第1話 動き出す世界 2部
第1話 動き出す世界
第二部「真武蔵へ」
「で、どうするんですか?」
アイリが尋ねた。
ロシアの工作活動。
日本の最新鋭AI技術、そして発充電循環システムを狙う動き。
その報告を聞いてなお、真田幸貞は余裕の笑みを浮かべていた。
「まず、甲賀忍術潜団の指揮はBerryに任せる」
[了解しました、真田艦長]
Berryが即座に応じた。
「それから――」
真田は少し間を置いた。
「俺も、伊賀忍術潜団団長・上杉アイリ大佐の真武蔵に同艦させていただく!」
「……えっ?」
アイリは一瞬、言葉を失った。
「ほ、本当ですか?」
「ああ。本当だ」
「でも、南方方面はよろしいんですか?」
「心配ない」
真田は即答した。
「Berryには、最先端のあれを積んである」
「あれ……ですか?」
「ああ。万が一のときには、俺と直接同期することも可能だ」
真田はそれ以上、説明しなかった。
その新たな技術が何なのか。
まだ、アイリにも明かされていない。
「そうと決まれば、直ちに準備と配備を頼む!」
「もうっ! またすぐこれだから!」
アイリは呆れたように声を上げた。
「室長は……あっ、真田艦長は!」
「はっはっは!」
「まったく……。でも、こういう判断と行動力は真田さんにしかできませんね」
アイリの声が、少し柔らかくなった。
「私も、勉強になります」
「ん? 何言ってるんだ?」
「えっ?」
「勉強しに行くのは、俺の方だよ!」
真田は笑った。
「上杉艦長の下で、お世話になります!」
「……もう!」
アイリも、思わず笑ってしまった。
「分かりましたよ! しっかり面倒見てあげます!」
「頼もしいねぇ!」
そして真田は、もう一人の相棒に声をかけた。
「Queenも、よろしくな!」
[こちらこそ、真田艦長]
Queenが応じた。
[私も、一度ご一緒に行動したいと思っておりました]
「ほう?」
[真田艦長のお話は、これまでアイリからしか聞いておりませんので]
「はっはっは! そうか!」
[実際にどのような判断をなさるのか、間近で拝見できることを楽しみにしております]
「期待外れだったら悪いな!」
[その可能性も含めて、興味深いと考えております]
「おいおい、手厳しいな!」
通信の向こうで、アイリが笑った。
真田もまた、笑みを浮かべていた。
だが、その目はすでに次の作戦を見据えていた。
「よし。では、少し福原へ寄ってくる」
「福原ですか?」
「ああ。江口幕僚長に報告しておかなきゃならんからな」
新たな日本の中枢。
信旭幕府の首都、福原。
そこには、かつて幾多の死線を共に越えた男がいた。
「報告を済ませたら、横浜で落ち合おう!」
「了解しました、真田艦長!」
[真武蔵、受け入れ準備を開始します]
Queenの声が響いた。
通信が切れる。
真田は、静かに前を見据えた。
ロシアが動き、中国もまた機会をうかがっている。
しかし、真田が向かおうとしているのは、単なる敵の迎撃ではなかった。
敵の思惑を読み、その先へ回り込む。
それこそが、真田幸貞の戦い方だった。
そして今――
真田幸貞が、自ら真武蔵へ乗り込もうとしていた。
――第三部「RISING」につづく。




