鎮魂祭の終わり
タカとスズメが作った料理は多種多様で、若干祭事寄りのメニューであったが堪能した。
「さすがスズメさんの師匠、美味い……」
縁はタカの作ったと言う、山菜の天ぷらを煮浸しにした一品に舌鼓を打つ。
「ほっほ、狩りは出来んようになった分料理は負けんよ」
「この味……まだまだ追いつけませんね」
スズメが少し悔しそうにしている、料理にこだわる姿勢はタカの背中を追いかけているのからかも知れない。
「美味しいね」
「うん!すっごい美味しい!」
「あらあらトラちゃん野菜は苦手なはずなのにねぇ?」
「だって美味しいもん!」
「トラメ君好き嫌いしちゃダメだよ」
ネコメとトラメを見守るリュウメの顔が優しい。
「ネコメちゃんも元気そうで良かったわ、トラちゃんと仲良くしてくれてありがとうね」
「リュウメ院長も孤児院の皆も元気?」
「元気元気!ね?トラちゃん?」
「皆で遊んでるよ!」
幽導孤児院出身のネコメからすれば、慕う院長と後輩達だ。
口数少ない大人しいネコメが今日は少しお喋りになっている。
「パパ、勝てないから辞めときなさい」
「ジャノメ次コレにしようやー」
こっちはこっちで狐子とジャノメの飲み比べ対決が始まっている……
「全く、パパお酒強い方だけど狐子に勝てる訳無いじゃない」
ヘビメはもう知らんと言った顔で料理を食べ始めた。
「あれ?ジャノメさん……車じゃないの?」
狐子は縁が送るがジャノメは自分で来ている、めちゃくちゃに呑んでるがどうするつもりなんだと不安なところでヘビメが言う。
「寮の職人呼んでるから大丈夫よ、今お盆よ?本当人使い荒いわ」
呆れ返って物も言えないヘビメは小さく溜息を吐いた。
「職人さん寮住まいなんだ」
「パパが持つ職人寮よ、幽荘みたいなもんね」
初耳だった、寮まで管理しているとは人は見かけによらない。
「孤児院からの受け入れもしてるのよ、どちらかと言うとそこがメインね。リュウメ院長と連携取って独り立ちしたいけど、行く当ての無い成人になってしまった子を仕事と寮で迎えてるのよ。」
(そんな仕組みを作っていたのか……)
娘のヘビメにデロ甘だが、凄腕職人を束ねる親方としてプロの姿も見せるジャノメ。やはり幽導村に生まれ考えるモノがあるのだろうか。
「うぅ……」
「あ、負けたわ。だから言ったのに」
やれやれと水を持ちジャノメに渡すヘビメ、ツンツンしてても父が好きなんだろうと感じられる。
「今度はおにーさんが相手になるかい?」
「いや、絶対無理です」
勝者の狐子にターゲットにされる、自分のだけ水じゃないのかと疑うレベルで顔色が変わらない。
陽気に騒ぐ所作や口調、双子と言えど狐音と少し違う。しかし、顔立ちは本当にそっくりで髪型を合わせて黙れば全く分からないだろう。
「ん?なんやジーッと見つめて?」
「あ、いや狐音さんと本当そっくりだなって」
「まあ顔は似てるが中身は別モンよ!あんな儀式の長なんか出来ん出来ん!」
「何か凄かったですもんね、狐音さんが光るような……」
「光ったように見えたんか?」
「え?はい、その後皆に分けるように……そう見えましたね」
「ほーう……なるほど、おにーさん良い眼を持ってるよ」
良い眼とは?何か含みのあるまま酒瓶片手に行ってしまった……
鎮魂祭の会場全体を見るとお酒を飲めない、または制限出来る組は非常に落ち着いて楽しむ様子だ。
対してお酒組はまあまあ出来上がっている、そんなお酒組が狐音に集まりだしている。お酒の制限が出来る大人も行っているし、子供組はユウメからジュースを渡されている。
狐音と目が合い手招きされる、他の皆は注がれた飲み物を持ったまま最後の縁を待つ。
「今日の鎮魂の儀で捧げた御神酒じゃ、合図で一口付けい。この後車じゃからのフリで良い」
狐音が説明してくれる、と言う事は終わりが近いと言う事だ。
「皆、御神酒は持ったかの?」
静かに皆掲げる。
「では……この地に眠る魂に慰霊を」
そう言って狐子はお猪口の御神酒を飲み干す、繋ぐように各々同じ事をしていく。
縁は飲む振りだけだが唇に触れた酒の香りが良い、お香のような安堵感がある。
皆最後にそれぞれの想いを静かに馳せている、さっきまでの盛り上がりが嘘みたいに静かだ。
風の音だけが聞こえる、顔を上げると皆スッキリした顔や泣いている者等様々伺える。
「皆、ありがとうの。これにて鎮魂祭は終了じゃ」
各所に設置した精霊柱が消えていく、中の蝋燭が尽きたのか訪れていた精霊が去ったのか。
祭りは終わりを迎えた。




