ユウメの車探し
「管理人さーん、あ!居た」
バタバタとユウメが入ってくる、先に聞いておこう。
「ユウメさん……その前にコレはユウメさんの?」
鹿に被せた下着を見てもらう。
「あら!やだ昨日忘れて帰っちゃいましたわね〜」
「ユウメさん、おっぱい大きい」
「ネコメちゃんもすぐ大きくなるわよ、こうやってマッサージを……」
「ストーップ!後でお願いします!鍵ありました?」
バストアップマッサージ講座を切り、本題であろう鍵を聞いてみる。
「あ、そうですわ〜実は思い出してしまいましたの」
「思い出す?何をです?」
縁は嫌な予感がする
「多分いつだったか前回鍵挿しっぱなしで帰ったんじゃないかって〜」
それはかなり大事なんではないか?
「ユウメさん、それはかなりヤバいんじゃないですか?」
「やっぱり〜?」
あまり気にしてなさそうなのが、また怖いとこだ。
しかし、車を持っているらしいが車はどこにあるのか?少なくとも幽荘内に整備された駐車場は無い。
縁の軽トラも置いているのは敷地内の適当な青空スペースだ。
「あら、そう言えば……どこに置いたのかしら」
(そこからか……)
「お兄ちゃん、ユウメさん困ってる」
「ネコメちゃん、困ってるのは俺なんだよね」
でもこのまま、ユウメの思い出し待ちより探す方が確実かもしれない。
「じゃあ……探しに行きますか……心当たりとかあります?」
「うーん、服の保管場所のどこかとは思うのですが、街側に三つある内のどこかだと思うんですけど〜」
モデルとはそんなスケールで生きてる世界なんだろうか、規模が一般人では無い。
以前孤児院に向かう際に行ったビルの地下がセキリュティしっかりした駐車場ではあった、おそらくあの規模のビルだろう。
「前行ったビルから後二つは近いんですか?」
「ええ、車なら三十分範囲にありますわね〜その車が無いんですけど〜」
「その車を探しに行きますよ、ほら準備して下さい」
「あぁん、今から行きますの〜ネコメちゃんは〜?」
「私、今から授業」
「ネコメちゃん頑張ってね、ユウメさん行きましょうか」
日が昇り切る前に把握したい、だらけモードのユウメを諭しながら軽トラへと向かう。
「ん?なんじゃお主らどこ行くんじゃ」
狐音がガサガサしている縁とユウメを見かけ近づいてきた。
「ああ、狐音さん。今から車探しに」
「狐音姐さん〜私の車を知りませんか〜?」
「知るわけないじゃろう、無くしたのか?そう言えばユウメ持っておったの」
「お盆中はレンタル一杯で確保難しいみたいで……そしたらユウメさんが持ってると聞いたので」
「あーもう少し早く動くべきじゃったかの」
「ええ、軽トラで三人送迎は現実的じゃないですから」
「まあ気を付けての〜出来たら狐火酒造で何か買ってきておくれ」
「余裕があればですが……」
「ホッホッホ、頼んだぞ〜」
狐音と別れ、ユウメを乗せ街に向かう。目的地はユウメの鍵挿しっぱなしの車があると思われるどこかのビル、いつから置いてるのか不明。
なかなか素晴らしい状況に改めて頭を抱える。
しかし、鎮魂祭の送迎をするなら必要であるから仕方ない。
そうこうする内に一つ目のビルへ到着する。前回孤児院に向かう前に寄ったビルだ、地下駐車場内を探していく。
「ユウメさん、車は何ですか?」
「え?車?運転して遠くに行く為のものですわよ〜」
「……違います、車種とかの話です」
「車種……黄色くて尖った車ですわ〜ごめんなさいね、あまり車には詳しく無くて〜」
ユウメらしさを感じながら、探すべきは黄色くて尖ったフォルムの車……どうやらこの駐車場には無いようだ。
「次行きますか……場所は近いんでしたっけ?」
「ええ、車移動ならすぐですわ〜」
ユウメの案内に従い次の駐車場に向かう、聞けば衣装やアクセサリーの保全管理は契約しているスタイリストが管理してるとか。
(やっぱ少し住む世界が違うんだな……服着る本人がボロアパートに住むのが凄いが)
改めてユウメの不思議な感覚に凄さを感じつつ、二つ目のビルに到着した。
見た目は普通のビルだが、ここもセキリュティがしっかりしている。入館に指紋認証があるだけで違う世界だ。
軽トラを停め駐車場内を歩いていく、今気付いたが全て高級車ばかりだ。田舎の街ビルだがランクの違いがはっきりしている。
ここもどうやらユウメの車は無い、後は最後の場所である。
(あってくれよ……ここまで来て空振りは堪える)
地下駐車場のゲート内に入り車を停める、どうやらここは前二つより少し大きな所らしい。
「ん〜お久しぶりですわ〜管理人さんちょっと部屋見てきて宜しいかしら〜」
「車見てからですよ!僕どれかわからないんですから!」
自由に消えようとしたユウメを止め駐車場内を見ていく。
「……あ!ありましたわ!鍵も挿さってる〜」
ユウメが走り出した、本当に良かったと思うし車をどこに置き忘れてたか?そして長らく放置していたのはどうかと思う縁だった。
ユウメが撫でる車を見て縁はギョッとした。
黄色い尖ったイメージの速い車、そしてモデルのユウメ。もしかしたらとは思っていたが想像以上に高級スポーツカーだ。
車が好きと言うような人とセレブが持っていそうな……
「ユウメさん……それ、ユウメさんの?」
「そうですわ〜フェ…フェリー?でしたかしら。車はよく知らないのですが、以前出たイベントの社長さんからプレゼントされまして〜普段乗らないのにどうしてくれたんでょうね?」
「うん、フェラーリですね。僕も車詳しくないけど名前は圧倒的に知っています」
一般人にはわからない世界だが、ユウメに魅了されたお金持ちの社長さんが好意か下心かで贈ったんだろう。
美人モデルの世界は理解が及ばない、なぜならその車忘れてたんだから。
「まあ四人は乗れるけど……って軽トラからフェラーリに乗り換えは無謀な気しかしないんだが……」
「でも動きますかねこの子〜」
「うーん、そこもありますね……少し動かしても?」
「ええもちろん、わっ埃だらけ〜」
本当にどれだけ放置したのか……縁はとりあえずエンジンを始動してみる。
ブォンン!……ドドドド!
エンジンが掛かった、どうやら動きはしそうだ。だが軽トラからフェラーリは想像以上に乗り心地も視点も違いすぎて運転前から怖い。
縁は恐る恐るアクセルを踏み前に出てみる、フワッと身体の浮きが伝わる。
(軽っ!出が速い!怖っ!)
慌ててブレーキを踏む、スッ!と止まり車としての性能の違いがコレだけで伝わった。
「おぉ〜動きますね〜」
パチパチと呑気に拍手しているのが持ち主である、凄い笑顔だ。
「……ユウメさん、スタンドまで持って行って軽く掃除と簡易チェックして貰いません?さすがに放置してて怖いし……車検とかは大丈夫そうか、空気圧やオイルかな」
「ええ、行きましょう行きましょう〜この子が綺麗になるのが嬉しいですわ〜」
「……鍵挿しっぱなしで忘れてましたよね?」




