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第1話 動き出す世界 1部

漆黒のEDGE Ⅱ RISING


New Edition


第1話 動き出す世界


第一部「北からの影」


――量子核融合潜水戦艦・真大和。


静寂に包まれた艦橋に、突然、通信が入った。


[真武蔵より入電。ロシア軍に不穏な動きを確認。甲賀忍術潜団への出動要請です]


真田幸貞は、ゆっくりと顔を上げた。


「ロシアか……。上杉につないでくれ」


[了解しました]


ほどなくして、通信がつながった。


「真田艦長。ロシア軍が再びカムチャッカ半島に集結しているとの情報を得ましたので、ご連絡した次第であります」


真武蔵艦長、上杉アイリ大佐。


その声は、いつになく堅苦しかった。


「おいおい、上杉。そうかしこまらないでくれよ」


真田は笑った。


「この通信は、お前と俺、それにQueenとBerryにしか理解できないようになってるんだからさ!」


「……それなら、言わせてもらいますけど!」


アイリの声色が変わった。


「少し前に理佐ちゃんから、ユッキーは私のものだ、みたいなことを言われたんですけど!」


「ん?」


「まさか……そういう関係になってないですよね?」


一瞬の沈黙。


そして――


「ぶっ! はっはっはっ!」


真田は思わず吹き出した。


「お前、それ本気で信じてるのか?」


「笑い事じゃありません!」


「理佐なりの配慮だよ。なんで俺が女同士の駆け引きまで説明しなきゃならないんだ!」


「あーっ! また私をバカにして!」


アイリの声が一段と大きくなる。


「確かに私は、愛情を伝えるのが下手ですけど……ちゃんと伝わってるはずです!」


「いや、俺には十分伝わってるよ」


真田は少しだけ声を和らげた。


「ただな、理佐からすれば、いつまでたっても俺との距離を縮めようとしないアイリが、歯がゆいんだろうよ」


「……っ!」


図星だった。


「あーっ、もう! ムカつく!」


「なんでそんなに女心が分かったようなこと言うんですか!」


「しかも、それが結構当たってるから余計にムカつくのよ! いつもいつも!」


「はっはっは! 悪い悪い!」


真田は笑いながら続けた。


「理佐を許してやってくれ。あれで結構、寂しがり屋なんだ」


「……寂しがり屋?」


「ああ。父親は生き返ったが、今じゃ国のトップだ。忙しくて、ゆっくり構ってもらう時間もない」


真田の声が、少し静かになった。


「俺は俺で、好き勝手に動き回ってるしな」


「……」


「それでも理佐は、まだ俺のことを親みたいに思ってくれてるんだろうよ」


アイリは小さく息をついた。


「……まったく」


そして、少し笑った。


「性格までよく似た親子になったわね!」


「そうか?」


「そうよ! もう、分かったわよ!」


そのときだった。


[……お二人とも、お話は終わりましたか?]


Queenだった。


どうやら、ずっと二人の会話を聞いていたらしい。


「おっと! 悪い、Queen!」


[では、本題に戻らせていただきます]


一転して、その声が鋭くなる。


[旧北朝鮮地域において、ロシアの工作員と思われる人型アンドロイドを確認しました]


「……アンドロイド?」


[はい。現地の反乱分子を秘密裏に募り、組織化を進めていた模様です]


[幸い、我が猿軍団がその動きを突き止め、計画を阻止しました]


真田の表情が変わった。


「ほう……」


[しかし、これは一件だけではありません]


Queenは続けた。


[最近、ロシアは自国AIの能力向上を急いでいるようです。それに伴い、各地で工作活動が著しく活発化しています]


「なるほどな」


[ただし――]


Queenが、わずかに間を置いた。


[これらは、発覚しても構わない表向きの工作活動である可能性が高いと考えられます]


「……ということは?」


[真の目的は、日本の最新鋭AI技術]


そして――


[最終開発段階にある、エレクトリックロータリーシステム――発充電循環システムの技術情報です]


艦橋に、短い沈黙が落ちた。


世界の勢力図を塗り替えかねない、日本の次世代エネルギー技術。


ロシアは、その核心に手を伸ばそうとしていた。


「……ふっ」


真田の口元が、ゆっくりとつり上がる。


「はっはっはっ!」


「真田艦長?」


アイリが問いかけた。


真田は、楽しそうに笑っていた。


「ロシアだけじゃない。北京も、アメリカの目を盗んでこそこそ動いてるらしいからな」


「……何を考えてるんですか?」


「決まってるだろ」


真田は不敵に笑った。


「では――こちらも仕掛けてみるか!」


ロシアが動いた。


中国もまた、水面下で動き始めている。


だが、彼らはまだ知らなかった。


真田幸貞が、すでに次の一手を考え始めていることを。


――第二部「真武蔵へ」につづく。

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