ガソスタでのお話
念の為ビルの管理会社に軽トラを置いていって良いか許可を取り、フェラーリに乗り換え有人ガソリンスタンドを探しに出る。
運転は……ユウメだ。
「スタンドまでですけど、私のドライブテクニックお見せしますわよ」
「……お手柔らかに」
不安だらけだが、今日酒は飲んでいないのが救いだ。
「行きますわよ〜」
ブォン!……ブルルル!
縁の予想に反してスムーズに運転するユウメ、なんなら車と相乗効果で美しくカッコ良さが増している。
地下駐車場を出て街中のスタンドを探す、検索で出るのはセルフばかりだが一軒見つかり向かう事に。
街と言ってもやっぱり田舎寄りの街並みで景観的には軽トラが似合う、幽荘が山の中過ぎるがこのフェラーリは未来から来た車かと浮くだろうな。
そんな事を考えながらユウメの運転に身を任す、悔しいが軽トラとは乗り心地が雲泥の差だ。
スピードが出せる車だが、道で出せるスピードは法律で決まっている。ちゃんと理解しているユウメの運転は軽やかで美しい。
「ユウメさん、その意外と言うか運転上手いですよね?」
「あら!ありがとうございます〜普段運転はしませんもので見よう見まねですわよ」
「見よう見まね……?」
「ええ、お仕事で運転手さん付く時はよく見てますの〜」
「ユウメさん、モデルとしてかなりランク高いんですか……?」
「人様から見れば評価で待遇の変わる世界ですね〜私は出るだけなので、凄いのはスタッフの皆様ですよ〜」
普段のユウメに慣れてしまったが仕事のユウメは格が違う、サラッとそれも本気で自分が偉いとかは思ってないだろうトーンで話す。
そんなオーラ有るユウメの運転はナビに指定されたスタンドに到着し終わりを迎えた。
「オーライオーライ!……いらっしゃいませ!今日は給油で?」
「給油と諸々のチェック、それとこの子をお風呂に入れて上げてくださいませ〜」
ユウメが店員に注文をする、店員はあまりの美人と見かけ無いフェラーリにテンションが上がっている。
「か、かしこまりました!!ささっ店内でお待ち下さい!おい!皆集まれ!」
手空きの店員まで集合して要人警護のように車とユウメを囲んでいる。
「……いや、俺も居るが」
何故か取り残された縁もとぼとぼついて行く。
スタンド内の待合室で座りコーヒーを飲みながら、縁は鎮魂祭について聞く事にした。
「ユウメさん、鎮魂祭って結局なんなんですか?何するんですか?」
「そうですわね、まずは地域で亡くなった方々への慰霊が全般の目的ですわね。そして主な慰霊の目的もございます。」
「主な慰霊?」
「はい、幽導村の子供に対する特性は以前お話しましたよね?」
前にユウメの孤児院ファッションショー帰りに聞いた、孤児が集まりやすい村だったと言う事だろう。
孤児を受け入れ、長く手厚く保護してきた事が皮肉にも「子を手放しやすい」認識の幽導村となってしまったのだ。
ユウメや狐音はそんな状況に悩みながらも援助を続けてきた。
「はい、本当にユウメさんは凄いです……」
「うふふ、管理人さんが認めてくれたから吹っ切れましたのよ〜そうそう鎮魂祭の核になるのは、その孤児に対してなんです」
「孤児に対して?……慰霊……あっ」
少し考えればわかる事だった、いくら保護の力が強いとは言え全ては救えない。
「お気づきのように、所詮は個人の手を合わせた私設。見つかった時には手遅れだったり見れる範囲に限界があったり力不足だったり。」
「その子達の慰霊なんですね……」
鎮魂祭と銘打ち、大きなカテゴリは地域の慰霊。
真の対象は孤児として手放され亡くなった子に向けてなのだ。
「祭りと言うのは土地神や自然に祈りを捧げる行為でもありますから、幽導村は古い歴史の中で村は消えても祭事だけは伝承しているのです」
幽荘自体も縁からすれば明治、大正辺りと古い建物だと聞いたが歴史からすれば遥か前からの風習だと思い知る。
言葉を失くした縁とユウメに、スタンドの店員が声を掛けてきた。
「お客様終わりましたよ!」
声に反応し車を見に行く。
「わぁ!ピカピカになりましたわね〜」
ユウメは綺麗になった車のボディを撫でご満悦だ。
「簡易点検ですが走行に問題は無いと思われます!何か異常を感じたら是非来てください!」
元気な店員にお礼を述べて、今度は縁が運転席に座る。
「よろしくお願いしますね〜」
助手席にユウメが乗り、スタンドを後にする。公道に出て運転すると分かる、フェラーリって気持ちいい車なんだなと。
幽荘に向かう間に狐火酒造を寄り道出来そうなので、ユウメに告げておく。
「ちょうど良いですわ、狐子姐さんに御神酒の用意も頼みましょう」
順調に進んで狐火酒造が見える、駐車場に車を入れて降りた所で人影が走ってきた。
「ユウメちゃん久しぶりやないのー!どないしはったん?そんな高級な車で来るところちゃうよ?」
「お久しぶりですわ〜狐子姐さん〜!管理人さんとデートしてたんですの!」
「何!?高級車でユウメちゃんをデートに連れ出すなんてやるやないの!」
「……忘れ物を取りに行っただけなんですが」
「狐子姐さん鎮魂祭聞いてます?今年は久しぶりに出ると聞きましたが」
「おう、狐音から連絡あって縁君がお迎えに来てくれるんやろ?それなら出れるからね」
ちゃんと伝わっているようで安心だ、これならタカとリュウメも伝わっているだろう。
「狐子姐さんそれとせっかくなので御神酒の用意と色々お酒も買いたいんですの」
「相変わらず狐音と毎晩飲んどるの?」
「ええ、しかも温泉に呑めるスペースが出来ましたわよ〜」
呑めるスペース認識されているが、あそこは皆の休憩所であるので酒盛りは辞めて頂きたい……
「ええなええな〜鎮魂祭で呑もうな〜」
鎮魂祭って酒呑む日だったか……?
「ゴホン!お酒はともかくとして、当日お迎えに参りますけど他に周ってからになります」
「うん大丈夫よ〜タカ婆とリュウメ回収してから来るんやろ?のんびり待つよ」
狐子はこれで大丈夫か、少し目を離した隙にカゴ一杯に酒を積んでるユウメ。
「街に出た時に買っておかないとダメですからね〜」
「別にダメじゃないですが……狐音さんと一緒に少しお控えになられたら?」
「うふふ、出来ると思いますか?」
「鎮魂祭当日はウチからもまた持ってくしな〜」
当日は酒瓶が更に並びそうだ。




