ルーツ
いざ、話してと言っても考えがまとまっていない。
縁は悩んでいたがユウメからポツリポツリと語りだした。
「私は狐音姐さんの次に幽荘に居着いて長いんですわよ、皆いい子でお仕事応援してくれて幸せですわ」
仕事、モデルさんの事だろうか。確かに改めて見ても日本人と思えないような顔の整い方にブロンドの西洋美人と言った感じがある。
「私ハーフなんですの、日本とフランスですけどフランスが濃く出てるようで顔立ちが違うでしょ?」
感じた事をそのまま言語化されたが納得できる。
「なんでまたモデルさんが…こんなとこに?」
幽荘は正直言って辺境の山の中でポツンと建つ古いボロアパートである。そんなとこに似つかわしくないユウメは何故?
「ん〜街は騒がしくなるし、ここが本当に好きなんですよ〜住んでる子達も可愛いし管理人さんも来たし」
人の多い所に住むのは合わないと言う事か、確かにユウメのような人が近所に居るとなれば騒ぎにならずとも注目は浴びるかもしれない。
「子供の頃から付き合いのあった狐音姐さんにお誘い頂いて幽荘に来れたのですよ、ここは縁が無いと来れない場所ですからね」
確かにツテが無ければこんな所に住もうとはならないが…
「管理人さんもお名前が縁だし、縁があってお付き合いさせて貰える事に感謝しておりますよ」
そう言われたら悪い気はしないが…
「ユウメさんはお仕事で長く空ける事あるみたいですけど管理しとく事とかありますか?」
管理人として現状を知ったならば、何か仕事があるかもしれないと聞いてみた。
「そうですね〜じゃあ私が遠方から帰ったらお酒呑みましょ〜」
うーむ、そう言う事じゃ無いのだが…ユウメはウキウキしてるので断りも出来ない。
「そんなんで良ければ…」
「やったぁ〜お酒呑みが狐音姐さんとスズメちゃんがたまになんで寂しかったんですよ」
「まあ僕強くは無いですが…お仕事はまたすぐあるんですか?」
「しばらくはオフなんで家に居ますよ、これを機にもっと管理人さんと仲良くなりたいですわね〜」
しばらくはお話の機会が訪れそうだ、温泉でのステルスアタックだけには気を付けなければ…
「あら、もうこんな時間寂しいですが用事があるので一旦帰りますわね」
「あ、はいありがとうございます」
「それじゃあ失礼致しますわ〜」
風のように颯爽と去って行った、帰る場所はこの部屋の隣だが…しばらくは騒がしくなるかもしれない。
ユウメの事は少し知れたものの、いかんせんペースを掌握され過ぎてて核心に迫れてない気持ちもある。
「あ!ネコメちゃん!」
誤解をされたまま帰ったネコメの存在を思い出し、慌ててネコメ宅に向かう。
コンコン
ネコメ宅をノックし、ゆっくり扉が開いたが半開きのまま目だけこっちを見ている。ジト目でネコメは言う。
「朝からお兄ちゃん大人の遊びしてた」
そんな腫れ物みたいに見られながら言われると、胸が痛む。縁は何もしてないのがより一層ダメージを与える。
「俺何もしてないから、ね?ね?」
なんだか非常に情けない姿だ、何故こんな事になったのだろうか。
「…まあ良い、入ってお兄ちゃん」
弁明するだけだったが部屋に招かれた、許されたのだろうか?いや、許す許さないと言った事はしてないのだが。
数日ぶりに入ったネコメの部屋は相変わらずのパソコン主体にレイアウトされた部屋だ、変わった事と言えば替えてあげた照明が部屋を明るくしているくらいだろう。
「ん、ここ」
ぽんぽんとゲーミングチェアを叩いている、座れと言うのか。
促されるままに静かに座りどうすれば良いか迷っていたら…
何も言わずにネコメは膝にちょこんと座った。
「ネコメちゃん!?」
「これが大人の遊び?面白いの?」
小さな女の子が身体を預けて上に座られる、そんな経験が人生で起こるとは…
しかし、混浴も膝枕も頭撫でもされてるので思い出し振り払う。
「いや、あのネコメちゃん…あまり宜しくないかと」
「ダメなの?」
上体を逸らしながら上目遣いで見てくる少女の破壊力が高い。
「あ、いえ大丈夫です…」
縁はもう抵抗する気は無く身を任せる事にした。
なんとなくネコメは上機嫌な気がする、楽しいのだろうか?
お互い喋らず同じ椅子に座る状態のまま…
バタン
「ネコメ悪いけどプリンターの……」
「……」
「……」
くっついて座る縁とネコメ、そこにやって来たヘビメ。三人の重く静かな時間だけが流れ…
バタン
ヘビメは静かに扉を閉めて帰って行った…何も言わず…
「ヘビメさん待って!誤解だ!」
きょとんとしながらちょこんと座るネコメを抱き下ろし、今度はヘビメの誤解を解きに走り出す。
(今日はもうわけわからないよ…)
ヘビメにはしっかりジト目で見られながら弁明をして、渋々受け入れられたようだが「アンタいつか社会的に死ぬわよ」と言われてしまった縁であった。




