ様とディガムを死なさせませんよ! 『氷角冷山』、『絶対零度』!!』
クレオスはディガムの後ろに大きな氷を生み出し、『絶対零度』で更に強度を高めた。ファエルはその大きな氷に激突し、凄い勢いで溶かしながらディガムの背中に向かっていたが、さっきよりも炎の勢いが半分もなかった。
『これでいい……』
「クレオス!?」
『大丈夫です。死んでも、魔界に帰るだけですから』
クレオスは『絶対零度』で魔力が足りず、命を代わりに使ったため、死んでしまった。魔界に帰るだけだが、クレオスの頑張りを無駄にならないように、生き残ることだ。
『ーーーーッ!』
ディガムの背中に激突したが、威力は半減したので、燃やし尽くされずに吹き飛ばされてしまうだけで済んだ。
『な、生き残っただと……』
「ぐがはっ、どうだ……」
背中を打ったが、まだ生きているし、まだ立てる。炎竜王は先程の聖なる炎を纏っておらず、最初の赤い竜になっていた。
『あんなモノと戦っていたのかよ!お前は馬鹿なのか!?』
「煩いわよ……、魔力は……うん、まだある」
『まだやるつもりなのか!?』
「当たり前よ、相手も弱っているチャンスなのよ」
『……ちっ、逃げないつもりか。まぁ、お前が仲間を見捨てて逃げるタマじゃねぇか。仕方がねぇ、手伝ってやんよ!!』
「!? こ、これは……」
『これで、動けんだろ?』
クレオスが制御を手伝ったように、オルクはリリィの身体を支えるように、強化されていた。
『小さきの人間よ、まだやるつもりか?』
「皆がここまでやってくれたのに、私だけが逃げるつもりはないわ!! 『天雷』!」
『グッ! 人間にしてはなかなかの威力だが……、竜には足りないな!!』
『だったら、こうすりゃいい。おい、もう一回打て!!』
「『天雷』!」
先程の『天雷』は幾つかの雷が落ちる魔法だったが、オルクの魔力制御により、雷が太く一本の槍みたいに落ちていった。
『グオぉぉぉぉぉ!? な、雷が身体を貫いただと!?』
ファエルの腹が雷によって、貫かれて中身が焼けた臭いを出していた。
『お前の威力は高いんだから、いつか1人だけでも、力の集束が出来るようになりやがれ。今は手伝ってやるよ』
「あはっ、ありがとう……『天雷』」
『ッ! 何度も受けてやるかーーなっ!?』
ファエルの身体に大量の砂が絡み付いて、動けないように拘束されていた。その技はデリカが何処かで魔法を使っているようだ。
『胸の中心が弱点だ。そこを狙え』
「終わりよ、炎竜王。バイバイ」
一本の雷が炎竜王の胸中心を貫き、その生命活動に重要な臓器を破壊されて、ファエルは眼に光がなくなっていく。
『この私が、小さきの人間に……』
その言葉を最期に、長年炎竜王として降臨していた、竜王の1体が堕ちた。
「ははっ、やった……」
『ったく、これからは戦う相手を考えろよ』
「それは無理かも……」
『おいっ、先に解除しとけ! 寝るのはそれからにしとけよ!!』
「か、かい、じょ…」
リリィは心に充実感を感じた後に、疲れが襲ってきて意識が消えていったーーーー
まだ続きます。




