資格
「よーし、トラメ君行くよ?」
「うん!院長!皆!行って来るね!」
「トラ、邪魔しちゃだめだからね?」
孤児院の皆に見送られ、行きより増えた人と荷物を乗せて幽荘に向かう。
「にいちゃん、幽荘ってどんなとこ?」
「どんなとこ……山の中だな、温泉があるよ」
「孤児院より人居ないの?」
「トラメ君、もしかして孤児院出るの初めて?」
「うん……だからちょっと怖い」
孤児院で皆と過ごすのは、裏返せば独りにはならないと言う事だ。それこそ一日中誰かが居るし一般家庭とは違ってくる、孤独感はあるかもしれないと縁は思った。
「大丈夫さ、一日だけだし俺も居るし幽荘の皆も居る。ユウメさんは知ってるよな?じゃああのお姉ちゃんは——」
緊張を和らげる為に色々話してあげていると、本来の元気なトラメであろう表情になる。
(そういえばユウメさんが、いつかトラメ君は幽荘に来るかもと言っていた。資格?素質?があるようだが、もうすぐわかるな)
孤児院を出て約一時間、山を越えていつもの幽荘が見えてきた。
「あれ?狐音さんとユウメさんだ」
「あ、ほんとうだ!ユウメ姉ちゃんー!」
車を停め、二人車より降り立つ……ゆっくり狐音とユウメが寄って来た。
「おかえりなさい〜トラちゃんしばらくぶりね〜」
「ふむ、お主少し大きくなったが生意気そうなところは変わらんの」
「狐音姉ちゃん、ユウメ姉ちゃんお久しぶりです!」
少し緊張があるトラメだが見知った顔で安心しただろう。
「さて、早速じゃがトラメよ……何が見える?」
狐音は少し身体をずらしてトラメの前方を開けた、何があると言われても古いアパートしか無い。それ以外何も無い田舎と言うより山の中だが……
ユウメも固唾を飲み答えを待ってるようだ。
「汚い建物しか見えないよ」
子供は正直だ、ストレートに表現してくれる。
(俺、結構毎日掃除してるんだけどなぁ)
管理人としてダメの烙印をおされた気がする。
すると狐音とユウメが一斉に笑い出した。
「ホッホッホ!汚い建物か!……縁、良かったの」
「うふふ、前に言った通りになりましたわ管理人さん」
縁は一瞬キョトンとしたが、すぐに理解した。
「じゃあトラメ君は……」
「資格を持つ者じゃ、今日から準備手伝ってもらうぞトラメ?」
「はい!狐音姉ちゃん!」
心配していた事は払拭され、明日の鎮魂祭にトラメも参加決定だ。
狐音がスマホを出し連絡をしている、おそらくリュウメだろう。ユウメが車を漁り荷物を出してくれている。
「管理人さーんトラちゃーん、この箱全部ですかぁ?」
早速手伝いだとトラメの背を押して、物持ちをする。
まだ幼いが同じ男が嬉しい縁だった。




