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現代幽荘物語  作者: かずや
過去から未来へ

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過去の話①

 盆の始まりに幽荘を挙げて執り行われた鎮魂祭から、早くも一週間が経った。

 その間は静かに流れ、トラブルも無く気付けば八月の終わりが見えていた。


「……っし、こんなとこかな」

 縁は荷造りをしていた、衣服や勉強の参考書。

「……お主、本当に出るのじゃな」

「狐音さん……深刻そうな芝居しないで下さい。一週間実家帰るだけでしょ……」


 縁は盆に帰らなかった分、ずらして実家に帰るだけだった。

 荷物が多く見えるのも、単純に夏物服と秋物服を入れ替える為に出来るだけ詰めているのだ。

「全く……僕居ないからって毎日飲みすぎないで下さいよ?」

「わかっとるわかっとる、しかし暇になるのう。儂もどっか出掛けてみようかの」

 割と毎日暇そうにしてるから変わらないのでは?

 と、縁は思ったが言わないでおく。

「まあとにかく、隆二と里子によろしくな。どうせ色々聞くつもりじゃろう?」

 幽荘に派遣される形で縁は家を追い出され、そしてこの夏色々な体験をした。

 それは現代では考えられない不思議な事も。

 二十歳のニート(浪人、受験の意思有り)を両親がついに叩き出したのかと、始まりはそう思っていた。

 しかし、はっきりとした目的は見えないが何かの意図があるように今は感じる。

 縁を幽荘の、特に狐音とその住人に出会わせた目的があるはず。それを聞かねばならない。

「まあ、親父達も幽荘と幽導村に何か思う事があるんでしょう。嘘吐いてまで出身を息子に隠してるぐらいだし。」

「うむ、これは儂から言える事じゃないからの。気を付けてな」

「はい、じゃ行ってきます」

 縁はスニーカーの紐を締め荷物を持ち外に出た。

「お兄ちゃんー」

 下から声がする、見ればネコメ、ユウメ、ヘビメ、スズメと皆揃って見送りに出ている。

「いや、最後の別れみたいな……俺、実家にちょっと帰るだけだぞ?」

 苦笑しながら皆に挨拶をして軽トラに乗り込む。

 (三時間くらいかかるんだよなぁ)

 縁は総出の見送りに笑いながら、帰り道の運転に辟易しながら車を動かした。


 幽荘を出て景色が変わっていく、山の中から街に入り高速に乗って都会の風景と。

 土の香りが薄くなりアスファルトの熱と色が久しい。

 自然に囲まれていた一夏、街に出る事はあったが頻繁にでは無い。

 幽荘に来る時は真逆の移り変わりに不安があった、しかし今は自然からコンクリの都会に向かう事に不安感がある。

 環境とは馴染む程に一部となる。

 縁は少し不思議な感覚でいた。


 高速のサービスエリアに寄り休憩を挟む、サービスエリア公共の液晶が有りニュースが流れている。

 世界初の細胞発見!医療分野に革新!日本人初のスポーツタイトル受賞!続く異常気象に注意!

 僅か数分で様々な情報が脳に押し寄せてくる、まるで時間が早まったような気がする。

 (時間が早まったのか、ゆっくりな世界に居たのか)

 どちらにも取れる感覚を縁は感じながら休憩を終え、軽トラに戻った。


 高速を降り見知った土地まで帰ってきた、数ヶ月ぶりでも変わらないかと思いきや変化はある。

 角にあった本屋は潰れて更地に、道途中にあったコンビニがピザ屋へ、いつの間にか時間貸しパーキングになっている何かの跡地。

 夏の始まりに地元を出て、夏の終わりに帰る。

 それだけの短い時間で変化が多い。

 幽荘に居たから備わったのか、縁は自身の感覚がうるさい程に冴えてるのを感じる。

「山の風と土の匂いだったもんな……」


 少しばかり長い運転の終わり、縁は実家へと帰ってきた。

 軽トラを停め、庭先の飼い犬を撫で撫でしてから荷物を抱えて家に入る。

「ただいま」

 軽トラの音に反応して両親はスタンバイしていた

 二人して大きな声で「おかえり!」と、待っていたと言わんばかりにテンションが高い。

「なんでそんな元気なんだよ……ただいま」


「うん、縁よく帰ったな。……色々聞きたい事はあるだろうが荷物置いてこいよ」

「まー身体がっしりして日焼けしてカッコよくなったんじゃない?」

 両親があれやこれや騒がしい、昔からバタバタしてる印象の二人だ。

 

「縁」

 父が名を呼ぶ。

「ん?」

「大きくなったな」

「……まあな」

「荷物置いたら早速話そう」

「ああ」

 縁は二階の自室に荷物を置きに行った。


 縁の父隆二(りゅうじ)と母里子(さとこ)はリビングで話すスペースを整えていた。

 縁が小さな頃から、大事な話をする時は場が準備される。

 テーブルに茶とお菓子が出て、準備が出来たらスタートだ。

「さて……なーにから聞くか……」

 今回、色々隠してわからないまま幽荘に放り込まれた縁だ。場の格で言えば上になるだろう。

「じゃあ温まるまで俺から聞かせてもらおうかな、狐音ねーちゃんは元気だったか?」

「ああ、おそらく父さん達の頃から変わってないだろうな、その変わらない理由も知ったさ」

「そうよねぇ、ユウメさんやスズメさんは?」

「二人も同じさ、あぁ二人共ジャノメさんリュウメさんと幼馴染なんだって?四人で遊んでたらしいじゃん」

 息子に自分達の子供の頃を、知られて明らかに恥ずかしさを見せる両親に笑う。

「ぐぬ、まさかアイツらまで会うとは……元気だったか?」

「ジャノメさんは親方として、リュウメさんは孤児院院長として、俺から見てだけど凄い方々だよ」

「ジャノ、リュウ……夢叶えたんだね……」

 里子は涙ぐんでいる。

 隆二は更に聞いてくる「狐子とタカは?」と。

「もちろん会ったさ、そして色々教わったし鎮魂祭も済ませた」

「何?鎮魂祭まで出れたのかお前!!」

 隆二はオーバーに驚く。

「あれは幽荘で一番大事な儀式、縁よ認められたんだな……」

 隆二まで涙目だ。

 (参ったな、俺が聞ける流れじゃねぇ)

 縁は両親の反応に押されているが、一番の肝を捩じ込んだ。


「父さん、母さん、何故俺を幽荘に送ったんだい?」


 二人はピタリと止まる、あわよくば後回しにしようかとしてたのかもしれないが逃さない。

「……強くなったな縁は」

「ねぇ本当、隆二さんに似たのかしら」

「ははは、里子の教育のおかげだよ」

「まあ……照れちゃうわ〜」


「いや、惚気てないで答えろよ……」

 違う世界に入りやすい両親を引き摺り出し、前を向かせた。

「……ふっ、お前を送った理由の前に聞いとかなきゃいけないんじゃないか?」

「……そうだな、父さん達は何故駆け落ちして出身まで偽っていたんだ」

 両親が小さな頃から過ごした幽導村から駆け落ちした事、これが始まりだと思ってはいた。

 それが無ければ、縁は生まれから幽導村の民だったはず。

 

「少し長くなるが聞いてくれ、縁——」

 父は表情を変え静かに語り出した……


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