表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代幽荘物語  作者: かずや
過去から未来へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
91/96

年越して年明けたら神様

 夏の終わり、幽荘を離れた縁は勉学に打ち込んだ。

 ただ、関わりを遮断した訳ではない。

 定期的に幽荘の皆とは連絡が取れている。

 スマホ一つで顔を見ながら話せる時代だ、両親は軽い驚きをしていたが時代は変わって行くものと受け入れている。

「まあでも狐音さんはテレビや冷蔵庫普及し出した時代に先取りで手に入れてたもんな」

 父、隆二は回想する。

 狐音だからこそ時代の最先端、中心になる物には敏感なのだろう。

 不思議と金持ちでもあるし。

 それでも幽荘が懐かしくなる頃、季節は秋を過ぎて冬になりクリスマスの月に入っていた。

 縁は時の流れの速さに呟く。

「もう三ヶ月近く経つのか……あっちは山だし雪とか降るのかな」

 近年の異常気象と呼ばれる暑さにイメージが湧かない。

 母、里子は「よく雪合戦してたわね、雪は天からの遊び道具だったわ」と教えられる。

「今の時期、温泉気持ち良さそうだな」

「何?温泉稼働出来たのか?」

「父さん達の時は無かったの?」

「ああ、なんか湧き出たけど工事まではしてなかったな」

 幽荘の温泉は意外と最近の物らしい、調理場もそうだ。なのに本体の幽荘はボロっちい。

「ん〜私達が居た時は改装したてで村で一番綺麗な建物だったんだけどねぇ……四十年、あっという間だったけど長い時だったのね〜歳も取るわね」

 母はため息を吐いた。

「……それが普通なんだよ、人間は」

 ボソッと縁は言う、三ヶ月にも満たない幽荘の人外達との日々が異端であり、人間である事を強く思わせていた。

 縁はその人間の短い一瞬、人間社会の選択をする為に勉強を追い込む。

 クリスマスは無いようなものだが惜しくも無い、年明けの近年で仕様が変わった年明けの共通テストに向けて準備を進めた。


「縁、行こうか」

 勉強漬けの年末、流石に籠りすぎていたようでクリスマスは過去になり年が明けた時、父に肩を叩かれ気が付いた。

「ん?あれ?年明けたのか?」

「全く、頑張るのは良いが……いや、がむしゃらに集中する癖は俺達の遺伝か……」

 両親は若くして生きる為だったので同列には出来ないと思ったが、傾向としてはあるのかもしれない。

 縁は目標を定めていた。


 両親に連れられいつ振りかの外出、目指すは近所にある神社。

 初詣の参拝客で夜中から賑わいを見せる。

「……ここにも狐音さんみたいな神がいるのかな」

「どうだろうな、あの人は土地神とされていたが神社とかある訳じゃ無いしな」

 狐音は「儂は昔から居ただけ」と言っていた。

 正直神様の種類や立ち位置がわからない。

 しかし、確実に人間とは違い長くを見てきている。

 人に興味を持ち、寄り添う妖狐。

「ほんと、改めて考えると不思議な方だな。普段飲んだくれてるし」

「縁ちゃん、隆二さんあそこ甘酒配ってるわよ。」

 母が指す場所に人が並んでいる。

 新年のお祝いの甘酒だ。

 (皆も祝ってるのかな……)

 縁達も甘酒の列に並んだ。

 

「ふーっ、久しぶりに歩いた気がする」

「縁ちゃんずっと部屋に居たもんね、ご飯ですら呼ばないと来ないんだから」

「……ごめんよ、どうしてもあと少しってなるから」

「まあ、悔いなくやれば良い。……今回で最後にするんだろ?」

 父は言う、最後とは受験挑戦を指している。

 流石に三浪目は出来ないと、あらかじめ話していたのだ。

「ああ、ダメなら就職活動だな……幽荘管理人は職歴に書けるかなぁ」

「あそこは非合法だから間違いなく無理だな、そもそも人の法どころか力が及ばないぞ」

 父の言うのはごもっとも。


「俺、少し神社見て帰るよ」

 縁は両親と別れぶらりと神社を散歩する。

 参拝客が集まる通り道は賑わいを見せるが裏手は神社らしい静けさだ。

 あまり立ち入らない方が良いだろうと、縁は引き換えそうとした背に声がした。


「貴方、何者?」

 振り向くと若い女性が立っていた、着物を着てどこか神聖なオーラを纏い。

 縁は瞬間的に悟った。

 (この人、人じゃない)

 狐音達と過ごした日々で感じた今は懐かしい感覚だった。

 女性は縁を見ながら聞いてきた。

「妖狐の気を感じる、でも貴方は人間?私が視えてる。何者なの?」

 視えてると言う事は、普通には視えない存在なのだろう、不審がられているのは重々感じるので説明する。

「あ、すいません……えっと訳あって妖狐の方達と交流があるもので……妖狐の気?は多分これです」

 縁は首元からチェーンに繋いだペンダントを取り見せた。

 初代幽荘管理人のタカから託されたペンダント、肌身離さず着けている。

 持っていると落ち着き、不思議と体調の良さをキープ出来るのだ。

「……妖狐の尾、信じられない。そんな物を持つ人間……しかも、交流があるですって?」

「色々あってなんですが……はい」

 あまりにも信じられない顔をされるので、まずかったかと不安になる。

 女性は縁の目を見て考えている。

 (なんだろう、凄い見通されてる気分)

 一通り見られた後、女性は口を開く。

「ふーん、妖狐だけじゃ無いわね……猫、蛇、山、家……あんた人間ではあり得ない力に包まれたのね」

「まあ……否定は出来ないです」

 やはり何か特別な存在なんだろう、幽荘に形作る力の源を見透かした。

「あの、貴女は?」

「……そうね、視えてるし教えときましょうか」

 女性は姿勢を正して縁を真っ直ぐに見た。

 

「私は貴方達の呼び方なら土地神と呼ばれ、この神社の神木に宿るこの地域の木の神よ」


 予想はしたがはっきり述べられると緊張が出てくる。

「やはりそっち側の方なんですね……」

「何百年ぶりかしら、人が私を認識出来たのは」

 口ぶり的に幽荘の住人とは違い、人と交流をしている様子は無い。

「年明けで毎年人で騒がしくなるのよ、普段祈りもしないのにね」

 賑わう参拝客の方を見て呟く、あまり良い印象があるような話し方では無い。

「ま、人間を好きでも嫌いでも無いけど貴方は面白いかもね。話を聞かせなさい」

 割と自分勝手さもある、だが危害は無さそうで縁は安心する。

「話……ですか」

「そうよ、貴方が出会った神と場所について話しなさい」

 強引に進められる感じがツンツンギャルのヘビメに似ている。縁は何だか久しぶりだなと言った感覚で話相手になった。


「——と言う訳で幽荘の管理人をしてました」

 縁は掻い摘んで夏の期間の事を土地神に話した。

「……信じられないけど、嘘は言ってないようね。そんな場所があったなんて」

 土地神の女は溜息を吐いた。


「愚かね」


 一言、そう添えて。

「……愚かとは?」

 堪らず縁は聞き返す、僅かな間で育んだ者達を馬鹿にされた気がしたからだ。

「言葉通りよ、そこの神も貴方も」

 縁はあっさり返してきた土地神に言葉が出ない、何故なのかを聞く前に顔を見たからだ。

 その顔と目はあまりにも()()だったからだ、何か私怨がある訳でも無いただただ土地神からした感想を言われただけ。

「貴方達は神と人の差がわかっているの?」

「……ええ、命の差があります」

「そう、いくら交流を持っても……いえ、持てば持つほど無意味な時間になるじゃない」

 縁は土地神の目から本気でそう感じているんだと悟った、悪意が全く感じられない。

 だが、幽荘の住人達は人が繋ぐ事の想いを理解して尊重している。それを軽く見られるのは嫌だった。

「土地神様、僕が出会った神は人間を知って共存しています。確かに僕らは先に死ぬ、でも間違いなく過ごした記憶は消えない!」

 少し声が荒ぶる、しかし言わずにはいられない。

 土地神は縁を見つめ、笑った。


「あはは、やっぱりわかんないわ」

 土地神は天を仰ぐ。

「悪い気にさせたようでごめんね、でもね私達にとってその交流は余りにも不可思議な事なの。話を聞いてわかるかと思ったけどね」

 縁は静かに聞き感情を整理をした。

 おそらく抱く感情と思考が違うのだろう、狐音を始め幽荘に住む者は人間に取っては長い時間関わりを持っている。

 神の身からすれば一瞬の気にも留めない時間の流れであり、物凄くニッチな分野に興味を持った集団にしか見えないのかもしれない。

「さっきも言ったけど人は好きでも嫌いでもないよ、ただ風景の一部なの」

「風景……」

「これは貴方にとっては気に掛かるかもだけど、私達側からすれば何ももたらさないもの」

 そして土地神は続けて言った。

「あそこの参拝客は今、誰に何を願ってる?」

 縁は指された参拝所を見る。

「神様に学業とか健康とか……」

「そうね、実際は自分でなんとかするもんだけど。悪いけど私は土地神ながら誰一人として願いを叶えた事無いわよ」

「え?」

「だって自分の事ばかりじゃない、こっちに利もないのにどうして人だけを救うの?」

 縁は黙った。

 確かに都合の良いタイミングで、己の事だけを祈る神頼みと言うやつだ。

 お賽銭が神に手渡しされるわけでもなく、人に関わらないなら別に必要でも無い。

「貴方達は私から見たら凄い特殊な事に驚いただけよ……でも、面白いとは思ったわ」

「面白い……ですか?」

「ええ、素直に愚かとは出たけど百年くらいの事なんでしょ?たかがそれぐらいしか無い時間で成果は見えないわ」

 たかが百年と評す感覚がもう違うのだ。

 縁は少し人の小ささを思い知る。

「貴方、性と名は?」

「え……紬 縁(つむぎ えにし)です」

「紬 縁ね……五百年くらいしたら結果を聞かせてよ」

 土地神はとんでもない事を言い出した。

「いや、僕確実に死んでますよ……」

「だからよ、貴方達の繋ごうとする絆なら五百年くらい後でも残せて聞かせてくれる事は出来るでしょ?」

「残す……」

「約束よ紬 縁さん」

 土地神の戯れなのか興味本位か、縁には想像が付かない未来の約束をさせられた。

 話は終わりだと言わんばかりに土地神は立ち上がって暗闇に消えようとした。

「あの!……貴女のお名前は?」

「え……?神にそんなのある訳ないじゃない」

 何を言ってるんだと小馬鹿にする顔で微笑み……土地神は暗闇に溶けた。


「なんか……俺、本当に神様に会ったんだなぁ……」

 緊張が解けてへたり込む、実際幽荘で神と毎日過ごした。しかし、今日の土地神考え方があっち側では普通なんだろう。

 改めて、幽荘は特別で凄い所なんだと縁は思い直した。


「ただいま……」

「おかえり、遅かったな」

「あら?縁ちゃん疲れてない?」

「ああ……久しぶりに歩いたからだよ、もう寝るわ」

 両親にまた神に会ったとも言えまいと、縁は年の始まりから疲れ眠った……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ