ネコメとあーん
「ネコメちゃん、こっちも体験してみる?」
「え!いいの?……ありがとう、あーん」
「んん!?」
声を掛けたは良いがまさかの「あーん」体勢を取られ縁は狼狽える。雛が親鳥に餌をねだるような口を開け軽く前のめりになるネコメ。
可愛げある少女が餌を待っている、なんだかいけない事のような気がする。しかし、この状況長く続いたらヒソヒソと何か言われてしまう。
(ええいままよ!)
サッと一口分を小さな口に入れてあげ、すぐに自分のポジションに戻る。人生でトップクラスの素早い動きをしたかもしれない。
ネコメは味の違うオムライスをこれまた違う刺激として美味しく味わっている。
「……お、美味しかったかな?」
縁は軽く挙動不審さを出してしまいながら平静を保とうとする。
「すっごくおいしい」
「それは良かったです」
流れ的に気付くべきだったのだ、あーんとしてあげたらどうなるのかを。
「お兄ちゃん、はい!あーん」
無垢なネコメがこうする事は想像出来たはずだった、縁は固まる。
「あ、いや、その……」
「?」
もうスプーン一口を掬い手を伸ばしてしまってるネコメを止める事が出来なかった。観念して一口を素早く頂く。
(まさかこの歳でこんな子に外であーんされようとは……)
後悔は無いものの羞恥心が凄まじい。「ウブじゃのー」「可愛いわねぇ」と脳内の狐音、ユウメが畳み掛けてくる。
目の前のネコメはご機嫌のままオムライスを食べ終え余韻に浸っている。
(まあ……喜んでるから良いか)
終わった事だと切り替え赤くなりながら縁も食べ終えた。




