いざ、セミヌードモデル
——翌日
「じゃ、始めましょう」
縁は腰にタオルを巻くだけの姿で椅子に座らせられた。
「別にそんなの無くとも良いのに……」
タオル一枚あるのが不満気な様子のヘビメだが、これは縁が先手を打ったのである。
昨日に工事終了をしたジャノメを捕まえ、それとなくヘビメのモデルをやる流れになった事を伝えたのだ。すぐさまジャノメはヘビメの下へ飛び込んで行った。
「ヘビメ!男のヌードはダメだ!」
「何でよ!気にしないわよ!」
親子喧嘩を聞く事約五分……
ぐったりしたジャノメがヘビメ部屋から出てきて言った「アートになるとアイツは……」と。
言い合いの中でタオルで隠す事で落ち着いたらしいが、ほぼほぼヘビメの勝ちなんだろう。
そうやってなんとか一枚タオルを勝ち取った状態で縁のセミヌードモデルが始まる。
(麻痺してるけど、人生そうそうこんな事無いよな)
とりあえず座ったまま考えていたら指示が飛ぶ。
「縁、左腕を後ろに右手を前気味に」
自らポーズを交えポージングさせてくる。
「……よし、なるべく動かないで」
決まったポーズは足を組み上半身を捻るような体勢で止めている、これは長時間は辛いかもしれない。
動くなだけならまだいけるかもだが、ポーズの維持を意識してしまうと負担が掛かるものだ。
「出来るだけリラックスしてていいから」
鉛筆を動かしつつ声を掛けてくれるヘビメ、一応気は遣ってくれているのが分かる。しかし、縁はリラックスまでは出来ない。
何故なら窓からジャノメが鬼の形相をして覗いているからだ。
そんなジャノメを知った事かと無視してヘビメは真剣にスケッチを進めている。
シャッシャッと鉛筆がスケッチブックをなぞる音だけが響く、遠くで温泉改修の音もする。鳥の鳴き声も聞こえるし、何度か聞こえたバァンと響いたのはスズメが狩りをしてる銃砲音だろう。
(静かだけどそうでもなく、不思議な感覚と空間に居る)
縁はスケッチされている者として、ヘビメの視線を浴びる内に見られてる箇所がわかるようになってきた。
首から右肩に掛けて……左腿と右手……腰周り……
とにかく今人生で一番見られている、「視る」なんだろうか?表面の皮膚から中の筋肉、血管や骨に至るまで見抜かれてる感覚だ。
そして凄まじい集中力で尖るような視線から広がって覆い見る視線と使い分けてるヘビメ。間違いなく芸術に浸かっている者の目だろう。
芸術に詳しくない縁だが、今この時ヘビメは今芸術に命を削っている。それだけは確信できた。
ぶっきらぼうなとこがある見た目はギャルだがアーティストだ、父親のジャノメが職人の目を見せるのとそっくりでそこは親子だなと思える。
縁はなるべく応えれるように「何もしない」時を維持した。




