皆とのお話①
狐音と語らい一夜明け。
縁は朝から幽荘前で軽いストレッチをしながら考えていた。幽荘と住人の事が知れた夜、狐音が見て経験してきた歴史。
とても軽いものでは無かった。
現実の歴史に非現実な存在が混じり合う幽荘、今そこの管理人をしている。縁はプレッシャーも感じている。
狐音の想いと今を繋いだ関わりある人々が、より近くに感じるのだ。
「肩の力を抜いてくださいませ、管理人さん」
後頭部の側から声がする。
二階から見ていたのであろうユウメが微笑んでいる。
「ユウメさん、おはようございます」
「うふふ、ねえ管理人さん?お散歩しましょ!」
二階から降りて挨拶もそこそこにユウメは腕を組み、散歩をせがむ。
「わ、わかりましたから離して……」
「あら、お嫌いですか?」
「いや、その、当たってますから」
「私は気にしませんことよ〜さあお散歩行きましょう〜」
強引にユウメが引っ張るので大人しく受け入れる事にした。
「ユウメさん……あなたは神様?なんですか?」
昨夜に狐音から聞いた事をそのまま投げた。
「……そうですね、正確には幽荘の神であり狐音姐さんの使徒と言ったところですわね」
「ハーフって言うのはそう言う意味だったんですね」
「そうです、幽荘の素材はフランスから取り寄せた資材で。だから狐音姐さんと合わせてハーフとなりますの」
縁は合点がいった、幽荘に来た初期にフランスと日本のハーフだと自己紹介されていたのだ。
間違いではない、何も人のハーフとは言ってなかったのだから。
「私は幽荘を司る身として生まれ、見てきましたからね、その最中管理人さんを驚かしちゃいましたけど……」
「引っ越した日に見えた顔や、時折見えた目で見てたんですね」
「あら、受け入れてましたか。申し訳ありません驚かして」
あの時は倒れたり気絶するほど驚いた、だが縁がどんな人物かを見定めていたのだろう。
「ユウメさんも人が悪い」
「えへへ、ごめんなさい〜。でも素敵でしたわよ管理人さんとして成長するお姿」
この様子なら気付かない所で定期的に見られていたのだろう、少し恥ずかしさが込み上げる。
ユウメは差し掛かった小川に足を付け言う。
「私は幽荘そのものであるからこそ皆を気に掛けて居ました、お仕事は狐音姐さんの指示で狐子ちゃんより更に外を見る使命を負っています」
「更に外……?」
「海外ですね、私は何処にいても幽荘の事は把握出来ます。言わば身体の一部ですから」
「それがユウメさんの力になるんですね」
狐音の生み出した狐子は国内を、ユウメは海外を見て世の中の流れを掴んでいるんだろう。
「私は今の幽荘始まりの一人として誇らしいと思っています、時代が変わって変化が起きた。子供達は歴史を深く知らずとも前を向いていける時代なのですから」
これまでに関わった人の中で色々あったのだろう、それでも今平和の中で夢や目標を持つ若者がいる。
人一倍孤児に対する想いが深いユウメも前を向いたのか、表情はさっぱりしている。
「皆様と是非お話して下さい、いまの管理人さん……縁さんなら大丈夫」
そう言って笑い、川から上がり幽荘へと帰っていった。
ふと横を見ればスズメの菜園がある、丁度手入れを行なっているのが見え近くに行く。
「あら?おはようございます縁さん、昨夜はお疲れ様でした。頭パンクしてませんか?」
口ぶり的に狐音との話を聞いていたのだろう、流れでスズメにもストレートにぶつけてみた。
「スズメさんは神様なんですね」
「……うふふ、とは言え何も力はありませんよ」
自然と鳥を司る神、スズメ。
少なくとも六十年近く前の先代管理人に仕込まれた技術で生活をしている、見た目の変化も無いのだろう。
「私が自然の神だから特別に何かされた事はありません、自然はそこにある風景ですからね」
「タカさんもその様子じゃ人間視点での教えをしただけって感じですね」
「正解です〜タカさんが管理人としとて幽荘を軸に、人と神を初めに繋いだのです」
幽荘本格的な始まりはタカとスズメの関係からだった、縁から見れば一番の見本だろう。
師弟関係のように今でも慕われ可愛がられ、素晴らしいと思える。
「縁さん、皆共お話してあげて下さい。昨夜の事で話したくなった事あるでしょう?」
「……ええ、ありがとうございます」
「ちなみに、私は縁さんに対して信頼をしています。ありがとうございます来てくれて」
ニコリと笑うスズメが可愛い、少し照れながら縁は菜園を後にした。




