出来上がりはいかが?
「おぉ……キャンプファイヤー出来てる……」
縁は「後はカレー煮込みとご飯炊けるの待ちなので外の様子を見てみて下さいな」とスズメに言われて幽荘の前に来たのだが、何故か薪が組まれ林間学校の夜のキャンプみたいになっている。
「あら管理人さーん!」
幽荘の二階を飾り付けてたユウメが手を振る、モデルさんらしいオーラは変わらないが子供みたいにはしゃぎながら用意している。一階と二階の位置関係的に見えてしまいそうなので、職人さん達も居るし気を付けて欲しいのだが……
「ユウメさん、何やってるんですか?」
「今日はお祭りだから飾ってるんですわよ〜」
見たままなのだが、本人が楽しいなら良しとしよう。他の皆も何かしているのかと探してみる。
「狐音さんはとうもろこし炭にしてないだろか……ん?あれは」
ドラム缶風呂から湯気が沸いてる、焚き口に人影が二人。
「ネコメちゃん、ヘビメさんここに居たんだ」
お喋りしながら焚き口に薪を焚べていた二人は縁に気付き振り向いた。
「お兄ちゃん!ほら、コーン焼いてるよ!」
ネコメが火箸で火に焚べらているアルミホイルに包まれてるとうもろこしをつっつく。
「あ、こうやって焼いて風呂まで沸かしてくれてたんだ」
「一石二鳥よ、それに狐音に任せたら焦がしちゃうから……」
ヘビメはそう言って脇に避けられている真っ黒な塊をジトりと見る、どうやら狐音による被害が少しあったようだ。……
「うん、まあ二人が入ってくれて助かったよ……そろそろカレー出来るからね」
「やった、スズメさんのカレー美味しいの」
「今回は何カレーかしら?」
「何カレー……焼き夏野菜カレーかな?」
「甘口?」
「二人用に甘口も用意してありますよ」
二人は更にテンションが上がったようで楽しみにしてくれてるようで何よりである。
ネコメとヘビメの二人に火を任せ温泉改修地へ向かう、時間的に作業は終わるようで片付けと整理に追われる職人達が走り回ってる。
そんな職人達で話し合う内容が聞こえてくる。
「なあ、もうすぐだぜ」
「俺、今日の為に水だけしか飲んでないぞ」
「スズメ様の料理だぞ?もう匂いで分かる最高のカレーだ」
「俺、ジャノメ親方に拾われて良かったよ」
若干オーバーな気もするが、既に皆がソワソワしてるのが丸わかりだ。
(済まない皆、そのカレーは俺の手も入ってるんだ)
と、野暮は言わずにそろそろ出来上がりますと告げていく。
告げた先から明らかにスピードアップする職人達が面白い。
そうしてるとジャノメと狐音が話してるのが見えて歩み寄る。
「狐音さん、ここに居たんですね」
「うむ、ネコメヘビメが替わるからと聞かなくてな」
「ガハハ!狐音さんはドンと構えときゃ良いって事だろう!」
恐らく真実は黒い炭となった、とうもろこしにありそうだが……
「お二人とも、そろそろ出来上がりますよ」
「おう!にいちゃんもありがとうな!ウチの職人達気に掛けてくれて!」
「職人さん達もソワソワしてますね」
「あいつらはすっかりスズメさんのファンになっちまったな!ハハハ!」
「なんじゃ、儂だって差し入れしとるのに!やはり若い方がええんかのう」
「それじゃあ仕上げ手伝いますんで」
狐音が拗ねだしたので早めに退散を決める、あの感じは既に酒飲んでる感じだ。
調理場に戻ると、カレーの香りが一層強まり迎えてくれた。
「あ、縁さん外どうでした?」
「なんかお祭りと言うか……皆ウキウキですよ」
「あら、嬉しいですね〜」
スズメは小皿にカレーを取り味を見る、そして静かに頷き縁にも小皿を渡した。
「さて、いかがでしょうか?」
縁は受け取った小皿のカレーを味見する、舌に触れた所からトマトの旨み焼き野菜の強い甘味とほのかな猪肉の風味が広がり弾ける。
様々なカレールウのスパイスと辛味も感じるが、家庭感もお店感も感じる絶妙なバランスで早く皿で食べたい。
「こんなの美味いに決まってるじゃないですか!」
「良かった〜、ご飯も炊けたし……持って行きましょうか!」
時計を見れば十八時を過ぎている、皆作業も終わって幽荘前に今か今かと待ち構えているだろう。
ちょっと焦らしたくなるような悪戯心芽生えてる、美味いカレーを運びたいがどうするか。
その時調理場のドアが開き幽荘の女性陣が入ってきた。
「縁、スズメ待ちくたびれるぞ〜ほれほれ、皆持ってくぞ〜」
狐音が先陣を切りカレーの釜をスズメと持って行く、ネコメとスズメは紙皿やスプーンにおたまとしゃもじ。
枝豆をつまみ食いしながらユウメは炊飯ジャーと枝豆を器用に持ち運んでいく、最後に残ったのは大鍋の方の炊き立て熱々ご飯。
気合いを入れて縁は全力で持ち上げて、皆を追いかけていった。




